21 従兄弟たちと伯父さま
コンコン。
ノックの音が響くと、扉の前のメイドがおつきですと言い、ラティスに入室許可を求めた。ラティスはそれに頷いて了承を出すと、扉が開かれた。
そこから現れたのは、丁度学園に通っているような年頃の3人の少年と30代中ごろの男性だった。
ラティスはまだ説明していなかった自分の子どもたちに彼らはライトリアの息子たちと旦那であることを耳打ちする。ティファニアは会話の内容から察していたが、笑顔でありがとうございます、とお礼を言った。
「お久しぶりです、ラティス叔父様!」
ちょうど挨拶するために立ち上がったラティスを見ると、少年たちは爽やかに笑った。しかし一瞬顔をはっと固めると、挨拶したばかりの叔父には目もくれずカツカツと早歩きでその隣に向かった。もちろんそれは視界の端に可愛い天使たちが映ったからだ。
そして、もちろん2度目を許すラティスではない。
「ヴァルデマール、ハルトヴィヒ、ジルヴェスター、止まれ!!俺の天使たちの半径1メートル以内に近づくな!」
「なっ、そ、そんな!!」
少年たちはラティスの禁止を聞くと、ティファニアとティリアから大体1メートル離れたところで足を止めて絶望的な顔になった。
「叔父様、酷いです!!」
「僕たちは何もしていません!!まだ!!」
「そうです!!可愛い従姉弟になぜ近づいてはいけないのですか!?」
少年たちは自分の叔父の方を睨みながら文句を隠さずに述べる。今まで会えなかった従姉弟とやっと会えたのに愛でられないとはどういうことかと口々に不満を漏らした。
「お前たち、俺がお前たちからティーとティリアを引き離す理由がわからないのか?3人そろってライト姉様に似ていて本当に困る。」
「ちょっと、ラティス、どういう意味よ。」
ラティスが大げさにため息をつくと、横から怒気を含んだ声がかかる。しかし、ラティスはそれを無視して続けた。
「昔、お前たちがティーを抱きしめすぎて熱を出させたことがあっただろう?それを忘れたのか?」
あっ、伯母様だけじゃなくて従兄弟たちからもかわいがられ過ぎて熱を出したんだと身構えていたティファニアは思った。そして、隣の頼もしいラティスをちらりと見ると鋭い視線で従兄弟たちを射抜いていた。ティファニアはラティスのその優しさに嬉しくなるが、その視線の先の従兄弟たちは小さいころにやったことと言えど、実際に熱を出させてしまったことがあるゆえにばつの悪い顔をした。
「そ、それは、小さい頃の話です!今はそんなことしません!」
「さっきの勢いを見てそんなことをするだろうと思ったから止めたんだ。」
「いえ、たしかに勢いはあったかもしれませんが、可愛い従姉弟にそんなことするわけないじゃないですか!」
「お前たちがライト姉様に性格がそっくりであることを鑑みて俺は止めたんだ。」
「叔父様、酷いです!僕はお母様よりお父様似のはずです!いえ、お父様似がいいです!」
「ちょっと、ジルヴェスター……?」
三男、ジルヴェスターが口を滑らせたのをライトリアは聞き逃さなかった。自分の旦那がとても素晴らしい人であるのは大いに同意するし、その彼に似たいというのもわかるが、ジルヴェスターの言い方はまるで自分と性格が似たのが嫌であるようだった。本気で言っていないのは分かるが、先ほどから傍観するのはなんとなくつまらなかったので息子をからかうためにライトリアは問い詰めてみることにしたのだ。
「ジルヴェスター、どういう意味かしら?私と性格が似たのがそんなにいやだったの?」
「あっ、い、いえ、お母様、そういう意味ではなくて……。」
「じゃあ、どういう意味で言ったのかしら?」
「え、えーっと、……お母様の性格は、その、なんというか……。」
「なんというか、なにかしら?」
目に少し涙を溜めてあたふたする息子を扇でにやにやした口元を隠しながらライトリアは鋭い声で尋問する。しかし、その息子の後ろから自分の愛する人の声がした。
「ライトリア、それまでです。これ以上はジルが泣いてしまいますよ。」
「お、お父様!」
