第8話 幻(まぼろし)
次の日の昼休み、タツマはオルタと二人きりでお弁当を食べていた。
部に復帰して以降は、クラスメートの金敷達と昼食を伴にしていたタツマではあったが、今日は誰からも誘われなかった。避けられていた。
女子生徒から、汚い物を見るような目が浴びせられていた。
男子生徒からは、かかわり合いになりたくないと目を伏せられていた。
いつもと何一つ変わらず、じゅるじゅると食事を摂っているオルタだけが、タツマにとっての救いだった。
タツマの事を話しているのだろう、遠くから聞こえるヒソヒソ話の中に、偶にタツマの名が聞こえることはあったが、誰もタツマに声をかけようとはしなかった。
ただ一人の来客を覗いては。
「す、すみません。ここに、ダンジョン部の須田さんはいらっしゃいますか?」
廊下から教室を覗いているのは午後10時の淑女とよく似た顔。
万十もみじが、タツマの元を訪れていた。
魚里高校の屋上は開放されている。
昼休みは生徒たちで賑わうその場所は、今日に限っては誰もいなかった。
梅雨の空の下で、いつ雨が降り出すかも解らぬ屋上で、弁当を広げる気には誰もならないだろう。
鉄製の扉から屋上に抜けだした影は二つ。須田タツマと、万十もみじだ。
最初に切り出したのはタツマであった。
「昨日は本当に申しわけありませんでした!」
タツマは両手を体の側面に向け、きっちり90度で頭を下げた。もみじが自分を呼び出した理由が、他には思いつかなかった。
「そ、その事はもういいですから。お願いですから、頭を上げて下さい」
もみじが、両手をあたふたと振りながら恐縮していた。頭を上げると、やはり午後10時の淑女に顔の作りがそっくりであった。
「そんな事より…」
もみじは言った。
「私に似ているという人の事を、詳しく教えていただけませんか?」
タツマは午後10時の淑女との出会いから始まり、これまでの経緯を一つ一つ語っていった。
タツマの説明をもみじは真剣に、鬼気迫る程の表情で聞いていた。午後10時の淑女の暴挙の一つ一つを、笑うことも、呆れることもなく、頷きながら、時々何かを考えこむように。
ひと通り聴き終わった後、もみじはタツマにこう尋ねた。何かを期待しているような、震える声で。
「最後にその人と会ったのは、いつですか?」
「昨日ですけど」
タツマが何気なく返した返答に、もみじは言葉を無くした。ポロポロともみじの目から涙がこぼれ落ちていった。
「やっぱり、やっぱり姉さんは……」
もみじの最後の呟きはタツマには聞こえなかった。午後の授業の始まりを告げるチャイムと重なった為だ。
同時に、ポツポツと雨がふりだした。
「その、先輩…、すみませんが俺、次の授業が…」
「あっ、ご、ごめんなさい、最後に一つだけ! その人は、その人は今日も夜10時に貴方の店に来るのでしょうか?」
「約束してるわけではありませんけど、ひょっとしたら……」
「来る」とは言えなかった。昨日の別れ際の午後10時の淑女の様子を思いだす。
後味の悪い別れ方だったのだから。タツマが彼女の頬に触れてしまったことで、タツマと午後10時の淑女のあいだで、何かが壊れてしまった気がした。
突然どこかへと消えてしまいそうな、そんな予感を感じていたのだ。
正体の解らぬ不安が、タツマの胸にこびりついている。
「それじゃあ、お先に失礼します」
タツマは一礼すると、午後の授業へと向かった。
