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死神の箱庭  作者: 北海犬斗
堕胎ノ警鐘
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邂逅

ーー2015年。4月。

 『死神ギルド』


 死神と契約を交わした者が集う、犯罪集団の名称である。

 死神を使役し、主に窃盗や強盗、収集した情報の売買を行う。


 人知を超えた力を持ち、犯行が完了すれば自由に姿を消す事ができる死神は、犯罪には打って付けの存在だ。契約者は、安全な場所でぬくぬくしていればいい。そういった目的で、死神と契約する者も多数いる。

 

 死神ギルドは、死神と契約した者たちが集うチームの中でも、破格の規模を誇る大型チームである。

 属する者たちのほとんどは、何らかの事情を抱えて金銭に執着し、死神と契約を交わした者達が過半数。


 月末にメンバー全員がそれぞれの収穫を持ち寄り、それらを合計し、メンバー毎に与えられたランクに応じた報酬を分配する。

 ちなみに、収穫の持逃げやギルドの拠点を漏らすのは御法度。

 もし、それらを破り発覚した時には、仲間から死という罰を与えられるーー。


「くそっ、何なんだよアイツら!せっかく上手い具合に事が運んでたってのによ!!」


 俺は眉間に皺を寄せて、歯噛みをする。

 四月の真夜中。冷たい風が、ビュンビュン顔面に突き刺さり、耳が千切れそうなくらいに痛む。


「ユウジ、しっかり俺に捕まれ。さらに加速するぞ」


 死神はそう言うと、さらに走る速度を上げた。道路を全力疾走する死神は、さながらスポーツカーのようであった。

 死神の肩に乗る俺の顔に、暴力的なまでの風圧がもろに直撃する。

 俺は堪らず、腕で顔に当たる風を遮った。息が苦しい。

 

 ユウジ、とは俺の名前だ。


 数日前に死神と契約を交わし、死神ギルドに加入した新参者。

 死神ギルドから、手始めにとコンビニのレジ金を強奪するという、超入門のミッションを与えられた。

 パートナーの死神は無事にレジ金を奪い、公園で待っていた俺と合流。そのまま帰宅すれば本日のミッションは完了……のはずだったのだが。

 合流地点の公園で、ヤツは現れた。


「なぁ、あの身の丈以上のデケェ鎌を持っていた死神ってのが、死神ギルドの言っていた要注意人物ーー『死神殺し』ってヤツなのか?」


 俺はそう言うと、身震いする。

 死神ギルドに加入した初日の事だ。ギルドのルールや禁則事項をあらかた説明された後に、付け加えて要注意人物……とにかくこいつらには気をつけろと警告された。


 『死神殺し』


 自身も死神と契約している身でありながら、死神を片っ端から殺して回る異端の存在。言わば、同族殺しってヤツなんだろう。

 数年前に突如として現れてから、死神を殺し続けているらしいのだが、その目的は不明らしい。

 パートナーの死神は、小柄な体には不釣り合いの巨大な鎌を持っているのが特徴。

 もし出会ってしまった場合は、とにかく逃げろ。応戦などしようと思うな。アレは格が違う、と。

 ちなみに、そいつと出会って無事に逃げ切れられた者は一人もいないらしい……。


「って、あれ?ハハ……もしアイツが本当に『死神殺し』だとしたら、俺ら詰んでんじゃねーか?」


 苦笑混じりにそう言って、全身から血の気が引いていくような絶望感を、俺はまざまざと味わう。

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