生首 (前編)
生首到来
春のうららかなこの季節、にはまだ早い。昼間はだんだんと温かくなっているが、夕方にはまだ寒いのだ。オレは、いつものように春男の家に向かっていた。
春男の家にはいろんな人がやってくる。春男が変わっているのからなのか、春男を気に入る友人たちが変わっているのか。しかし、オレは友人としてではなく、仕事だ。ほとんど毎日のように家に行っているが、仕事だ。
それはともかく、今日はいやな予感がしている。春男の家に行く前には一応メールで行くと知らせておく。すると、わざわざきっちりと返事が戻ってくる。しかし、今日は、いーよーと、最後の棒線が多い。面倒くさがりの春男がわざわざ追加していると事が気になる。
「春男ー、きたぞー。」
ドアを開けるとそこには。
「いらっしゃい。」
「やぁ。」
声が二つ重なった。
「ああ、お父さんがいらしていたんですか。」
そこには、春男の髪を切る春男の父親がいた。春男と同じように、にっこりと笑う。
「元気だったかい、佐々木君。」
「はい、おかげさま・・・・・・で。」
部屋の奥に進むにつれて、自分の笑顔が凍りついた。
春男は、いつもオレが座っているソファに座っていた。そのうしろに、髪を切っている春男の親父さんが立っている。つまり、他には誰もいない、はずだった。
しかし。
普段、食事などをしている机の上には、首だけが大量に置かれていた。
もちろん、ホンモノではない。さすがに、そんなことはない。しかし、いくらマネキンでも頭だけがこんなに飾ってあると気持ちが悪い。
「こ、これは?」
そこにトイレの水が流れる音がした。振り返ると誰かが出てきた。
「あ、お客様ですか?」
「いいんだ、僕の編集を担当してくれている洋介だよ。洋介、彼は父さんが髪の切り方を学んでいる、昭二君だよ。」
「こんばんわー。」
その人はにこやかに微笑んだが、なぜかオレの顔はちょっと引きつった。
「どうも。」
偏見かもしれないが、通常の男が、ピンクとブルーに髪を染めて、小指と立てて体をくねくねさせて歩くだろうか?
「じゃ、この首はカットの練習用?だけど、なんで、ここで?」
「ああ。こいつの髪を切りに行こうと思っていた頃だったから、ちょうどいいと思ってついてきてもらったんだ。」
「いやいや、ボクなんか。秋元さん、基本的にとても覚えがいいから、あまり教える事がないほどだよ。」
その人は、ほがらかに微笑んだのだが、オレは個人的にはどこで、春男の親父さんとこのくねくねした人が知り合いになったのかを知りたい。
よく考えると、春男の友人に個性的な人が多いのは春男の父親の影響かもしれないと、だんだん感じるようになっている。春男の父親はどうみても、裏世界の人間かよくて、船の船長か、大工の棟梁だろうという強面の人だ。そんな人がとなりに昭二君をつれて歩くようなタイプには見えない。
「えっと、どういう知り合いなんですか?」
「拾った。はははは。」
春男の親父さんと春男は笑ったが、オレの顔は引きつった。シャレにならない。




