クリスマス
クリスマス当日。
高校2年の山口鈴の家では、友人一同勢ぞろいしてのパーティーが開かれていた。
「それでは、皆さま、メリークリスマス!」
パパンとクラッカーの威勢のいい音が聞こえる。
家の1階にある大広間に、鈴の家族と井野嶽幌を除く友人一同が、勢ぞろいをしていた。
鈴のすぐ横の席には、恋人である永嶋山門が座っている。
そこへ、既に切り分けられたブッシュドノエルを持ちながら、幌と山口家専属料理人の片安平三が入ってきた。
片安が、上座に座っている鈴の父親へ皿を差し出しながら、料理の紹介を行う。
「今日はクリスマスということで、クリスマスケーキがデザートとなります。本日のデザートは、ブッシュ・ド・ノエルとなります。フランスで生まれたこのケーキですが、ノエルとはクリスマスのこと、ブッシュとは木もしくは丸太のことを指し、あわせて、クリスマスの薪という意味となります。なぜこのような形となっているのかについては諸説ございますが、キリストの誕生を祝し、夜通し暖炉で薪を燃やしたということが説の一つとして挙げられております。お客さま方の御口にもあいますかどうか……」
恐縮しながらも口上を述べ終わると、一斉に食べ始めた。
食べ終わると、幌が友人一同へ感想を聞きに行っていた。
「どうだった」
「ちょっと大きかったかな」
鈴が幌へという。
「味はあれぐらいでよかったよ。ココア味かな」
山門が幌に聞く。
「そうそう。ココア味。本当はリキュールとか少し入れるのもいいらしいんだけど、未成年ってことで、今回はやめたんだ。この作り方、全部、片安さんが教えてくれたんだよ」
そんな感じで、和気あいあいと、夜は更けていった。