ジルヴェスターが救世主を見るかのように振り返った先には輝くような金髪と翡翠色の瞳、そして優しい顔立ちの自分の自慢の父親であるカマリアネス伯爵が穏やかに微笑んでいた。
「ライトリア、ジルをからかうのはほどほどにしてください。それに、ウルタリア侯爵様の前ですよ。」
「まぁ、エトヴィン様、ラティスなんてその辺に飾られている花か何かだと思えばいいのですわ。それに、息子をからかうのは母親の特権ですもの。」
自分の弟を景色、息子をからかい対象であることを隠しもせず上品に笑っていった妻にカマリアネス伯爵、エトヴィンはほどほどにともう一度注意しておいた。
そして、エトヴィンは妻の横にいるラティスに目を向けると、申し訳なさそうに眉を下げる。
「ウルタリア侯爵様、突然の来訪と妻と息子が騒がせてしまったみたいですみません。」
「いえ、エトヴィン兄様、前のように畏まらない話し方で大丈夫ですよ。爵位を継いで私の方がくらいが高くなってしまいましたが、私はエトヴィン兄様を本当の兄だと思っているのです。それに、ライト姉様とヴァルたちが騒がしいのは昔からですから。」
「そう、ですか?久しぶりなので少し距離ができたように思ってしまいましたが、ラティスは変わらないようでよかったです。」
実はエトヴィンとラティスは連絡は取りあっていたが、こうして話すのは久しぶりであった。それはティファニアたちが襲撃された後はラティスが会うことを拒否し、ティファニアが見つかった後はラティスはかなり忙しく、夜会で少し顔を合わせるくらいで私的な時間を取るのは実に6年ぶりであった。
「…その、あの時はすみませんでした。兄様たちが心配してくださったのは分かっていたのですが、その、顔を合わせなくて……。」
「ラティス、構いませんよ。それに、ティファニアも見つかったではありませんか。まだそろったわけではありませんが、それでも貴方が少しでも元気になってくれたのならよかったです。」
「兄様……。ありがとうございます。」
ラティスが自分を兄と呼んで綻ぶように笑うのを見て、エトヴィンは改めて安心した。自分が知っているラティスだ、と。
この数年合わなかっただけでラティスがすっかり変わってしまったように見えた。見た目は6年前とほとんど変わっていなかったが、あの事件以来自分が見かけたラティスの雰囲気は自分が知るものではなかった。自分が会えない代わりにライトリアに聞いたラティスの様子と自分が見た彼の様子でラティスはもう壊れてしまったのかと一時は思った。エトヴィンが知るラティスは明るく、聡明で身分関係なく自分を兄と慕ってくれる活発な少年だった。
しかし、当時のラティスにあったのは悲しみ、寂しさ、喪失感、絶望、そして、憎しみ。自分の中で気持ちの整理が全くつかず、心の支えだったいなくなった自分の家族を諦めたくないと縋りつくような思いが滲み出ていた。ラティスは時間を忘れるために仕事や妻と娘たちの捜索に没頭していたが、自分が何もできていない歯がゆさを噛みしめていたのだろう。
しかし、もう大丈夫だろう。エトヴィンはラティスを見て優しく笑う。まだ2人は見つかっていないが、ラティスの心をを支えてくれる人はいるだろうから。そう思ってエトヴィンはラティスの横の小さい、しかし、先ほどから自分とラティスの会話を理解して聞いているだろうティファニアに目を向けた。この子は絶対にラティスを支えて切ってくれる、そう思わせる力強い瞳がラティスを見つめていた。
エトヴィンが見たからだろう、ティファニアとエトヴィンの視線が交わった。
ティファニアは先ほどから従兄弟も伯父もラティスと話しているが、自分は正式に挨拶をしていなかったと思い、スカートをつまんで綺麗にお辞儀をした。
「お久しぶりです、カマリアネス伯爵様、ヴァルデマール様、ハルトヴィヒ様、ジルヴェスター様。ティファニア・ウルタリアでございます。本日はお越しいただきありがとうございます。」
「は、初めまして、ティリア・ウルタリアです。」
