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鈍感さんには苦労する

・・・時間がない。


俺はやっと焦りだす。


・・・時間がない。


あいつと同じクラスでいられるのは後数日しかない。

それを過ぎたら只の「元同じ高校だった」って繋がりしかない。


今までのように「ノート貸してーや」も使えないし、「お礼にハーゲンダッツおごるぞ」も使えない。



・・・使えないって。


俺は思わず笑った。


ほんとにあいつ鈍感すぎる。ああいうのを天然って言うのか?

素直つーのも程があるだろ。


だから。


ある意味勇気を振り絞って誘った。


前振りは3ヶ月前。あいつの公募推薦試験の時。


「斎ちゃん公募推薦受かったら、カラオケおごってやるよ。」


昼休み。

あくまでも今思いつきましたって感じで、俺は言った。


「マジで?」

「おう。だから明日試験がんばれよな。」

「もちろんさっ。」


斉ちゃん・・・斉藤真奈は俺にピースして見せた。


「っていうか、永井の方が頑張んなきゃだめじゃん。公募推薦かなりのチャレンジャーでしょ。」

「チャレンジャーって言うな。俺の実力しらねぇな?」

「知らない。あたしのノート当てにしてた人の実力なんて。」

「・・・失礼な奴だな。」


斉藤真奈は見ていた試験に出る英単語(通称出る単)を閉じると俺を見てふふっと笑った。


「自信があるってことね?」

「も、もちろん」


・・・思わずどもったのが本当のところを表してるような気がするが。


「じゃあ永井公募推薦落ちたら・・・。」

「な、なんだよ。」

「カラオケで君が代歌ってもらうからねっ♪」


君が代ぉぉぉぉぉ?


「え~~~~~~」

「だって自信あるんでしょ?約束ね?」

「ちょ、ちょっと待て」


・・・俺なんかすごく損してる約束じゃないですか?それ。


「楽しみにしてるねっ」


斉藤真奈にそういわれちゃ、返す言葉はありません。はい。

結局何でもいいんです。カラオケ行ければ、ね。



・・・結果は斉藤真奈の一人勝ちだった。

斉藤真奈は一発で進学先を決め、俺は卒業間近の今でもまだ合格は決めてない。


カラオケの話はあれっきりだ。


だからもう一回勇気を振り絞った。


『カラオケいつ行く~?』


こういう時メールは便利だ。どもらなくて済む。

返信は思いがけずすぐに返ってきた。


『永井入試終わったの?』


斉藤真奈のメールは他の女子とはなんか違う。

絵文字とか殆どないし、短い。


『結果待ちっす』

『じゃあいいか。バイト始めたからシフト見てからでいいかな?』


・・・俺の入試終わるの気遣ってくれたんだよな。

あ~なんか、ほんといい奴だわ、こいつ。


『14日か15日でよろしく』

『わかった~。日決まったらまた連絡するね』


・・・よし。頑張った、俺。



・・・それなのに。


次の日に来たメールで俺は落とされた。


『松谷とかなちゃんも誘ったんだけどさ~15日だったら良いって。15日で良い?』


メールあけて思わず目が点になっちゃった。


斎ちゃぁん。何で他のやつ誘ってるんだよ~。

その上松谷からも。


『斉藤からカラオケ誘われたけど・・・。お前斉藤と行きたかったんじゃねぇの?』


男の松谷が気付いてるのに、何であいつは気付かねぇんだよ・・・。


『そーだよ』

『だよなー。俺もいかないとは返せなかったけど。斉藤全くわかってねぇぞwがんばれw』


・・・がんばれってさぁ。俺結構頑張ってるよ?

ああ。もう。


いいよ。もう一回がんばってみるから。


『斎ちゃんは14日無理?俺15日だめになった。』


・・・せこい手だと笑ってください。

皆と行くんじゃ意味ないんだよ。


・・・はっきり言えばいいのかもしれないけど。

まだ同じクラスで顔を合わせるのに万が一にも玉砕するのは避けたい。


斉藤真奈の気持ちは読めない。

誰とでも仲良くなれちゃう奴だから。


そんな奴だから気になったんだからしょうがない。


・・・返信が来た。

『あたしは14日でも良いんだけど、松谷とかなちゃん14日無理だって』


松谷ぁ。気を利かせてくれて感謝。

このお礼は・・・きっとなんかするからな~。多分。


『じゃあ14日行こうぜ~』


この短いメール送るのにどれだけ勇気がいるか、わかってねぇんだろうなぁ。


『メンバー集まらないけど良いなら14日で良いよ~』


だ~か~ら~。

メンバー集まらなくって良いんだよっ。


『じゃあ14日な』

『ほいほい』


ああ。やっと決まったよ。


4月に同じクラスになって、気になってから半年以上。


・・・長い道のりだったぜ・・・。


14日まで後3日。まだまだ油断は出来ないけど・・・・・。



何せ相手は「天然・鈍感な斉藤真奈」だからね。















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