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母の日という日

母の日という日


穏やかなこの季節。花屋の店頭に、カーネーションが並ぶ頃、母の日がやってくる。大人になったら、母の日などすっかり忘れていたが、春男と会ってからはついでにオレも送るようなった。

なんのついでなのか、当然、春男が送るついでだ。

しかし、普通なら母親の欲しい物であったり、母親が使うものを送るものなのだが、ここの家はちょっと変わっている。それは、春男の家においてあるパンフレットで分かる。

「なんだ、今年は。」

オレは早速聞いた。

「なにが?」

「なにが、じゃない。これ、親父さんが持ってきたんだろう?」

春男の家では毎年、春男の父親が送る物のリストを送ってくる。もしくは自分の手で持ってくる。オレはそれをさっそくパラパラと見始めた。

「ああ、母の日ね。そう、今年はなんでも、いい鍋と、いいパン焼き機が出たらしくてね。どっちでもいいって。」

そう、春男の家の母の日のプレゼントは、春男の父親の欲しいもので決まる。使う頻度も、おそらく父親のほうが多いのではないだろうか。

「鍋・・・・・・ねぇ。じゃあ、ちょっと聞いてみる。」

「誰に?」

「オレの母親。どっちがほしいか。」

「そうだよねぇ、普通は聞いてみるよねぇ。」

 春男はため息をついた。

「そういや、お前は聞かないのか?持っているものを贈ってもしょうがないだろ。まぁ、親父さんが選ぶくらいだから、ないだろうとは思うが。」

「あー、母さんは自分がどんな鍋を持っているかなんて、気にしないよ。」

「そうなのか?」

オレは目を丸くした。有名な料理研究家がそんな事でいいのだろうか。

「うん。調理器具は、デザインで決めているみたい。それを父さんがそっと、こっちのほうが機能がいいとか、サイズがどうとか、助言しているみたい。」

「あいかわらず、仲がいいなぁ。」

 春男がくるりとこっちを向いて言った。

「そのパンフレットを見て、今年、僕が考えているのは、パン焼き機のほうだね。」

「なんでだ?」

「軽いほうが送料が安い。鍋のほうは性能はいいみたいなんだけど、重いみたいだ。重いと、洗うのも大変だし、大きいのを送って、料理を大量に作られても困るしね。」

「・・・・・・なるほど。」

結局、今年の母の日は二人とも、パン焼き機に決まった。オレは母からかなり喜ばれた。わざわざ電話をよこして、あんたにしては珍しくセンスがいいとほめられもした。どうやら、誰か女性に選んでもらったと勘違いしているようだが、まさか、本当の事は言えず、オレは黙っていた。ばれても、嘘はついていないと言い張れるというものだ。

それにしても。

春男の父親は「パン、焼いたぞ。今回の機械はメロンパンまで作れるんだぞ。うまそうだろう?」といって、たまに持ってくる。

もらった当人よりも使い込んで、もらった当人よりも喜んでいる。

まぁ、使わないよりかはいいかとオレは春男と焼きたてのパンを食べながら考えていた。

ただ、一体誰のための母の日なのか、オレは少々疑問に思う今日この頃だ・・・・・・。


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