「ああ、どうもご丁寧にありがとうございます。エトヴィン・カマリアネスです。お久しぶりですね、ティファニア。といっても、貴女は赤ん坊でしたのでほとんど初対面ですね。そして、初めまして、ティリア。二人ともまだ幼いのにしっかりしていますね。それと、伯父と呼んでいただけると嬉しいです。息子たちもラティスをそう呼びますからね。」
エトヴィンが穏やかに笑ってそういうと、ティファニアはエトヴィンを伯父と呼ばせてもらうことにした。そして、ティファニアもラティスやライトリアのように自分をティーと呼んでほしいというと、エトヴィンは頭をなでてそれを了承してくれた。
「あっ!お父様、ずるいです!私たちはまだティーと会話さえてきてないのに!」
一番背の高い少年がエトヴィンに不満をこぼすと、そうだそうだと残りの2人から相槌がはいる。それを見て、ラティスはまた大きなため息をついた。
「はぁ、お前たちはまず落ち着け。」
落ち着かなければ会話も許さない、そう語っているラティスの瞳に少年たちはうっとまた息をのんだ。それを見かねたティファニアはラティスの裾をつんと引いて大丈夫だと目線を送った。
「お父様、大人は大人で子供は子供で話しますわ。お父様とエトヴィン伯父様も積もる話があるでしょう?それに、お父様はライトリア伯母様と新商品の詳しい話をしてもらわなきゃいけませんわ。だから、あちらで話してますわ。ね?」
ラティスはこの甥たちにティファニアと接触させるのは正直あんまりうれしくない。しかし、上目遣いで可愛らしく見上げてくる娘が自分で何とかすると目で訴えているので渋々だが、それを顔に出さずににこりと笑って分ったよと頷いた。
ティファニアはラティスの了承を聞くと、隣にいるティリアの手を取り、広いリビングのいつもはあまり使わないソファに向かった。そして、従兄弟たちに席を勧めてメイドたちに紅茶を頼むと自分も席に着く。
従兄弟たちはティファニアやティリアと話せることがうれしくてそわそわしているようで、ティファニアは自分よりも身体がずっと大きな男の子が思ったよりも子供じみて見えた。そもそもティファニアの周りにはシャルル、ユリウス、ティリアしか同世代のこともがおらず、なんだかんだ言っても3人ともしっかりした性格をしているので余計に彼らが子供じみて見えただろう。
ティファニアは目の前の従兄弟たちを見て少し笑うと、改めて挨拶をした。
「お久しぶりです。今日は皆様に会えてとてもうれしいです。」
「ああ、久しぶり、ティー。そして、初めまして、ティリア。ティーは前会った時は赤ん坊だったから覚えてないかな?私はエトヴィン・カマリアネスの長男、ヴァルデマール・カマリアネスだ。今、王立学園の2年生をやっている。気軽にヴァルと呼んでくれ。」
「じゃあ、僕も改めて挨拶するね。久しぶり、ティー。初めまして、ティリア。僕はエトヴィン・カマリアネスの次男、ハルトヴィヒ・カマリアネスだよ。王立学園を今年入学したての13歳だ。僕のことはハル兄様って呼んでほしいかな。」
「はい!最後は俺ですね!エトヴィン・カマリアネスの三男、ジルヴェスター・カマリアネスです!11歳です!ハル兄様のように、俺のこともジル兄様って呼んでね!」
「二人が兄様呼びなのに、私だけそうじゃないのは悔しいから、ティー、私もヴァル兄様って呼んでくれ。」
「わかりましたわ、ヴァル兄様、ハル兄様、ジル兄様。」
ティファニアが笑って3人の名前を呼ぶと、彼らは可愛すぎて悶えそうになった。自分の従妹が可愛すぎてやばい、と。
ティファニアは自分の隣で先ほどから名前を覚えきれなくて口を噤んでいたティリアに優しく従兄弟たちの名前を耳打ちする。すると、ティリアは小声で「えーっと、ヴァル兄様と、ハル兄様と、ジル兄様。」と数回呟いた。
またその行動もヴァルデマールたちの心を射抜く。目の前の従姉弟が天使すぎる、と。
ヴァルデマールたちが変な顔や行動を見せまいと身体の筋力を総動員させてプルプルしているのをみて、ティファニアはこてんと首を傾げた。
「どうかされましたか、お兄様?」
絶妙な角度で見上げるティファニアがヴァルデマールの心に突き刺さった。
