表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬ予定なので、後悔しないようにします。  作者: 千羊
第2章 幼少期~現在と過去編~
24/65

0.12 真珠ちゃん、お腹がすく、眠る。

お久しぶりです。

今週の投稿再開です。

 彼女が狭くて汚い家に戻ると、直ぐに二人の5,6歳の少女と少年が笑顔で駆け寄ってきた。少年は美しいブロンドの髪をしており、ふわふわと頭の上で揺らしている。少女の瞳はまるで黒曜石のように深く、黒くて綺麗だ。


「クーねぇ、おかえり!!今日は大丈夫だった??」

「クーねぇ、おかえりなさい!!今、ヴィレットがご飯作ってたよ!」


 彼女は嬉しそうに自分の周りをウロチョロしながら今日何をしたか報告してくる子供たちに微笑む。


「みんな、ただいま。今日は凄いお土産があるのよ。」


 彼女が大事に持っている籠を少し上にあげて示すと、子供たちはきゃらきゃらと喜んだ。


「本当に!?」

「クーねぇがすごいっていうから、また光る石?それとも、おいしいお菓子?」

「それは見てからのお楽しみ。」


 彼女は意味ありげにうふふと笑うと、一緒に隣の部屋に向かった。キッチン兼リビングのそこでは10歳くらいの少女が鍋の下の火の加減を見ながら、手際よく野菜を切っていた。


「あら、クーツェ、おかえりなさい。今日は、クーツェが野菜を持ってきてくれるって言ってたからあまりものの野菜を全部入れちゃった。」


 少女は彼女の方を見て、えへっと舌を出した。


「ヴィレット、野菜は残せるものは残さないといけないでしょう。いつ食べられなくなるかわからないのよ。」


 彼女はヴィレットに口では怒りながらも、今日は機嫌がいいので口元は笑っていた。


「はいはい、気を付けるよ。……それより、クーツェは早かったね。どうかしたの?なんか嬉しそうだし。」

「あら、わかるかしら?今日ね、すごいお土産をもってきたのよ。」

「えっ、なになに?」


 ヴィレットはお玉を置くと、彼女の方へ駆け寄ってきた。

 彼女は包丁やまな板ががごちゃごちゃと置かれているテーブルの上に少し場所を作ると、ゆっくりと手に持っていた籠をそっと置いた。そして、ゆっくりと籠にかぶせてあった布を捲る。


「わあぁぁ…。」


 ヴィレットが見たのは真っ白な肌と真珠の様な透き通る白金の髪の赤ちゃんだった。貧民街で育ってきたヴィレットには感嘆をあげることしかできない綺麗な赤ちゃんだった。その子はすやすやと絹の布の中で気持ちよさそうに寝ていた。


「クーツェ、このこの子どうしたの……?」

「えっ!何があったの!」


 彼女が答える前に、机と籠の高さのせいで中が見れていなかった黒い瞳の少女、マイカは興味津々に中を見ようと背伸びをしていた。横にいる金髪の少年、ブロンもなんだろうと早く中身が見たいようだ。


