14話 内戦は意外と小規模
「良い宿とったねー」
つい棒読みになってしまう。雑踏が静かにきこえる四つ辻の一角に構えた宿だけど、借りるのがフロア単位って!
いかにも貴族がお忍びで来そうな場所だ。オリーブをモチーフに統一された調度品類も洗練されている。
「身なり、髪の色は変えられても、身のこなしや表情とちぐはぐなら訳ありだと勘ぐられるからな。それなら最初から金持ちだと堂々とした方がましだ」
旅装を解きながらアルマがこともなげに言う。さすが元勇者の辺境伯だわ、ちょっと距離を感じる。
「じゃ、あらためてブリーフィングはじめるか。ほとんどルカのためだけど」
移動しながらアルマが苦笑してくる。
ごめんね、新入りだから許してね。
明るい部屋にでた。四つ辻に面した明るい角部屋にはウェルカムサービスが載ったダイニングテーブルがおかれている。
皆が席に着いた所でアルマが口を開く。
「まず状況と、簡単な方針の確認だ。俺が世界樹を破壊したことで世界のマナは有限となった」
そうだね。なんでそんなことしたの?
「それについては謝らない。俺は独断で、斬るべきと思ったから斬った。理由については今はいえない」
”そこが一番知りたいんだよ!”といいたい。気持ちはきっと皆も同じだろう。
でもこの場にいる皆はそれをしない。アルマの行動にも沈黙にも理由があると信じているから。
「で、結果として王国貴族は俺を信じてくれる皆みたいな人達と、それ以外に分裂した。アルマ派と反アルマ派とよばれている」
アルマがちょっと窓の外へ目をそらして白ワインで唇をしめらせる。
王国が分裂、と言わないのは、この戦いが実際は”貴族の貴族による貴族のための内戦”だからだろうな。
あ、ピンチョス食べよう。
そもそも普通の市民は領主が変わる事にこだわらない。
それこそ魔族であっても、生活が変わらなければなんとも思わないくらい安心している。
じゃあなぜ安心できるかといえば、ほとんど”領軍”という存在のおかげだ。
領軍は王直属の治安機構で、領民に危険が迫れば盗賊狩人冒険者は当然、、ときには領主にさえ刃を向ける。
貴族間の戦争で戦うのは貴族とその私兵だけだ。こういうと領軍ってレフェリーみたいだね。
「元々辺境伯領に執着してきたユダだから、当然俺を辺境伯につかせたくない。そこで反アルマ派につき、派閥の貴族達を後ろ盾として、辺境伯を僭称しているわけだ」
ふーん、なるほど。なんでそこまで辺境伯にこだわるんだろうね?
「それで、今後はどうするの?」
王様的には、「生き残った方の言い分聞いてやっからよ。勝手に殺し合えや(ムゼル陛下)」という感じなんでしょうね。
「勝者こそ正義」の精神って怖いですよね。
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