もみじだけは雨の中、そこから動かなかった。
▲
▼
「今日も来ちゃった」
「………いらっしゃいませ」
タツマの不安など、彼女には関係ないのだろう。
午後10時の淑女は、いつもの勝ち誇った表情でタツマに微笑みかけた
昨日の出来事など全てリセットしてきたかのような、いつもと変わらぬ彼女の顔だ。
ただ一つ、服装だけはいつもと随分変わっていた。
「ねえ、今日の私。どこか違うと思わない?」
「……随分と、思い切った格好ですね‥」
タツマの返答に、午後10時の淑女は満足そうに頷いた。
「すこし弄ってみたのよ。針と糸ならあったから。どう?」
午後10時の淑女がくるりとそこで回る。
ギリギリに短いワンピースの裾が翻る。裾丈がいつもより20cm程短くなっていた。
「中々のものだとは思わない?」
そう言って、いつものようにカウンターに肘をつくと、上目遣いで見上げてきた。バックリと割れた襟元からはみ出る胸が、わがままに存在を主張していた。
何で自分はこんな人の事を心配してしまったのだろうか。
そう思いながらも思わず視線が胸元に延びるのは、男の悲しいサガであろう。
視線を受けても恥ずかしいなどとは思っていないのだろう、午後10時の淑女は堂々と胸を張っている。
「ねえ、女の子ってなんでこんな格好すると思う?」
クイッと肩紐を引っ張ると、胸元が大きく開いた。
黒い影でハッキリと中身は見えないが、下着のようなものはつけていない気がした。
タツマは妄想を振り払うように、ブンブンと首を左右に振った。それを否定の合図だと彼女はとったのだろう。正解を語り始める。
「女って欲が深い生き物なのよ。ちょっとでも綺麗に見られたいって思うの。見栄を張りたいのよ」
肩から伸びる白い肩と上腕が綺麗だった。形の良い鎖骨が綺麗だった。確かにいつもより、彼女は一層綺麗に見えた。
「見せたい相手は友達だったり、街行く誰かだったり、女同士のつまらない意地の張り合いだったりするけれど、でも、やっぱり一番は……」
午後10時の淑女はそこで言葉を一度切ると、タツマを見つめた。勝ち気な目の炎の奥に、不安気な煙がくすぶっているように思えた。
「気になる人に…、見て欲しいの」
心臓がトクンと揺れる。午後10時の淑女の瞳も、昨日のように揺れていた。
「女って、欲深い生き物なのよ。…だから」
自分に言い訳するように、彼女は言う。
「私にもう一度…、触れて貰えないかしら。昨日みたいに、貴方の夏みたいに暖かい手で。あと、もう一度だけでいいから」
祈るようにそういった。『欲深い』そう自分を評する彼女の願いは、余りにもささやかな物だった。
言い終わると、午後10時の淑女はギュッと目を閉じた。
まるでこれから父に殴られてしまう子供のように、ギュッと目を閉じていた。
泣き黒子が、涙の雫のように見えた。
タツマはぐらぐらと揺れる。
-触れたい-と思う。
-この人に触れたい-そう思う。
女性に対して、自分の意思でハッキリと触れたいと思ったのは、タツマには初めての事だった。
右手を伸ばす、彼女の頬へ。勝ち気で可哀想な泣きボクロへ。
タツマが動いた気配を感じたのだろう。目を閉じながらも、彼女は幸せに微笑んだ。
本当に綺麗な人だと。そう思った。
扉が、開いた。
自動ドアが開いていた。今まで、午後10時の淑女がいる間は決して開くことの無かったコンビニの自動ドアが。
