21話 月光の図書室
「それで? 今後の流れはどうするの?」
エヴァが話題を変えるとアルマが応じる。
「そのあたりはロレンツォ達とすりあわせ済みだ」
シータとロレンツォがいるところへ向かう。
ロレンツォが私兵と役人に指示をし、シータはその後ろ、領主が立つ位置にいる。
シータとアルマ、どっちが辺境伯になるのかわからなかったけどシータがなるってことでいいのかな?
「アルマ、僭主の処断は無事終わりましたか?」
ロレンツォが真面目な顔で率直に訊いてきた。さすがブルーブラッド。
「ああ、予定通り終わった。そっちは?」
「ジェローナ兵を逃げ出した残党狩りに向かわせました。女中には掃除をさせています。それから、文官に周辺諸侯にたいして事の次第を書き記した書簡を送る準備をさせています。続きはどこかユダの手垢が付いていないところで話しましょう」
手垢って、ロレンツォさん自然に毒吐きすぎじゃないかな? 腹黒イケメン路線もありといえばアリだけど。
〜〜〜
メイドに案内されたのは図書室だった。図書室といっても吹き抜けで、小さな教会くらいの広さがある。
手近な本に手をかけると、カバーじゃなくて本物だった。
「すご、もしかして、これ全部……本物?」
この世界に元々あった書物は羊皮紙のハードカバーで、魔法の補助があるとはいっても筆写が原則だ。
貴族は教養があると見栄をはるために屋敷には図書室を設けていたけど、そういうのは大抵背表紙を板に貼り付けたダミーを並べているだけ、らしい。
だからブルノ卿を馬鹿にしたわけじゃないからね?
思わずつぶやいた声にクスクス笑う声が重なる。
「本物です。祖父の8代前の祖先が辺境伯としてこの地に来てから、代々少しずつ増やしてきたそうですよ」
そういいながらシータも隣に来る。
「綺麗に残っているみたいでよかった」
愛おしそうに指を沿わせるシータに同性ながらすこしみとれてしまった。
「ルカ、話し合いの続きをするからシータさんを連れてきてくれ」
「わかったー」
トビトが壁の影に消えたのでとりあえず二人で行ってみると、小さなスリットのような窓が並ぶ壁の横に、外へと続く階段が伸びていた。
「おぉ」
おもわず声が漏れてしまう。両側を木の壁とアイビーで囲われたテラスからは満月の光に照らされた城外の広い牧草地と畑を一望できた。てすりの手前にはアイビーを意匠に取り入れた椅子と長机が置かれている。まるでこれからはじめる話し合いのためにしつらえてみたいだ。
穏やかな田園の眺望に、思わずさっきまでの事がどこか遠い世界の出来事のように思えてくる。
でも遠くにきこえる残党狩りのざわめきや屋敷の中から感じられる慌ただしさが今が現実であると知らせてくる。
やっぱりここはまだ、もう、戦場なんだ。
せめて残党狩りが終わるまで、身体強化はきらないでおこう。
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ストーリーは戦いが終わり、一段落です。
お城のテラスで悪巧み、とかいいですよねー