「うふふ、綺麗でしょ?見つけたから連れてきたの。」


 彼女はそういうと優しくその綺麗と言った赤ん坊を籠から抱き上げた。すると、直ぐにマイカとブロンは彼女にしゃがむようにせがみ、腕の中の赤ん坊を見せてもらった。


「わあぁぁ…。」


 二人から漏れたのも感嘆だった。白磁の様な肌に浮き立つようなぷっくりとした桃色の唇。少し赤く染まった頬はつついてみるとモチモチしていて癖になりそうだ。


「ね?綺麗でしょ?真珠みたいなのよ。」

「うんうん!すごくきれいだし、すっごくかわいいね!」

「すごくかわいい!この子これからここに住むんだよね?じゃあ、ぼくのはじめてのいもうとだ!」

「ええ、本当に真珠みたいね。髪がきらきらしていてクーツェが気に入るのがよくわかるわ。」


 マイカとブロンはきゃあきゃあとそれぞれ嬉しそうだ。その様子を見て、能天気なヴィレットも彼女がどこから連れてきたという疑問も忘れて一緒に喜び始める。


「この子の名前、ルゥルゥにするわ。」


 彼女は嬉しそうに赤ん坊、ルゥルゥの頬をなでるとそう言った。


「ルゥルゥかぁ…。かわいいね!」

「うん、いいなまえだよ!」


 マイカとブロンはそう喜ぶと、ルゥルゥの頬をぷすぷすとつつく。既に癖になってしまったようだ。


 しかし、先ほどまで穏やかに眠っていたルゥルゥもさすがに周りが騒がしくなったことで起きた。目をパチクリ開け、綺麗な紫の瞳を2,3回瞬かせると盛大に泣きだした。


「うえぇぇぇぇん!!」


 泣き声が狭い部屋の中に響き渡り、ヴィレットたちは赤ん坊の世話などしたことがなかったので、おどおどしていた。唯一落ち着いているのは彼女だけである。


「あら、お腹がすいたのかしら?」


 そういうと彼女は15歳にしては豊満な胸を出し、すぐにルゥルゥを抱いて胸元に近づけた。先月まで子供がいた彼女からはまだ母乳が出る。

 ルゥルゥは本当にお腹がすいていたようで、すぐにしゃぶりついて口を動かした。


「よかった。やっぱりお腹がすいていたのね。」

「クーツェ、もうちょっと恥じらいを持ちなさいよ。」


 ヴィレットは自分の絶壁、いや、将来性のある胸を見た後にじとりと彼女を見た。しかし、彼女はけろっとしている。


「何を言ってるの?私があなたたちを育てたようなものなのよ?一緒に水浴びをしていたのに恥じらう必要はないわ。それに、こんなもの見られても何ともないわ。」


 彼女が他の人と感覚がずれていることは4歳から彼女に面倒を見てもらったヴィレットにはよくわかっている。彼女は基本的に彼女が言う『光る』もの以外には無関心なのだ。そして、『光る』ものが自分の手に届く距離にあるならば大切に大切に守る。ヴィレットも彼女に綺麗な紫の瞳だということで拾ってもらったに過ぎない。そんな理由だとしても大切に育ててもらったのは確かだ。ヴィレットはそんな彼女に感謝している。しかし、やはり彼女は自分が『光る』ものではないからと無頓着過ぎではないかとため息をついた。


「クーツェは美人だし、丁寧だし、む、胸もでかいから男たちが黙ってないでしょ?もう少し自分のことを見なよ。」

「私は『光る』ものではないわ。」

「そんなことないよ。瞳は水晶みたいに透き通った水色で綺麗だよ。」

「私自身が見れないんだったら意味ないわ。」


 やはり『光る』ものを中心に生きる彼女のことが分かっても、他人から見ればおかしいんだろうなとヴィレットは2度目のため息をついた。しかし治ることはないだろう、そう思い、ヴィレットは他のことに意識を向けることにした。


「あ、この子私と同じ瞳の色なのね。」

「そうよ。この子の方が深い色よ。ヴィレットの瞳は透き通るようだけど、この子のは吸い込まれそうで綺麗でしょ?」

「ほんとだぁ。あっ、こっち見た。」

「きれいだね!あっ、わらった!」


 彼女がルゥルゥに授乳をしている間、マイカとブロンはあんまり見ることがない赤ん坊の反応を見て楽しんでいた。

 すると、扉の方から足音がした。


「たっだいまー!いいにおいがする!!」

「ただいまー。今日はあんまり収穫なかったよ。」

「ただいま。カモが少なくって今日はまあまあだったよ。」


 部屋に入ってきたのは綺麗な青い瞳の7歳くらいの少女と翡翠のような瞳をした12歳くらいの少年、そしてさらさらとした金髪の9歳くらいの少年だった。少女ははつらつとしているが、少年たちはぐったりと疲れている。

