11 終
食卓に並んだ手料理の数々を見て、アリーセは腰に手をあて満足げにうなずいた。
テーブルの中央に飾った花に手を伸ばし、形を整えさらに食器の位置を直す。
何だかそわそわして落ち着かない。
何故なら、今日は特別な日。
仕事が忙しいエリクも、今日は早く帰ると約束してくれた。
ふと、外から聞き慣れた靴音を耳にして、アリーセは戸口まで小走りに走って、扉を大きく開け放つ。
「お帰りなさい、エリク」
両手を広げて飛びつくアリーセをしっかりと受け止め、エリクは苦笑する。
しがみついたアリーセを抱えたまま、エリクは部屋の中へと足を踏み入れ、テーブルに並んだご馳走を見て目を丸くする。
「すごいな。手の込んだ料理ばかりだ」
「だって、エリクが〝灯〟の長になったのよ。今日はお祝いだわ」
しがみつくアリーセを床におろし、エリクはアリーセの頭をなでた。
「これからは、今以上に忙しくなってしまうかもしれないけど、なるべく寂しい思いはさせないようにするから」
アリーセは首を振り、エリクを見上げた。
「エリクを支えるのがあたしの役目だもの。だから、エリクはお仕事頑張って。でも、無理だけはしないでね」
アリーセはいったん言葉を切り、頬を染めてうつむいた。
「それに、一人じゃないのよ……」
アリーセははにかむように口元に笑みを浮かべ、そっとお腹のあたりに手を添えた。
もう一つの特別な出来事。
まさか、とエリクが目を見開きアリーセの肩をつかんだ。
アリーセは顔を上げ誇らしげにうなずいた。
「間違いなく男の子よ。名前も決めてるの」
「何て名前か教えてくれるかな?」
アリーセはつま先立ちになって、エリクの耳元でその名を囁いた。
「きっと凄腕の魔道士に育つわよ」
そして、あたしを助けてくれるの。
ねえ、イェン。
早くあなたに会いたいわ。
あなたのことは、あたしたちが守ってあげるからね。




