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死ぬ予定なので、後悔しないようにします。  作者: 千羊
第2章 幼少期~現在と過去編~
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i 私はただ、愛されたかっただけだった。

忘れていたので挿入です。

 いつからだったのだろう。

 私がそのことに気付いてしまったのは。

 私が、愛されていないと気付いてしまったのは。

 一体、いつだったのだろう。


 私は生まれた時から、きっと必要のない子だったのだと思う。そもそも、双子で生まれたこと自体が呪いだったのだ。

 私は双子の姉として生まれた。でも、私はいらない子だった。きっと、あのひとにとっては私はいらない子だったのだ。

 だから、あのひとは妹だけをつれて出て行ってしまった。


 これは侍女たちが噂をしているのを聞いて知ってしまったことだ。

 私にはたった一人だけ私を必要としてくれる人がいる。私のお父様だ。

 お父様は屋敷の中で唯一私のことを気にかけ、愛してくれる人だった。

 私はお父様に言った。お父様だけがいればいい、と。

 でも、お父様は私を抱きしめて首を振った。一人は寂しいから、誰かと仲良くする方がいい、と。

 だからその日、私は屋敷の使用人と少しでも交流を持ってみようと思った。

 私は恥ずかしくて、なかなか勇気がでなかったから、物陰でずっと息を潜めて侍女たちにいつ顔を出そうか機会をうかがっていた。

 その時に聞いたのだ。私はお母様に捨てられた、と。お母様は妹だけを連れて出て行ってしまったのだ、と。


 その時、私は気づいてしまった。

 私は選ばれなかった、愛されない子だってことに。

 私がお母様に愛されなかったから、使用人のみんなも愛してくれないってことに。

 画然とした。

 同時に納得した。

 だから、みんな、私を愛してくれないってことに。

 私は、愛されない子だった。

 お母様に愛されることのない、必要のない子だった。


 だから、私は求めた。

 愛に飢えていた私は執拗に求めた。

 愛を。

 誰かから愛されることを。


 でも、私は知らなかった。

 どうやって人に愛されればいいかわからなかった。

 お父様は無償に愛をくれた。幼馴染は一緒に愛に飢えた気持ちを分け合った。

 けれど、他の人は近づこうとしても、みんな避けていくばかりだった。

 だから、私はいざ人に愛されようとしても、どうしていいかわからなかった。


 そのせいだろうか。

 私が歪んでしまったのは。





 ああ、いつからだったのだろう。

 私が抑えようのないその感情に流されてしまうようになったのは。

 一体、いつからだったのだろう。


 私は許せなかった。

 すべて持っていた妹が、私が最も得たいものをいとも簡単に得てしまうことが。

 妹はあのひとに愛されたのに、弟と従兄弟たちの愛ももらった。彼らは私のことを避けていたのに。

 妹はあのひとに選ばれたのに、私の婚約者から選ばれた。彼は私を見てもくれなかったのに。

 妹はあのひとと一緒にいられたのに、他の人とも一緒にいた。彼らは私の紋様を怖がって、近寄ってさえくれなかったのに。

 妹はあのひとを奪ったのに、お父様と私の幼馴染を奪った。二人しか私を愛してくれる人はいなかったのに。

 だから、私は許せなかった。

 渦巻く激情が私を飲み込み、そして、染めてしまった。

 私は、妹が憎くなった。


 気付いた時には、私はその感情に抗えなくなっていた。


 妹が憎い。

 あのひとに選ばれた妹が。


 妹が憎い。

 愛されている妹が。


 妹が憎い。

 すべて持っている妹が。



 私は妹を憎んだ。

 毎日毎日毎日。

 呪うように。

 妹を、憎んだ。


 ああ、妹が憎い。

 憎い。憎い。憎い。







 だけど、だけど、私は気づいてしまった。

 妹は憎い。

 でも、それ以上に、虚しい。


 ……寂しい、よぉ。


 お父様の言ったとおりだった。

 一人は寂しい。

 一人だと、何もない。

 私は何もなかった。

 空っぽだった。

 愛も何もない、そんな存在だった。


 ああ、私には、何もなかった。

 だから、私は、愛されなかったんだ。








 お父様の声がする。

 お父様の泣く声が。

 ああ、お父様、泣かないで。


 私は知らなかったの。

 私は分からなかったの。

 私は知ろうとしなかったの。

 私は、愚かだったの。


 私は、私は、お父様のことなんてちゃんと考えたことなかった。

 幼馴染や弟のことをちゃんと見てあげられなかった。

 婚約者のことなんて、知ろうとさえしなかった。

 私はひねくれてばかりで、応えようともしなかった。

 お父様の愛に。幼馴染の気持ちに。

 私は本当に愚かだった。


 だから、妹を憎んでしまった。

 あの子を虐げてしまった。

 あの子の気持ちを無視し続けてしまった。

 あの子も私との和解を望んで、愛してくれようとしたのに。

 愚かな私は、あの子の話をちゃんと聞くことさえしなかった。


 ああ、私は愚かだった。


 だから、お父様、泣かないで。

 こんな愚かな娘のために、お父様は泣くことはないよ。

 きっと私のせいでお父様の立場は悪くなってしまった。

 きっと私のせいでお父様につらい思いをさせてしまった。


 ごめんね。

 ごめんなさい。


 ああ、最後に、もし最後に許されるならば、これだけ言いたいの。

 ずっと怖くて言えなかった。

 でも、本当はずっとずっと言いたかったこと。

 お父様を疑っていたわけじゃないけれど、私が愚かにも弱いせいで言えなかった。

 最期だから、言っていいかな?

 ごめんね、わがままで。



 愛してくれて、ありがとう。

 愛してる、お父様。

ルートはぼかしていますが、ゲームの中のティファニアの気持ちを少しだけ。


彼女は心の矛盾ばかりでした。

ただの、かわいそうな子でした。

寂しがりやで、人一倍愛に飢えたただの、子供でした。

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