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第二話 この世界での目標

マニュアルの出番が……。これからは要所要所にでるように工夫します!

「異世界の仕事は商人と冒険者しかないのだろうか」


異世界トリッパー研究家の証言より


★★★★★★★★


誠とミラは森を抜けて街の前に来ていた。誠たちの目の前には巨大な門がそびえていた。さらにどっしりと重厚な造りの塀が街の周りをぐるりと取り囲んでいる。外敵に備えてだろう。塀の外からでも建物の屋根などが見える。かなり大きな街のようだ。


「どうや、立派やろ!ここがこの辺りで一番栄えてるアールやで!」


ミラが誠に向かって自慢げに言う。しかし誠はその間にもマニュアルに目を通していた。


「ふむふむ、なるほどなるほど……」


ミラの額に血管が浮き出た。さらに形の良い眉が吊り上がる。


「こらマコト! 無視するな! まったく……こんな美少女が話してるんやからしっかり聞きや」


ミラは呆れたように言うとため息をついた。誠は慌ててミラの方を見る。ミラはムスッとして頬を膨らませていた。その姿は自ら美少女というだけあって、褐色の肌に燃えるような赤髪が美しい。


「ごめん、これを見てたんだ」


誠は端末を指差した。ちなみに端末は一見しただけではメモ帳にしか見えない形をしている。


「私にもその本見せて!」


ミラは興味津々といった感じで誠の端末を見た。そのあとミラは誠の目をみつめる。誠はミラの純真な瞳からさりげなく目を逸らした。


「文字が違うから読めないよ」


「それでもいいからちょっとだけ!」


ミラは誠の端末に手を伸ばした。誠は端末を閉じて手を上に上げる。背の低いミラは端末にまったく手が届かない。そこでミラはピョンピョンと何度もジャンプする。それでも手は届かない。ミラは恨めしそうに誠を見た。だがすぐに、何か思いついたのか、からかうような口調で話し始めた。


「ははーん、さてはそれエロ本やな? だからウチには見せられないんや。マコトも男やし、しょうがないとは思う。けど昼間からはちょっとと思うで」


ミラはそう言って横目で誠を見た。ここで誠が否定したら、本当なのか確かめるといって端末を取り上げるつもりなのだ。まず間違いなく誠は否定して端末を見せるだろうとミラは踏んでいた。だが端末を見せられない誠は沈黙する。


「マコト、エッチやで!」


沈黙する誠にミラはからかうように言い放つ。そして軽やかに走って門をくぐっていった。誠もそのあとを追いかける。

門の向こうには活気のある町並みが広がっていた。狭い道をたくさんの人々が行き交っている。その道の両側に商店が連なっていた。

ミラはそんな大通りから一歩奥に入り、路地を歩く。そして『ミラ雑貨』と看板の掲げられた店の中に入って行った。誠も続いて店の中に入っていく。店の中はさまざまな物が小綺麗に並べられていた。ミラは雑貨屋を営んでいるようだ。


「ここがミラの店か」


誠はたくさんの商品が整然と並べられた店に感心したように言った。それを聞いたミラは大きく胸を張る。


「そう、ここがウチの店、ミラ雑貨や。結構立派やろ?」


そういうと、ミラはカウンターの中に背中の荷物を降ろした。そしてカウンターの中から手招きする。誠はミラの招きに従いカウンターの中に入った。


「この階段の上が家になってる。ついてきて。ただ足元には気をつけや」


ミラは階段をきしきし言わせながら昇る。誠は古びた階段に不安を感じながらも昇った。


「あちゃー! しばらくいなかったから埃が積もっとる!」


ミラは埃の積もった廊下を見て、やってしまったとばかりに叫ぶ。そして申し訳なさそうに誠を見た。


「いいよ、気にしてないから」


「ありがとな、ウチも家がこんな汚れとるとは思わんかったんや」


ミラは相当長い間家を空けていたようだ。遠くに仕入れにでも行っていたのだろう。

 元気になったミラは廊下の脇のドアをゆっくり開けた。これまた古いドアは立てつけが悪いのか、嫌な音を立てて開く。ドアの向こうの部屋の中にはテーブルと椅子が置かれていた。両方ともシンプルなデザインで木目が美しい。それらは小さめの窓から入る光を反射して、光っていた。


「さあ座って座って」


ミラは埃を手で払うと誠に椅子に座るように促した。


「どうもありがとう」


誠は素直に席に着く。するとミラが飲み物を運んできた。コーヒーに似た臭いが漂う。


「最近仕入れた飲み物や。コブって言うんだけど飲んでみ」


ミラもそういって席に着く。誠はコブをわずかずつゆっくりと飲んだ。マニュアルにこう書いてあったからである。


『異世界の飲み物、食べ物には気をつけましょう。地球人類には危険な物質が混じっている可能性があります。ですので少量ずつ、できるだけゆっくり食べましょう』


とりあえず誠はこの指示に従ったが、コブは臭いの通りコーヒーに近い味でおいしかった。


「さてと落ち着いたところで話しを聞いてもいいかな。さっきからマコトの格好とか気になってたんやけど……」


ミラは話を切り出した。誠はマニュアルを読んで考えておいた答えを返す。


「俺はここから遠い山奥の村の出身なんだけど、今年はひどい飢饉でね。だから街に出てきたんだ。それで、この服とかは俺の村では一般的な服なんだ」


誠が迫真の演技で悲しい顔をする。ミラは胡散臭そうな顔をしたが、誠があまりにも悲しそうに見せるのでだまされてしまった。


「そうやったんか……。ならウチの店で働かない? 恩もあるし、ちょうど人を雇いたいと思ってたところなんよ」


誠にとって願ってもない話だった。なので即答する。


「もちろん!」


誠の答えにミラは嬉しそうに笑い、別の部屋からワインのボトルのようなビンを持ってきた。そしてグラスも用意し、ワインらしき物を注ぐ。


「よーし、マコトも飲み! それじゃあミラ雑貨に乾杯! 二人で世界一の店にしような!」


誠とミラはグラスを打ち鳴らした。心地好い金属的な音がする。

 こうして誠とミラの日常が始まったのだった。



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