第二話:お兄さんのが入ってくるよ……っ
「どこだここ」
女神さまの「いってらっしゃい」という声とともに、プツンと意識が断絶し気付いたときには街道っぽいところにいた。
街道といっても地面は剥き出しの土である。
幾条かの轍の跡がついていて踏み固められたような形跡があるからそう思っただけだ。
「あの女神さまも街に飛ばしてくれればいいのにな」
俺はそんなことを呟きながらも周囲を見渡してどちらに進めばいいかを考える。
すると草が生い茂る脇の方に石碑を見つけた。
もしかして案内板なのだろうか。
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→:『#$%&+*』
←:『?+*`$%』」
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「読めないんですが……」
矢印くらいしか書いてあることが分からなかった。
まあそりゃそうか。異世界で日本語が使われているわけないよな。
そこまで考えた時、俺はひとつの重大な問題に思い至ってしまった。
文字だけじゃなくてもしかして言葉も通じなかったりしないだろうな……。
流石にそれは勘弁してほしいな。
何の予備知識もなしに外国で暮らすことよりもはるかに大変そうだ。ここ異世界だし。
俺はこの世界に来てそうそう、暗澹とした気分になってしまう。
「あー、都合よく文字とか言葉とか通訳してくれる道具とかないかな」
俺がそんなことを呟いた時。
どこからともなく鈴がなるような二つの声が聞こえてきた。
『お兄さん、お兄さん』
『ぼくたちが通訳してあげようか』
「うわ、なんだ」
俺がびっくりしてきょろきょろとしていると怪奇現象が発生した。
いや、ファンタジー世界らしいから魔法現象なのだろうか。
俺の右手の空にキラキラと光り輝く水の粒が現れ凝集する。
俺の左手の空に突如として火の粉が舞い踊り中央に向かって収束する。
それらは人影を形作り、水色の少女と赤色の少年になった。
見た目の年齢は十二歳ほどである。
髪の色、目の色、身に纏う羽衣らしき服の色。
それらが全て、右の可憐な少女は水色で左の凛々しい少年は赤色だ。
そんな二人を観察しながら、俺は珍しく感動していた。
そうか、これがファンタジーか。
まるで絵本の中に入りこんだような、しかし圧倒的なリアル感をもった世界。
幻想と現実が違和感なく同居している世界。
「素晴らしい……」
俺は思わず心の底から感嘆の声を漏らしてしまう。
なんだか気分が良くて身体が宙に浮かぶような感覚までしてくる。
すると。
『ああっ、そんないきなりっ。お兄さんのが入ってくるよ……っ』
『ううん、褒められちゃった! ……にーさん、いきなり積極的だな!』
なぜか俺の声を聞いた少年少女が自分の身体を抱きしめて、頬を染めながらくねくねとし始めた。そして俺に熱い視線を向けてくる。
幼い容姿の二人がもだえている様はひどく背徳的で、俺がロリコンとかショタコンを患っていたならころっといってしまったかもしれない。
あいにく俺はノーマルなのでそんなことはなかったが、俺が一瞬、現実逃避にそんなことを考えてしまう程度には危ない光景だった。
「あー。だ、大丈夫か? 俺は何かしてしまったのか?」
俺がおずおずと二人に問いかけたその時。
今度は訳の分からない音声が脳内に響いてきた。
『ピコーン。おめでとうございます。『双子精霊』を魅了したことにより<神威宿る魅惑の声>がレベル0から1にレベルアップしました。声を通じ対象に魔力を譲渡出来ます』
……はい?
正直、何が起こっているのかよく分からないが一言だけ。
えらいゲームチックなんですね、女神さま。
本能で書いているので変なキャラばっかり出てきます。脳みそ使わず生暖かい目で見てやって下さい。