24話 照らされる真実
「とりあえず、だ」
黙っていたアルマが口を開いた。空から意識がもどったらしい。
「王国はすみやかに魔法に依存しない体制を整える必要がある。矛盾するようだけど、そのためにもマナは必要だ。内戦がすぐに終わればそれだけマナは失われず回収できる」
んー、アルマはよく言えば戦後処理を自分の手でやろうとしているのかな?
たしかに内戦してる場合じゃ無いのかも。魔王は死んでも魔族の諸侯は生き残っているからいつ攻め込んでくるかわからないし。
「あ……」
思わず横にいるシータのほうに振り向きそうになった。
シータがはかなく微笑んでいる。
「ええ、多分あなたが想像している通りです。私がアルマさんに味方するのは貴族同士の内紛で家族を失う人をなくすため。アルマさんがすべての内戦を終わらせて、この国がマナを使わず生きていけるようになれば、私はジェローナ領へ向かいます」
そうか、シータがアルマに協力するのはこれ以上争いで自分のような人が生まれないようにするためなんだね。
ん? ハサ領じゃなく?
「ロレンツォさん、もしかしてさっきの決闘でいった言葉って……台本じゃ無い?」
まわりから一斉に残念な子を見る視線が送られてくる。わかった、つまりそういうことね。
「台本なわけないでしょう。私の言葉は常に誠実です。シータに向けるときに限りますが」
そういって寄り添う二人。
ちょっと心外といわんばかりにこちらをにらむロレンツォと、彼に体を預け子供のような笑みを浮かべるシータ。
非常にパーフェクトです。タミラみたいな悪役令嬢がつけいる隙もないです。
「さすがうっかりポジだな。これだけくっついているのに気づかないなんて」
たしかにトビトの言うとおり椅子近っ!
そうか、私やっぱりうっかりポジだったんだ、コマシのスケさんはトビトで良かったんだ……
「台本なんて言ってごめんなさい。二人の愛はつたわったよ」
爆ぜろって一周回るとおめでとうに変わるんだね。
「じゃあ、今夜はこれくらいにしとこう。そろそろ館の掃除も終わった頃だろうし」
「私はお風呂をいただくわ。王都を脱出して以来だから何日ぶりかしら」
飲み直すか、といいながらアルマ達が図書室へと戻っていく。アルマ達大丈夫かな?
ふと空を見上げると青い月がだんだんと薄れていく。
目をテラスの向こうに移せば残党狩りのジェローナ兵達が戻ってくるのが見えた。狩り出されたガルネー家の人間を連行している。
彼らが殺されることはないけど、一生軟禁されるのは確定らしい。
彼らは当主についてきただけで罪がない、とは言わないけれど、逆に、ついてきただけで一生が台無しになる。
それは制度としてどうなんだろう? とか考えてしまうのは私が封建主義からほど遠い民主主義国家で生まれたからなのだろうか。
これから反アルマ派の貴族の起こす紛争で人生が狂う人はどれだけ増えるんだろう?
「今回みたいなことがずっとつづくのかな……」
ちょっと弱気になる。
—— 多分大丈夫。バッドエンドは見飽きたけど、デッドエンドは意外とはじめてよ? ——
誰に向けたわけでも無かった、ただの独り言に返された言葉はいくつもの前提を覆す不吉をはらんでいた。
私の中の現実感がギシリと悲鳴を上げる。
声の主はエヴァじゃない。彼女の声はもっと凜としている。
声の主はガブリエラじゃない。彼女の声はハスキーで力が抜けている。
後ろから聞こえたのは、はかなげでたおやかな淑女の声——
「少しだけお話ししない? 女の子だけで」
『月光』を解いたのはシータ、本物の月明かりに輝く銀髪の主が微笑んでいた。
というわけです。
細かい話は次話以降に。
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