パズルに愛をこめて(後編)
それから、数日後の今である。
「あの、パズルの作品のことですか?」
オレの顔はまだ、しかめたままだった。
「あれが、パズル愛好家の間で話題になってな。そんなものがあるとは、思いもしなかったがな!向こうの会社とこっちとで協力することになった。かなり!不本意だがな!なにか、あの作家に書かせろ。ただし、今回は普通の本だからな。」
オレは溜め息をついた。
どうしてオレは作家という職業から離れて行くようなことばかりしている奴の担当なのだろうか……。
例のパズル作品のせいで、春男はかなり酷評がされていた。形式だけのうすっぺらい内容だとか、書籍に対する冒涜だとか、作家を名乗るのもおこがましいとまでいわれていた。まぁ、それは、作家や出版業界の間で囁かれているだけで、あまり外にはでなかったようだ。
せいぜい、載っても雑誌の端っこだった。
そんななか、編集長は言った。
「いいか。本人には見せるな。」
春男にいい印象を欠片も持っていない編集長にしては珍しい意見だと思ったが。
「それで、落ち込んで、マキさんに迷惑をかけたらどうする!」
と、力説する編集長を見て、納得した。本当に、編集長は奥さんの次に、マキさんを大事にしているようだ。
ところで、編集長には言わなかったが、春男はすでにあれこれと言われていることを知っていた。テレビやファンからの手紙に一喜一憂、影響を受けやすい春男だが、なぜか雑誌は気にならないようだ。
「自筆なら考えてもいい。だけど、印刷されているものじゃぁねぇ。ホントに、本人が言っているのかわからないし。」
と、いうことだったようだ。
「とにかく、パズルは一回きりだぞ。今回、何か書くにしても、書籍だからな!」
ため息混じりに言った春男は言った。
「そうだね。やっぱり、パズルだと、埋めている途中でオチが先に読まれてしまうからなぁ。今度やるなら立体パズルだよなぁ。」
「そういう問題じゃない!いいか、絶対に、ダメだからな!」
「わかったよ……。」
やっぱり、オレは怒鳴りつけた。どうやら、懲りてはいないようだ。こんなことで、懲りてくれるようならとっくに作家など辞めているに違いない。わかってはいるのだが、どうも、並の神経は持ち合わせていないようだ……。
ところで、その後、いいことが二つあった。
売れなかった春男の友人らしい画家の絵は、ちょっと注目されたことによって、絵が少し売れたらしい。お礼だといって、その人は小さな絵を春男に渡していった。このまま大物になったら、これが売れるかもしれないと、春男は笑っていた。
例のパズルの雑誌は、同じようにちょっと注目されて、売上が伸びたそうだ。記事を書いた人物によると、廃刊はもうちょっと先になりそうだとのことだ。しかし、まだ廃刊から完全に遠いたわけではないようで、ほかになにかパズルでできるんじゃないかと、新たな材料を求めて走り回っているようだ。
しかし、いいこともあれば、悪いこともある。
春男だ。
今回、パズル雑誌と協力して、本を出したのだが、売れなかったのだ。もちろん、春男のファンは買ってくれたのだが、パズルのファンまでは巻き込めなかったようだ。
編集長は、頭を抱え込み、一層、春男のことが憎らしくなったようだ。
春男は何事もなかったように、今日も作品を打っている。
オレはため息をつき、あきめた。