泣きボクロに触れる寸前で、タツマの手が、止まった。
「姉さん…」
自動ドアから入ってきた誰かは、午後10時の淑女と同じ顔をしていた。
泣きボクロは無いが、泣いている。涙の雫を次々と頬に垂らしている。
乱入者は、万十もみじだった。
▲
▼
「姉さん…」
震える声でそう言った。万十もみじが見た者は、紛れも無く姉だった。涙で視界が滲んでいたが、シルエットと纏う空気だけでそれが姉だともみじにはわかった。
カウンターに肘を付いて、横顔ははっきりと見えなかったが、紛れも無く姉だ。姉が昔よくやっていたポーズだ。
もみじが作るおやつを、両肘をついて待っているあのポーズだった。
「姉さん! 姉さん!! 生きて! 生きて!」
死んだと言われていた姉が生きていた。ダンジョンに取り残された姉が生きていた。
「(やっぱり! やっぱり姉さんは生きていた!)」
ちょうど一年前の事だ、沈鬱な表情で捜索隊の打ち切りを告げた冒険者協会の職員に、もみじは噛み付いた。
姉は絶対に死なない。あの強かった姉が死ぬわけがないと。両親に取り押さえられるまで職員の胸ぐらをギリギリと締めあげた。
冒険者に幻滅した。だから部に、行かなくなった。
元々、姉に憧れて始めた冒険者であり、キャッチャーのポジションであった。
姉を救えなかった冒険者になど、もはやなる気はなかった。
推薦入学で入部していたもみじに退部は許されなかったが、幽霊部員になったもみじを、誰も責める事はなかった。
あの五井ですら説得を諦めた。
もみじの控えめな性格の内には、数ヶ月の間、憎しみが渦を巻いていた。
姉を奪ったダンジョンが憎かった。姉を救えなかった冒険者が憎かった。
一年経ち、憎しみが諦めへと変わっていった。心が鈍くなった。
人は何かを恨み続けて生きることはできない。それが人の、心を守るための本能なのだから。
春が来る頃には、姉が死んだのだとようやく理解し始めた。一周忌が近づくにつれ、仕方のなかった事なのだと。思い始めていた。
そして、憎しみから諦めにゆっくりと変わっていった心は、今、唐突に歓喜へと裏返った。
鈍く暗くなっていた心に、再び光が差し込んだ。
姉が、生きていた。
何故自分のところに姿を表さなかったのかは分からない。
なぜ、このコンビニに人除けの催眠を施していたのかは解らない。
しかし、そんな事はどうでもよかった。
姉が生きていた。強くて、優しくて、綺麗な姉が生きていた。
触れたい、姉に触れたい。あの優しかった姉に触れたい。
昔みたいに抱きしめて欲しい。あの暖かな手で触れて欲しい。
そう思って駆けた。姉の胸に飛び込んで、抱きついてもう二度と離さないつもりだった。
もみじの姉、万十カエデが振り向くまでは。
目が滲んでいたせいだろう。
もみじはカエデのすぐ側まで来て、ようやく姉が何者であるかに気が付いた。
もみじの足がビクリと止まった。
-誰だこれは?-そう思った。
「姉さんって事は、もみじ先輩とお客さんって姉妹だったんですか? 道理で似ているわけですよ」
昨日、自分の教室に殴りこんできた一年生が笑いながら言った。
なぜ彼は笑っているのだろう。あの姉さんを見て、なぜ笑っていられるのだろう。
近くで見ても姉だということは辛うじてわかった。しかし、姉だとは思いたくなかった。
あんな醜い姿の姉を相手に、何故彼は笑っていられるのだろうか?
