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お食事などいかがでしょう

やべぇ。明日だ。

斉藤真奈と約束した、カラオケはやっと明日。


おごってやると言ったから来るのかもしれないけど、この際もうそれはどうでもいい。

おごるって言っても学生割引平日昼間のフリータイムだから大したことないけど・・・。


待ち合わせまで約束したんだから、その辺律儀な斎ちゃんが来ないってことはない。


時間はたっぷりあるし(何せフリータイムは19時までだ)


きっと俺の感じでは、斎ちゃんと2人だけで出かけた奴は男の中で俺一人だ。

只の元クラスメイトってだけじゃなくなれる・・・・はず。



・・・斎ちゃんが忘れなければ、だけど。


『1時に駅の北出口でいいんだよね?あたしそっち行った事無いから迎えに来てくれないと迷うよ?』


斎ちゃんからのメール。


勿論行きますよぉ。迷子になられて貴重な時間が減ったら困る。


『行かせて頂きますよ』


『つーかなんでそんなとこのボックスなのよ。学校のそばで良いじゃん』


『おごってやる特権です。こっちのほうが音がいいの』


待ち合わせは俺んちから近いほうの繁華街。


理由は・・・学校の奴らに出会いたくないから。

斎ちゃんの連れになんか見つかってみろ、「あたしも行く~」とかなりそうだし。

そしたら、絶対斎ちゃんは「一緒にいこ~」とか言うに決まってる。


それは絶対に避けなければならない。


斎ちゃんは全くわかってないけど、俺にとっちゃ明日は特別なんだ。

文化祭の打ち上げなんかとは違うのだ。


だから「おごってやる」特権において場所は俺が指定した。

正直音なんかこの際どうでも良いのだ。


「え~そしたらめんどくさいし行かなぁい」なんて言わないのが、斎ちゃんの良い所だ。


・・・それに。

なんかちっさい事かも知れないけど。


斎ちゃんが俺のためにこっちまで来てくれるってことが、ちょっと嬉しかったりとかして。

いや。来させたんだけどね。


ああ。俺って・・・。


俺ってこんなんだったっけ・・・。


『・・・まあ良いけど。んじゃ1時に駅ね』


『ところで昼飯はどうする?』


第二段階。俺は更なるレベルアップを試みる。

あわよくば、飯まで一緒にとか企んでみる。


・・・それなのに。


『家で早めに食べていくね!』


なんですかその『!』は。

決定事項なんですか?


『一緒に食おうよ~』


ささやかな反抗。


『バイト給料日前日。お金ないです』


・・・あ。俺が14日にしたからか。あちゃ。

それに、こっちまで来させるから電車代もかかるんだよな。


『マックでもどうでしょ。おごります』


しゃあない。ここは俺頑張ります。


『悪いから良いよ。家で食べてくって』


・・・悪いと思うならおごられてくれ。

しかし、このおごってくれるんだーラッキーじゃない所がまた斎ちゃんの良い所なんだよな。


何でも良いほうにとっちゃうのは俺だけ?


『じゃあ300円だけ出してくれたら後は任せて』


何とか無理やりな案を出してみる。

やっぱり悪いから辞めるとか(斎ちゃんなら言いそうだ)言わせないために。


『それでもなんか悪いなぁ。ほんとに良いの?』


・・・ほらね?これでも悪いとおもっちゃうんだよ、斎ちゃんって。

自分は電車代も出すのにね。


『良いの。ハイ決定ね』


だから俺が無理やり決定。

気の優しい斎ちゃんを誘い出すには少々強引じゃなきゃいけないって、俺最近気付いた。


よし。完璧。




14日1時。


駅の北口には10分前には着いた。

この駅にははじめて来るって言うから、待ち合わせは改札口。


ここならすれ違っちゃうことも無いでしょ。


もし早く来ても斎ちゃんならうろうろして他に行っちゃうって事は無いはず。


つーか。


ほんとに遊んでないんだな、斎ちゃん。

今までいくつかの打ち上げにも全く参加してないし。


斎ちゃん曰く「夜の打ち上げは参加しない」って言うからすっげーお嬢様なのかと思ってた。

だけど、うちの高校にお嬢様が来るわけないし。


お嬢様はアイスやカラオケおごるって言ってあんな笑顔で喜ばないし。


・・・ほんと不思議な子なんだよなぁ。


俺がつらつらと、そんなことを考えながら改札を眺めていると。

斎ちゃんが現れた。


オリーブグリーンのミリタリージャケットに少しダメージの入ったジーンズ姿の斎ちゃんが、改札を抜けて俺のほうに笑顔を向けた。


いつもは制服だけど、私服の斎ちゃんはいつもジーンズだ。

とは言っても私服オッケーの遠足でしか見たこと無いけど。


そして笑顔のまま俺の方へ歩いてくる。


・・・ん?


「良かったーはじめてくる所だから何気に心細かった。」


その発言はなんつーかすごく可愛いんですけども。えーと。


「・・・斎ちゃんなんか目線が高くね?」


えーと。認めたくは無いんですが。

若干俺よりも目線が高いような気がするんですがっ!


「え?」


斎ちゃんは俺もう一回見て、そして自分を見て、もう一回俺の目線を確かめた。



「ああ。ほんとだ~。このスニーカー厚底タイプだから、かな?」



・・・どうして今日に限ってそんな靴はいて来るんだよお。


「ああ。そうなんだ。」


俺の返事がどもり気味だったのは、ばれてないことを祈る。


「5センチくらいいつもより高いかもね」


そ、そうですか。わざわざ高くしてきたんですね。

・・・その上。


「永井って、何センチ?」


ああ。そこ聞いちゃうんですね・・・。


俺、泣いてもいいですか?


「・・・ひゃくろくじゅう・・・なな・・・はち?」


「ああ。そうなんだ」


斎ちゃん別になんとも思ってない風で。

さっきの笑顔そのままで。


「あたし164あるから、同じぐらいになっちゃったね~」


・・・斎ちゃあん。何のフォローにもなってませんよ。


なっちゃったね~ってそんな笑顔で、くそ。


「170センチだってことにしといて!」


・・・俺は半ばやけくそでそう言うと、駅の出口へと向かった。






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