「うっ!……私は今日、死ぬかもしれない…。」
「ええっ!?大丈夫ですか、ヴァル兄様!?」
「……あ、ああ。大丈夫だ。いや、天使の成長を見終わるまで私は死ねない!……それより、ティーはそんな丁寧に話さなくても構わないぞ。私たちは家族だからな。」
「そう、ですか?」
「ああ、僕たちにそんな畏まっても意味ないでしょ?ティーもティリアも、ね?」
ハルトヴィヒがティファニアたちにそういうと、ティファニアとティリアは一度顔を合わせて、元気よく「うん!!」と答えた。
打ち解けたところで、ヴァルデマールたちはティファニアとティリアを自分の隣に呼んで座らせた。ヴァルデマールが中心でその横にティファニアとティリア、そしてそのわきにハルトヴィヒとジルヴェスターで並んで座る。ヴァルデマールは両手に華、ではなく、天使でありご満悦だ。
「ねえ、ティーは今、レストランを経営してるんでしょ?僕たちも言ったけどすごくおいしかったよ。」
「ほんとに?あれはわたしとアリッサで料理して、考えたんだよ。」
「へー、凄いね。今度僕も一緒に料理させてよ?」
「うん!ハル兄様と一緒にお料理、楽しみ!」
「ティリアは今何歳?」
「えーっと、5さい、です。」
「そうか、そうか。最近はどんな勉強しているんだい?」
「さんすうのべんきょうとマナーのべんきょうです。お姉様みたいになりたいです。」
「ティファニアみたいかあ。大変だろうけど、頑張るんだぞ。」
「ティリアなら、大丈夫だよ!頑張って!
「はい!ありがとうございます、ヴァル兄様、ジル兄様。」
そうやって各々で楽しくしていると、ジルヴェスターが自分の反対側のティファニアを見て、優しく笑った。
「それにしても、ティーとフィーは本当にそっくりだよね。目元と瞳の色しか違いがないんじゃない?」
それを聞いて、ティリアは首を傾げた。
「ジル兄様、フィーってだれですか?」
ティリアの純粋な質問にジルヴェスターは驚愕した。そして、ヴァルデマールの方を見ると彼も同じく驚いた顔をしている。
「ティリア、フィーについて何も聞いていないのかい?レイフィア叔母様のことも。」
知らない人の名前が続き、ティリアはもう一度こてんと首を傾げた。
本当にラティスに何も聞いていないのだとヴァルデマールは目を見開いた。そして、ティリアは聞いていなくてもさわりくらいは知っているだろうとティファニアの方を見た。
「ねえ、ティー、君のお母様が今どこにいるのか知っているかい?それに、君の妹のことも。」
「……お母様?わたしはどこにいるか知らないよ。それに、わたしに妹がいるの?」
ティファニアはラティスからは何も聞いてことがないので、知らないと答えた。もし知っていたらそっちの方ががおかしいだろう。ラティスはあの事件、あの日のことを一言も話そうとしないのに。
「そう、か。叔父様はまだ伝えてないんだね。……じゃあ、私たちが伝える権利はないな。」
「…?そうなの?」
「ああ、ごめんな。私たちが伝えていいことではないんだ。」
ヴァルデマールはティファニアの母親や妹についてはラティスがきちんと話すべきだと思い、この場で説明することは止めた。自分が話すべきではないのだ。
「では、フィーってだれ、ですか?」
事情を知っているティファニアは追及しなかったが、ティリアは自分にもう一人姉がいかもしれないと気になったのだ。それにその姉が大好きなたった一人の姉であるティファニアと似ていると聞けば、余計に気になる。
その質問にヴァルデマールは少し懐かしむようにティファニアを見た。
「フィーは、……私たちの妹だよ。ティーにそっくりなんだ。今は会えないんだけど、いつかティーやティリアにも会わせてあげるよ。」
ティリアはヴァルデマールたちがとても悲しそうに見えたので、「たのしみにしてます」と答えるとそれ以上きけなくなってしまった。
しーんと空気が静まり返るとティファニアは従兄弟たちに笑いかけてクッキーを勧めた。自分が作ったのだというと、さっきまでの雰囲気など忘れたかのようにまた和やかな会話が始まる。