足を止めた自分を見て、姉は目を開いた。
黄色く曇った白目と、瞳孔の開ききった目で、自分を見た。
「あなたにだけは、会いたくなかったわ。もみじ」
姉であり、姉ではない何者かが、自分の名を呼ぶ
「怖い思いをさせちゃうから」
万十もみじは、崩れ落ちた。
▲
▼
「ごめんねもみじ。怖い思いをさせてごめんね。こんな体でごめんね」
タツマは、目の前の状況に完全に取り残されていた。
二人が姉妹だという言うことは解ったが、なぜもみじがあんなに怯えているのか理解できなかった。
なぜ、午後10時の淑女があんなに悲しそうな目をしているのか、タツマにはわからなかった。
「何かあったのですか?」そう聞いたタツマの方へ、午後10時の淑女がゆっくりと向きなおった。
長い息を吐いた。
何かを諦めるような。それとも決意したような、そんな風にタツマには見えた。
「これ、何に見える?」
彼女はそう言うと、自分が嵌めている白いレースの手袋を指差した。肘まで隠している長い手袋は、しなやかで細い彼女の手によく似合っている。
「手袋ですよね? 白いレースの」
「残念、ハズレよ。これ、実はただのゴム手袋なの。手術用のね、だって汚い手で商品に触るわけにもいけないでしょ?」
淑女がゴム手袋と言ったそれは、タツマにはやはり綺麗なレースの手袋にしか見えなかった。
「あの子には本当の姿がみえてるのよ。同じ夢魔だもの。夢魔の幻覚は夢魔には効かないの。笑えるでしょ? 私のこのワンピースなんて、本当はただの手術衣よ」
そう言ってライトグリーンのワンピースの肩紐を引っ張った。タツマにはやはり、大胆で綺麗なワンピースにしか見えなかった。
「仕方がなかったのよ。あそこにはこれ以外に着れるものなんてなかったし。手術って素っ裸でやるものだもの。私の私服があった部屋はグシャグシャになってたし」
午後10時の淑女は意味の分からぬ語りを続けた。赤い、綺麗な唇が、次々と形を変えていく。
「貴方が見てる私、嘘っぱちなのよ。こんな綺麗な服着てないし、髪なんて艶を無くしてぐちゃぐちゃだし、肌なんて青くて、血の気もなくて、唇なんて灰色で、…ところどころ腐っちゃってるし」
「何を、言ってるんですか…?」
「あっ、でも昔はこれでも美人だったのよ。これは本当。ラブレターもいっぱい貰ってたし、月間高校迷宮の表紙を飾ったことだってあるんだから」
タツマの目に映る彼女は、やはり綺麗だった。意味が、解らなかった。
「私、ちょっと特別製だから。夏の夜の僅かな時間だけなら、迷宮から抜けだす事ができたのよ。短い時間でも嬉しかったわ。長く暗い冬が終って、少しの間だけでも懐かしい世界に帰ってくる事ができたもの。夏の日差しを浴びれないのが、ちょっと残念だったけどね…」
「迷宮とか、抜け出すとか…、どういうことですか…」
「でもね、魔素が無い場所だとお腹が空いちゃうのよ。最初はね、好物だったビタミンエイトを自販機で買ってみたの。病院のレジから勝手にお金を拝借してね。それで気付いたのよ。自分の味覚がなくなってるって。知ってる? 味のない液体なんて水よりも不味いのよ」
「意味が…、わからないですよ」
「幸い私、夢魔だったから、人の妄想を食べる事ができるって気付いたの。立ち寄ってみたコンビニに、ちょっと面白そうな男の子がいたから、試しにからかって味見してみたの。それがもう本当に美味しくって、すっかり病み付きになっちゃったわ。こんな体になっちゃったけど、初めて喜びを感じたの」
こんな身体と言いながら、午後10時の淑女は手を広げた。タツマに余すところ無く見せる躰はやはり綺麗だった。
「平日は毎日そこに通ったわ。その内、ご飯を食べるのが目的なのか、その男の子に会いに行くのが目的なのか、わからなくなっちゃったけどね」
「それって…」
「私、夏が好きなのよ。もう二度と夏の日差しを浴びられない癖にね。でもね、その子の側にいれば夏に逢えた気になるの。私は今、夏の中にいるなって思えるの。だから幻覚で化粧して、精一杯オシャレして、死臭を香水で覆い隠して、騙しに騙して会いに行ってたのよ。こんな体の女が、おっかしいでしょ?」
