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第七話 増える仲間とミラの頭痛

「異世界では毎日がトラブルだ。いついかなる時も冷静に」


異世界経験者より


★★★★★★★★


第七話 増える仲間とミラの頭痛


誠は目の前に現れた美女に困惑していた。


「え、君は?」


誠は辺りを見回しながら女に尋ねる。女は少し不機嫌になった。


「何を言っている。私はララスだぞ」


「や、やっぱり……」


誠はがっくしきたようにつぶやくと、何かに気づいたのかララスから目を逸らす。


「ふ、服を着てくれ!」


 誠の要請にララスは怪訝な顔をした。


「それを言うなら主だって裸ではないか」


誠は自身の身体を見た。誠の身体にはわずかに”服だったもの”がへばり付いているだけだった。 誠の顔がどんどん赤くなっていく。


「ぎゃあああ~~!」


誠の魂の叫びが山に響いた。


★★★★★★★★


「誠……この子は誰や?」


ミラの店の前にぼろきれを着た誠とララスが立っていた。ミラは疑わしげな目でララスを見ている。


「これにはそれなりに深い訳があってね……」


誠はたどたどしい様子で説明をした。ミラは頭を押さえながらも誠の説明に聴き入る。


「誠はどんだけ規格外なんや……。はぁ、あかんちょっと頭痛い」


ミラは棚から瓶を取り出すと、中の液体を一気飲みする。

そして、風呂上がりのオッサンのようにプハーっと言うと疲れた顔で誠を見た。


「びっくりしたけどまあええで。家族が多いのは楽しいから」


ミラはそういうとさきほどから店の入口で突っ立っていたララスの前に立った。そして手をララスに向かって差し出す。


「私はミラ、よろしくな」


「ふん、私は主以外の人間になど興味はない」


ララスはそっけなくミラの手を払い除ける。ミラは頭から湯気を出して怒る。


「こらっ、なにするんや! これから一緒に住むことになるんやで。頼むから仲良くしてな」


「私は主には従うがそれ以外の人間と馴れ合うつもりはない」


「な、なんやてぇ~!」


ミラはララスのふてぶてし態度にいよいよ怒りに火がついた。拳を握りしめ、息を荒くする。


「ラ、ララス! ミラにそんなこと言ったらダメだろ!」


今にも爆発しそうなミラを見て、たまらず誠が二人の間に割って入った。二人はすごすごと離れる。


「仕方ない。主が言うなら付き合うとしよう」


 ララスはしぶしぶといった様子でミラに手を差し出す。ミラはやたらとニコニコしながらその手を握った。ただミラの目には赤々と炎が燃えている。


「よろしくな? 一応」


ミラはララスの目を表面的にはにこやかに見た。二人の視線が空中でぶつかり合う。見えない火花が飛び散る。


「そういえばミラ、ドラゴンの爪の粉は用意できたからあの魔法使いさんに届けないと」


誠は険悪な雰囲気をばらまいている二人を何とか引き離そうとした。ミラはそれを知ってか知らずか素直に誠の思惑通りに荷物を届けに出掛けることにする。


「せやな。なら粉を頂戴。ウチが届けて来るわ」


誠は小さな瓶をミラに手渡した。ミラはそれを手にすると店から飛び出していく。ミラが見えなくなったところで誠はララスに説教をした。


「ふぅ、ララス、もっとミラと仲良くしなきゃダメだぞ。何であんな横暴な態度を取るんだ。もっと優しくできないのか」


「私は古代竜だ。その私にとって主以外の人間などどうでもいい。私がお仕えするのは主だけ、優しくするのも主だけなんだ」


誠はララスの言葉にうれしいような恥ずかしいような感情を抱きながらも、これではダメだと気持ちを入れ替える。


「他の人間とも仲良くしてくれ。それができなければ街では生きていけないぞ」


「ううむ……。前向きに検討しよう」


ララスはそういってお茶を濁した。誠は少しずつ変えて行くしかないかと、ララスの意識改革を諦めてミラを待つことにする。

 しばらくして店にミラが帰ってきた。何か良いことでもあったのかホクホク顔だ。


「ただいま~。ドラゴンの爪の粉、凄い値段で買い取ってくれたで! あと、後日誠に直にお礼がしたいから店に来るそうや。楽しみにしときい」


よっぽど高値で売り付けたのか幸せそうな顔をするミラ。しかし、誠はその様子に微妙な恐怖を感じた。ちなみに魔法使いの女の子が財布が空になって泣きそうになったのはミラだけの秘密だ。


「さあて、今日はララスの歓迎会も兼ねてたくさん飲むで」


ミラは夕日が差し込む店の中の整頓をすると、早めに店じまいした。そして二階に上がって宴会の準備に取り掛かる。


「よし、今日は腕によりをかけるでぇ~」


 ミラがそう言って台所に篭る。しばらくすると良いにおいがしてきた。誠とララスもにおいにつられて台所に行き、ミラを手伝う。またしばらくすると、湯気とともたくさんの料理が出来上がった。


「いただきます!」


テーブルに並べられた料理を前に、誠は以前からの習慣に従って挨拶をした。それを聞いたミラが誠にワインをなみなみと注ぐ。さらにミラはララスのグラスの方にもたっぷりとワインを入れる。


「誠もララスもたくさん食べて飲んでや。今夜は祝いなんやから!」


ミラは上機嫌でワインを飲む。そしてその宴会は深夜まで続いた。

 こうしてまた仲間が増えたりしたが、誠は何とか一日を無事に過ごせたのだった……。



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