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春男の母を訪ねて

春男の母を訪ねて


オレはまったく日本から出た事がないだけではなく、英語も苦手だ。話しかけられるのもダメだが、電話はもっと弱い。それは、春男にかかってきたものだった。

「出てー。」

春男はのんきに言った。

「$%&#:@・%$アキト?」

オレがえらく早口の英語の中で唯一聞き取れたのは、春男の本名だ。

「あー、ウェイト!春男、電話だ。なに言っているかさっぱり分からん!」

春男が電話に出た。

「はろぉ?」

なんだか、やけにむこうが一方的に話しかけているのか、春男はうんうんと頷いてしかいない。頷いても見えないだろうが。

「OK」

話が終わった。

「誰だ?」

「母さんの知り合い。明日、日本に来るって。」

「まて?なんで母親の知り合いから電話がお前にかかってくるんだ?」

「母さん、明日チベットから帰ってくるんだ。だから。」

「チベット?チベットって、あのー山の、あれか?」

「そう。なんでも高い地域の動物の栄養価を見て来るんだとか言っていたけど、あれはただ単に、行きたかっただけだろうね。」

「マキさん、あいかわらず、行動的だな。で、外国人の友人が来るのか?」

「いや、菓子作りの先生だよ。本人は先生なんかじゃないといいはっているけど、母さんは勝手にそう呼んでるんだ。教えてくれる人は、誰でも先生だって。」

「へぇ。じゃ、今度、マキさんは菓子作りをやるのか?」

「んー。」

春男は渋そうな顔をした。

「ちょっと違う。菓子を作ってもらって、それを見ながら、偽物を作る人との仲介になる。」

この説明で、誰がわかるというのか。いくら、春男との付き合いが長いオレでもわからない。こいつのよくないところは、そういうところなのだろう。まずは、自分の分からないところから聞いていく事にした。

「偽物って何だ?」

「ほら、レストランとかで飾られている、ロウでできた、レプリカ。」

「そのレプリカを、誰が作るんだ?」

「僕は知らないんだ、明日、会うそうだよ。」

なるほど、だんだんと話が見えてきた。

「つまり、明日、マキさんはお菓子作りの先生とレプリカを作る人とも会うんだな。で、先生はホンモノの菓子をつくり、レプリカを作る人は、それをみて、作るって事だな?」

「そうそう。母さんは、両方と知り合いだから真ん中にいるんだ。」

「なるほど。」

 やっと話が見えてきた。それにしても。

「なんで、そのお前の家の電話番号を知ってるんだ?」

「母さんが教えていくんだよ。自分がいない時は、僕のところにかけてくれって。僕なら大抵家にいるし、言葉もちょっとならわかるしね。」

「なるほど。」

 オレは頷いたが、春男と知り合いになって、春男の母親のことにも詳しくなっていく自分が少々怖い今日この頃である。


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