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ハロー異世界

「...!......!...っかりしろ...!」

薄れる意識の中、仲間の呼ぶ声が聞こえる。

仲間を庇って死ぬだなんて、俺らしくない死に方をしてしまった。

母さんは元気だろうか。

妹と二人で少し心配だが、あれでも俺の妹だ。きっとしっかりやってくれるだろう。

「...!おい......!......!!!」

仲間の呼ぶ声が次第に聞こえなくなっていき、意識も朦朧として......





「......あ?...ここは...どこだ...?」

目覚めると、辺りには美しい緑が広がり、俺は大樹の木陰に横たわっていた。

俺の故郷にしては綺麗すぎるし、そもそも俺はこんなに美しい緑を見たことがない。

「...あぁ...なるほど...俺は死んだのか...」

「違いますよー。」

「...なっ!?いつの間に...!?」

「ちょっとー。そんなに警戒しないでくれませんかー?」

誰もいなかったはずの場所からいきなり現れた少女は、ヘラヘラと笑いながら近付いてくる。

「...お前は誰だ。」

「アマネと申しますー。」

「...アマネ...どこから現れた。」

「ちょっとー。こんな見た目してるからよく勘違いされますけど私貴方よりも年上ですからねー。まぁ敬語はいらないんですけどー。」

俺は三十路なのだが...このアマネという人は...どう見ても三十路以上には見えない。

正直十代でも通用しそうな気もする。

「...そうだったのか...すまない。」

「大丈夫ですー。慣れてますのでー。あ、そうだー。説明しないといけないんでしたー。まず死んでないって事ですけどもー。ここは異世界なんですー。」

「...異世界?」

「はいー。貴方の元いた世界では工業が発達してましたがー。ここではなんと魔法が発達しているんですー。」

「...頭は大丈夫か?」

「酷いですねー。本当なんですよー?」

さっきからヘラヘラと笑いながら頭のおかしい事を言ってる所とかを見ると、こいつはただの少女で、俺をからかっているだけなのではないかと思い始めてきた。

「それでですねー。なんでそんな異世界に貴方が来てしまったかと言いますとー...まぁ、たまたまですー。たまーに魂がキチンとあの世に行かない事もありますのでー。」

「...じゃあ、もう元の世界には帰れないって訳か。」

「んー...まぁ、そうですねー。絶対帰れないってわけじゃないんですけどー...まぁ、無理ですねー。一度死んだのにもう一度生きれるなんて幸運中の幸運なんですよー?」

...怪我も治っているし、ここが異世界だとすれば俺がこの景色を見た事がないのも普通だろうし...色々よくわからないが、この人が言うことに嘘はないのかもしれない。

「...それで?あんたは何者なんだ?」

「お、信じてきましたー?私はですねー。神様ですー。」

やっぱり頭のおかしい少女かもしれない。

「あ、信じてませんねー?」

「その言葉をすぐに信じれる馬鹿がいるのなら今すぐ連れて来てくれ。」

「まぁたまに貴方の言う馬鹿な人がいたりもするんですけどー。あ、それでですねー。お偉い神様...は私なんですけどー。私のミスでこうなってしまってるのでー。私からのサービスがあるんですー。」

「...サービス?」

「はいー。そもそも普通の人が魔法の世界で生きれる訳がないので魔法が使えるようにするのとー。それでも絶対生きていけないのでー。何でも一つだけ願いを叶えるみたいなサービスですー。」

「...何でも?なら元の世界に」

「あ、それは無理ですー。いくらお偉い神様の私でもそんな事をしちゃったら神様じゃいれなくなっちゃいますー。不老不死とかー。何でも一つ欲しい物とかー。大金とかー。そういった感じにしてくださいー。」

「...なら銃をくれ。」

「...えっとー...別にいいんですけどー...魔法が発達している世界って言いましたよねー?まぁ少しの魔物くらいしか元の世界と変わった生物はいないので通用しない事はないですけどもー...絶対魔法の方が強いですよー?もっとチート能力を持ってもいいんですよー?それこそ最強魔法を一つ覚えるだとかー。」