あははっと明るく彼女は笑うが、タツマには笑いどころがわからなかた。
「その癖、今でも本当の姿を見せようとしない、見栄っ張りで浅ましい女なのよ。おまけにもう一度触れてほしいだなんてね、欲が深くて、嫌になっちゃうわ」
「意味が…、意味がわかりませんよ! どういうことなんですか!」
午後10時の淑女は息を吸い込むと、か細い、揺れる声で結論を告げた。
「私ね、死んでるのよ。本当は醜く汚いダンジョンのモンスターなの。騙しててごめんね、私の夏」
泣きそうな顔で言った午後10時の淑女の姿は、タツマにはやはり綺麗な女性にしか見えなかった。
タツマにかけていると主張する幻覚は、解かなかった。
醜く汚いという言葉が本当だとは思えなかった。
例えこれが幻覚でも、目に映る彼女こそが真実に思えた。
午後10時の淑女はタツマから目線を切ると、再びもみじの方へ向き直った。
「もみじ、こんなお姉ちゃんでごめんね。あなたに会うのが怖かったの。同じ夢魔で、幻覚も人避けの結界も効かないあなたに見つかるのが怖かったのよ。死んでるって、モンスターだって自覚するのが怖かったのよ」
もみじが-ひっ-と、体を縮めた。もみじには、午後10時の淑女がどんな姿で映っているのだろうか。タツマには解らなかったし、どうでもいいと思った。
「怖がらせてごめんね、こんなのがお姉ちゃんでごめんね。大切な妹をほっぽり出して男に会いに行くような、酷い姉なのよ、私」
もみじに恐る恐る伸ばされた手、妹の頭を撫でようとしたのだろうか。その手を見つめるもみじの瞳がビクッと怯えて、閉じられた。
午後10時の淑女の手も、止まった。
妹の拒絶に、目を伏せて、天を仰ぐと、だらりとその手を垂らした。
「もみじ、今日私に会った事は忘れなさい。私は死んでるの。もう一年も前にね。もう二度とあのダンジョンから出てこないから、お父さんやお母さんにも言わないでおいて。死んだ後にモンスターになっただなんて親不孝もいいとこだもの」
そして午後10時の淑女は、最後にもう一度、タツマの方を見る。
「ねえ、私の夏」
私の夏。彼女はタツマの名前を知らない。だから彼女は、自分の事をこう呼ぶ。
「ちょっと短いけれど、私の夏休みは終ったわ。もう二度とここには来ないから、あなたも私の事は忘れ…」
午後10時の淑女はそこで呼吸が出来なくなったように、声を止めた。パクパクと、口だけが、海に上がった魚のように動いた。
「忘れ…、わすれ、わすれ…、わ、すれ…」
その言葉を何度か繰り返すうちに午後10時の淑女の瞳からポロポロと雫が落ちた。泣きボクロを涙が次々と伝っていく。
目に映る彼女の綺麗な泣き顔が、その綺麗な雫が、幻だなどとは思えなかった。
「…やあねえ…、最低よ私。妹には平気で忘れてって言えた癖に…。この期に及んで忘れないで欲しいだなんて! 欲深いにも程が有るわよ! 死んでる癖に! モンスターの癖に! 浅ましい! この女! この体!」
ガスッ ガスッと、彼女は心臓の辺りを拳で打った。見たこともない激情だった。こんな顔もするのだと、タツマは思った。激情の淑女はそれでも綺麗だった。
強く叩きすぎたせいだろう、むせ返って、体をくの字に折った。咳き込んで、唾液が口元から糸を引いて、コンビニの床を汚した。
汚れた床を、彼女は慌てて手で拭った。何かを取り繕うように、両の手で必死に拭っていた。
その後、すっと体を起こした彼女は笑顔だった。両手を後出に回して、上目遣いでタツマを見る。
最後の笑顔は、今までで一番綺麗にみえた。
「さようならもみじ。さようなら、私の夏」
タツマの網膜に、もう二度と消えぬであろう残像を焼き付けたまま、午後10時の淑女は走り去った。自動ドアが開く間も待たず、体を横にして狭い隙間をくぐり抜けていった。
彼女の姿はあっという間に闇に溶けた。
もみじとタツマ、二人の叫びが、夜のコンビニに響いた。