ティファニアは突然とはいえ、会いたかったライトリアや会ってみたかった従兄弟たちに会え、聞きたかった学園の様子やヴィレット商会への反応を聞けたのでその日は満足して終えることができた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして1月後に発売した新商品のシャンプーやリンスはライトリアの売り込みが素晴らしかったのか、貴族女性には爆発的に売れた。今は工房を増やそうかという案まで上がっている。ちなみに、新しい香りはすでに発売準備が整っている。
もちろんそのおかげでヴィレット商会は大いに儲かった。ティファニアの収入のほとんどが研究費やウルタリア侯爵領への出資にあてがわれ、ティファニアの計画の根幹であるスラムの救済にまた一歩、一歩と近づいている。
ティファニアは実際に行けてはいないが、ジークや他の者からの報告でこの1年でかなり活気がある領になったようだ。領内にあったスラムの人々には雇いの仕事を与え、子供たちは無償の学校に通わせているので、規模が小さくなってきているらしい。少なくとも、今は教会や孤児院で炊き出しをしているので飢えに困る人はほとんどいないだろう。
ティファニアはその報告を聞いて、ほっと安心した。そして、今笑えている彼らのためにこれからももっと頑張るのだとぐっと気合を入れなおした。
すべてとは言えなくても、ラティスみたいにとはいかなくても、あの救いのなかった場所で少しでも多く、できる限りの人を助けて見せるために。
活動報告に水曜日にとか書いておきながら、遅れちゃいました(;´・ω・)
忙しいときは次の日に持ち越しになるかもしれません…。
投稿できないときは活動報告でお知らせすると思いますので。。。
従兄弟たちが出てきましたね。
人数増えて、作者も書くのが大変でした…w
次回は婚約と王子様です。
蛇足
「ラティス、ティファニアはずいぶん賢いですね。私も驚きました。」
「当たり前ですよ、兄様。私とフィアの娘ですから。」
「ええ、先ほどのあいさつもそうでしたが、ラティスへの気遣いも素晴らしかったですね。それにしても、ラティスをあそこまで察してくれるのはずいぶん助かっているのではないですか?貴方は自分の弱いところを隠そうとしますからね。」
「…ははっ。確かに助かっています。ティーは私をちゃんと分かって甘やかしてくれる本当に出来た子ですよ。」
「ええ、そのようですね。貴方の溺愛ぶりを見れば、わかりますよ。ティファニアが貴方を甘やかしてくれているのですね。それに、ティリアも。あの子も将来有望ですね。周りの空気を察することが姉弟そろってとても得意なようですね。貴方にそっくりです。」
「まあ、私の場合はラミア姉様のお陰です。それに、私の得意な部分を二人が似てくれたならうれしいですよ。」
「ああ、でも、きっとですが、ティファニアは貴方の悪い部分も似ていますよ。」
「悪い部分、ですか?」
「ええ、あの子もたぶん自分の弱いところを絶対に他人に見せないでしょう?親しい人には徹底的と言えるくらいに隠しきりますよ、あの子は。私の勘ですけどね。」
「……思い当たることがあります。気を付けていますが、兄様の言う通りなりそうで少し怖いですね。辛いことも一緒に分けてほしいのに、ティーはそうではないのでしょう……。」
「はぁ、ラティス、貴方が話していない辛いことがあることをティファニアもきっとわかっています。あの子はさっき言った通り賢い子ですから。だから、もしかすると話してほしいのはお互い様かもしれませんよ。」
「……はい。」
「さあ、暗い話はなしにして、楽しい話をしましょう。久しぶりに会ったのですからね。それにしても、このお菓子はおいしいですね。」
「それはティーとティリアが昨日作ってくれたクッキーですよ。」
「まあ!ティーちゃんとティリアちゃんが!?」
と、大人たち(ライトリアは途中までログアウト)の会話。
ライトリアはこういう話だとちゃんと察してくれるよ!きっと!だって、弟が心配だもの!