 彼女は入り口に顔を向けると、にっこり笑っておかえりと言った。


「うん、ただいま……って、その子どうしたの?」


 部屋に入ってすぐに目に入ったその赤ん坊に翡翠の瞳の少年は驚いた。


「見て、エルド。綺麗でしょ?連れてきたのよ。」


 全く答えになっていない彼女の返事に少年――エルドはため息をついた。もう彼女がきれいだと言って子供を拾ってくるのは5度目だ。最初はヴィレット、次に自分と一緒に帰ってきた少年――コルト、その次は隣にいる少女――サファニア、そしてマイカとブロンだ。仕事帰りにいつの間にか連れてきており、理由は毎回今と同じだった。


「うん、まあ、わかってたよ。綺麗だから連れてきたんだね。」

「そうよ。だって、光っていたんだもの。」

「……うん。」


 エルドはこれ以上きくのを諦めた。人間諦めが肝心なのだ。


「わぁぁぁ!新しい子だ!かわいいー!」


 先ほどまで今日の夕飯をつまみ食い、いや、味見をしに行っていたサファニアは赤ん坊が増えていることにやっと気付いた。すぐに彼女のもとに駆け寄り、彼女の腕の中の赤ん坊を覗いて頬をつついた。


「ほっぺ、ぷにぷに~。この子、ほんとに綺麗な肌してるね!」

「そうよ。目も髪も綺麗でしょ?ルゥルゥっていうのよ。」

「へー、ルゥルゥかぁ。よろしくね!!……それより、ごはんにしようよ!!お腹すいたよ!」


 あたりには食欲を掻き立てるいい匂いが香っているが、机にはなにも用意されていなかった。しかし、既にお腹がすく時間だ。ルゥルゥ以外まだ誰も何も食べていないのだ。サファニアの腹の虫は先ほどからグーグーと騒いでいる。それを聞いたヴィレットたちは食いしん坊なサファニアを見て笑うと、すぐに晩御飯の準備を始める。

 今日は余りの野菜をつかったいつもより少しだけ具が多いスープとエルドたちが働いてもらってきたパンだ。彼女が授乳中に眠ったルゥルゥを隣の部屋に置いてくると、みんなで一斉に食べ始める。

 夜にしか食べられないご飯は一日のご褒美なのだ。


 スラムでこんなご飯が食べれる人はほとんどいない。これもあの宿で働いている彼女のおかげだ。傷んだり、古くなったりした野菜や余り物の食べ物を彼女が持ってきてくれる為、ここでは1日1食は食べられる。

 一緒に食べるのは彼女とエルド、そして彼女が拾ってきた『光る』子供たちだけだ。

 今日、その一人になったルゥルゥは光が少し差し込む部屋で柔らかい絹の布に包まれてすやすやと眠った。

整理のために一応


クーツェ:15歳。紺の髪。薄い水色の瞳。『光る』ものが好き。


エルド:12歳。濃い茶色の髪。翡翠の瞳。みんなのお兄さん。苦労人。


ヴィレット:10歳。灰色の髪。薄い紫の瞳。料理担当。単純。能天気。


サファニア:8歳。濃い蒼の髪。青の瞳。食いしん坊。すごく元気。超元気。


コルト:8歳。薄い茶色。金色の瞳。年の割に大きい。苦労人その2。


マイカ:6歳。黒い髪。黒い瞳。お姉さんぶりたい。クーツェ大好き。


ブロン:5歳。金髪。緑の瞳。みんなの弟。お兄さんぶりたい。


ルゥルゥ:0歳。白金の髪。濃い目の紫の瞳。新しくやってきた赤ちゃん。かわいい。ていうか、天使。


女の子たちが元気ちゃんだったり、不思議ちゃんだったりするので男の子たちは比較的苦労人になっちゃいますw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