パズルに愛を込めて(中編)
「そう。だけど、いまどき、ピースのパズルなんて、書くことがなくて、どんどんページが減っていくって嘆いて、このままじゃ廃刊になるんだって言うから。」
「で?」
「本当は君の会社に頼みたかったんだけど、絶対断られるだろうし。君も反対するだろ?」
「当たり前だろ!どこの世界にショートショートをパズルにするやつがいるんだよ!いや、普通考えつかないだろ!」
「だから、自費で作ってみた。ついでに、売れてない画家の友人がいるから、そいつに背景を頼んだ。記事に載せたら、彼の両親が喜んでくれたよ。」
「そういう問題じゃないだろ!作ってみたじゃねぇだろ。そんな金がどこにあるんだよ。」
「僕の少ない貯金と父さんから。」
「親父さん?」
春男の父親はサラリーマンだが、それ以外にもあれこれ仕事をしている。妻には黙って。
「ほらインターネットでの副業がなかなか好評で臨時収入があったらしいんだけど、別に使い道がなかったみたい。この間、欲しがっていた電機釜、送ったし。そのお礼だって。」
金があるなら貯金すればいいと思われるだろうが、妻に内緒の金だ。金があるなら自分で電機釜くらい買えばいいじゃないかと思われるだろうが、金があることを妻にばれてはならない。夫はそのためにあれこれ工夫をする日々だ。
「最初は、絵を入れないつもりだったんだけど、偶然友人に会ったもんで。絵を書くついでに、ちょっと金も出してくれたんだ。」
「どこで、会ったんだ、この画家に。」
「ん?ああ、この間、道であった。あんまり売れてないから、田舎に帰ろうかと思っているっていうからさ、その前にって、誘ったんだ。」
オレは基本的に、知り合いにばったり会うということは、ほとんどない。しかし、なにゆえ、春男にはそんなに知り合いに会うのだろう。それも会っても、オレにいいことは基本的にはなにもないという、このオチ!実に最悪だ。
基本的に作家というものは、出版社から依頼されて、作品を書き、それを印刷してもらい、作品として世の中に作品として出ているものである。他には、そんなに利益の上がらない作品は、自分の費用を用いて、印刷してもらうことが出来る。
しかし、作家として、すくなくとも、作品だけで生活している作家が、誰も言わずに、自費を使って出すだろうか?
オレと春男は同じ年だし、高校までは学校もずっと同じだった。
しかし、今の時点では違いがある。まぁ、 はっきりいって、給料が大きく違う。オレはサラリーマンだが、春男は自営業だ。人気作家とでもいうなら春男のほうが給料はいいだろう。しかし、いまのところ、どうかんがえても、オレの方が稼いでいる。
そんな状態で、どこの世界に、ショートショートを自費でパズルにして出す作家がいるというのだろう。
いくら、売れない画家が背景に少しを書いているとはいえ、決して安くはないはずだ。
しかし、春男のほうはあまり、貯金だとかを気にしていないようだ。絶対に老後に困る気がするのは、オレだけのようだ。
春男の両親の収入を考えると、春男一人くらい、食べていけるのかもしれない。春男の妹は、春男よりもどう考えてもしっかりしているので、大丈夫だろう。
「なかなか面白いだろう?話もそれなりに面白いよ。」
春男はにこやかに微笑んでいた。
「ただねぇ、あれには欠点があった。出来上がってから、気がついたんだけどさぁ。」
オレに言わせれば欠点だらけのような気がするのだが。
「話は基本的に起承転結に書かれているだろう。だから後ろの方からパズルを埋めていくと話のオチが見えるんだよねぇ…。」
そんなことに作るまで気がつかないとは、これでも話を考える小説家なのかと改めてオレは溜め息をついた。




