オフの日
「もう朝か…」
掛け布団から足を抜き出し、ベットから降りた。
今日から1週間、俺は休みだ。一年に一回だけ、長期休暇を取ることができる。戦争中でなければ、いつでも可能だ。
休みなのに早く起きた理由は、特にない。しかし、ただ寝ているだけでは退屈な上、訓練に戻ったときに体が鈍りすぎてしまう。
身支度を整え、朝飯も取らずに外出した。
中心街まではここからバスで移動するのが普通なのだが、たまには歩いて景色を眺めたいので、少々距離はあるが歩くことにした。
「外行きまーす…」
寮の出入り口にいる受付に軍属手帳を渡し、受付に返されてからそう言った。
この辺りは軍人が多いのでとっとと離れようと思い、少し遠回りした。
その途中、たまたま同じ隊にいた奴と遭遇した。
彼もどうやらオフらしい。服装が私服だからだ。
「よぉ?お前も休みか?」
「――あぁ…」
「これからナンパに行くんだが、お前もどうだ?」
「一人でやってろ…」
俺はそう言い、再び歩きはじめる。「ちぇっ」と舌打ちが聞こえたが、そんなもんスルーだ。
だいたい俺は、そんな簡単に知らない女と会話できるほど耐性が無い。ナンパなんてしようとしてもできないだろう…。
そんな自分のヘタレさに呆れつつ、歩いていると今度は自分の後輩(年齢は)の女性隊員が俺に気づき、走ってきた。
俺は心の中で溜息をつき、気づかないふりをした。
普段は後ろに髪を1つにして結っているが、どうやらあいつもオフらしく、髪は結わずに肩の下まで伸びていた。
「せんぱぁ〜〜〜い!!一人で何やってるんですかぁ〜?」
「何でもいいだろ…。うるさいからあっち行け」
「ちょっと冷たすぎません?ていうか先輩もオフなんですか〜? えぇ〜一緒に遊びましょうよぉ〜〜!」
「わかった…。 あ、悪い煙草忘れた。取ってくる」
と俺は言い、一目散に走った。
「あ、はい〜…。 って!先輩喫煙者じゃないでしょ〜!!!」
俺は後ろを振り向き、大分距離はあるが顔に少し笑みを浮かべて、
「うん」
と言った。
「もぉぉ〜〜〜〜!!わかりましたよ!」
もう彼女は追ってくることは無かった。なんとかこの状況から逃れ、やっと寮付近から脱出することができた。
さっきまでは辺りに軍服を着た奴らがたくさんいたが、今はほとんどいない。
さてさて、まずはどこに向かおうか。
考えを巡らせながら歩いていると、ふと思いついた。
「朝っぱらから飲むか…」
今日は休みだし明日もそのまた明日も休みだから、二日酔いしても何一つ問題が無い事に気づいた。
酒はたまに飲みたくなる時がある。いつも一人で行く店があるのだが、そこは夜に行きたい。そうなると行った事のない店しかないので、失敗は避けたい。
ここにするか。
何となくだが焼き肉を食べることにした。朝に焼き肉は意外とうまい。腹に負担がかかりそうだが、以前上官に誘われた時案外そうでもなかった。
「焼き肉といったらビールだな。」
近くにあった焼き肉屋で腹を満たしたのだが、朝に飲むのはやっぱり嫌だと思い、食べるだけにした。
その後本屋など寄りたいところへより、日中を満喫した。
もうすっかり陽は沈み、通る人は会社から帰るサラリーマンだらけになった。
もう1時間経つと、飲みに来た社会人だらけになる。
そろそろ行くか…。
お気に入りのバーへ向かった。
店内は前と変わらず、入ると四人席のテーブルが縦に3台あり、左側には7席のカウンターがある。その奥でバーテンダーの姉さんがいる。
「お久しぶりです」
「あら〜。いらっしゃぁ〜い」
いつも座っている右端のカウンター席に腰を下ろした。
「いつもので」
「はぁ〜い」
姉さんは見た目は若いが俺がガキのときから今と変わってないので年齢は結構いってるはずだ。
いつも客は多すぎないが、今日は俺以外いなかった。
「軍ではどうなの?」
「ぼちぼちです。何か昇格したみたいですけど…」
「凄いじゃない!入隊したばかりなのに」
「たまたまですよ…」
と俺は言ってグラスに口をつけた。
姉さんとはいつも世間話などをし、俺はそれを肴にして飲んでいる。これが以外といいのだ。
「最近なんかありました?」
「う〜ん…。何かこのへんで、悪質なストーカーがいるって話を、お客さんから聞いたりしたわ…」
「ストーカー…、なるほど」
軍に報告しておけば、捜索班くらいは手配してくれるだろう。
と考えていると、姉さんが急にトーンを下げて話し始めた。
「あのね―――」
長らく投稿できず、ほんとにすみませんでした。文学のある大会で代表になったりして、そちらの方を執筆していました。
その前はテストや部活があり、中々書けなかったです。
これからも頻度が急激に落ちる時があるかもしれないので、そのときはよろしくお願い申し上げます。