「いや、いい。そんな莫大な楽を与えられた生活では楽しくなさそうだ。銃さえあれば狩りも出来るし、護身用にもなる。」

「...なんだか他の人と不平等な気がしますのでー。おまけで弾は無限にしておきますねー...この世界では銃弾なんて売られてないからすぐ使えなくなりそうですのでー...」

「...何だかそれもかなりの楽を与えられた気分だが、有難く受け取っておこう。」

「よいしょとー。あ、ちょっと待っててくださいー。生成には少し時間が必要なんですー。」

「...偉い神様なのに時間がかかるんだな。」

「うるさいですねー。銃を要求する人なんて初めてなんですよー。あ、そうだー。銃は前貴方が使ってた銃でいいですよねー?」

「あぁ、構わん。」

「よかったですー。」

しかし、神様なのかどうかはわからないが、空中で何かを生成しているところを見ると、魔法が発達している世界というのも嘘ではないのだろう。

となると、嘘を言う必要もないし、神様だというのも本当なのかもしれない...本当に偉い神様なのかどうかは知らないが。

「あ、そうだー。一つ助言をしておくとー。最初はあの山を超えた先にある街に行くといいですよー。親切な人が多いですしー。魔法に詳しい人ばかりですのでー。」

「...まずはそこに向かうとするか。」

「あ、そこでは私もアマネという名を隠して住んでいますのでー。もし出会ったらその時はよろしくお願いしますー。」

「...そうか。」

「んしょー。完成ですー。では異世界ライフをどうぞお楽しみくださいー。私は先に街へ行ってますのでー。」

最後までヘラヘラと笑いながら、アマネが姿を消したのを確認し、アマネから貰った物をポケットにしまい込み、俺も街へ向かう事にした。




「あ、あんた!助けてくれ!凶暴な動物に襲われていて...!」

山の麓に辿り着くと、慌てた様子の男に肩を掴まれそう頼まれてしまった。

「...構わないが...肝心の動物...は...?...おい、デカ過ぎないか。」

「ビックベアーだ!この時期にはあまり出ないから油断していたら突然...!」

「んなことはどうだっていい!このでけぇ熊の弱点はなんだ!」

「そ、そんなもん知らねぇよ!とりあえず動きを止めてくれればそれでいい!」

「ちっ...足止めが出来ればいいんだな!?それなら...」

「がるるるる...ぐるぁ!がうっ!」

襲い掛かってきた熊の前足を撃ち抜き、素早く後ろ足も撃ち抜く。

どうやら腕は落ちていないようだ。

「ぐがうっ!がるっ!がうがうっ!」

「山奥に逃げ込むぞ!」

「え...」

「早くしろ!」

「あ、あぁ!」

熊が痛みで倒れ込んだ隙に、男の腕を掴み、山奥に逃げ込む。

熊は立ち上がると、俺達とは別方向に去っていった。

どうやら諦めてくれたようだ。

「た、助かった...ありがとう、この恩は忘れないよ。」

「例には及ばん。」

「あんた、名前は?」

「...俺は...俺は?...」

...俺の名前は何だっただろうか。

そう言われると全く思い出せない。

「おいおい、自分の名前を忘れたのか?」

「...異世界から来たものでな。」

「おぉ!そうなのか!...あれ、でも今まであった異世界の人達は自分の名前をしっかりと覚えていたような...」

「...そうなのか。前世では頭を撃たれて死んだものでな。もしかしたら記憶に少し障害があるのかもしれない。ところでお前は?」

「俺は隼人だ。この先の街で居酒屋を経営している。」

ハヤト...なるほど、ここは日本か。

日本語は話せないはずだが...これもアマネのサービスなのだろう。

「...お前、何歳だ?」

「26歳だ。もうすぐ27になる。」

「...俺は34だ。」

「あ...すまねぇ、年下だとは思っていなかったがそこまで上だとは...」

「いや、いい。この先の街で居酒屋を経営していると言ったよな?俺もその街へ行きたくてな。案内してくれないか?」

「あぁ!任せてくれ!」

...成人しているのにかなりはしゃいでいる隼人に連れられ、話を聞いているうちに...異世界も悪くないな、と思い始めてきた。

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