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第一話 異世界初の出会い

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「異世界で初めて起こること。それは美少女との出会いだろう」


異世界トリップ経験者の証言より


★★★★★★★★


第一話 異世界初の出会い


マニュアルを開いた誠はすがるような思いで読み始めた。マニュアルには次のように書かれていた。


『目次


 1、異世界でまずはじめにすべきこと 


 2、こういう時どうするか? Q&A


 3、異世界で役立つ現代知識集


 4、経験者は語る先輩トリッパー体験談』


いろいろ目次に書いてあったが、とりあえず誠は『1、異世界でまずはじめにすべきこと』を読むことにした。


『まずはじめに異世界では落ち着きが大切です。精神をできるだけ落ち着かせましょう。ただし、深呼吸は有毒ガスを吸う恐れがあるので厳禁!』


誠はそこまで読むと、地面の上に座り込んだ。そして何も考えずに頭を真っ白にする。森林浴の効果もあったのか、誠はすぐに落ち着くことができた。落ち着けたところで、誠はマニュアルの続きを読む。


『次に、周囲の状況確認です。足元に気をつけて散策してみましょう。周りに長い棒などがあれば、それを杖のように使うと良いです』


誠は周囲を見回した。そして目の前に落ちていた木の枝を拾う。その長さはちょうど誠の身長の半分ほどあった。それをマニュアル通り、杖の代わりにして一歩一歩慎重に辺りを散策する。


「すごく普通の森だ」


誠はしばらくしたところで思わず言った。時々派手な原色系のキノコとかあるが、地球の森とほとんど変わらない。

誠は異世界の森に安心したような、がっかりしたような複雑な気分になった。そしてなんだか気疲れしたので、岩に腰掛け休憩する。


「何だ、何か起きてるのか?」


誠が一息ついていると、遠くから悲鳴のような声が聞こえた。何事だろうかと誠は慌てて聞き耳を立てる。また悲鳴が聞こえた。誠から見て東の方角だ。誠は誰か襲われているかもしれないと思いった。そこで誠はその誰かを助けるべく、着ていた白衣のポケットに石をぎっしり詰め込んだ。そして悲鳴の聞こえた方に向かって走り出す。 少しの間、足場の悪い森の中を懸命に走ったところで、誠は森の中の木々が生えていない広場のような場所についた。その場所で、狼のような生物と少女が対峙していた。多分、少女が悲鳴をあげたのだろう。


「あれは狼なのか……。育ち過ぎだろ!」


誠は狼らしき生物を見て叫んだ。その生物は狼のような姿をしていたが、バスぐらいの大きさがあったのだ。


「兄ちゃん危ないで! 私のことはええから早く逃げや!」


大昔の中東風の服を着た少女がなんと関西弁らしき言語で話し掛けてきた。驚きのあまり誠は口をあんぐりと開く。


「兄ちゃん何しとるんや! 逃げんと食われてまうで!」


少女は動きが止まっている誠に向かって再度叫ぶ。少女の声で誠は正気に戻った。


「俺が逃げたら君が食われるんじゃないのか?」


少女は短剣のような武器を構えていたが、素人であることが同じく素人の誠でも見てとれた。


「兄ちゃんだけでも逃げるんや。私のことはもうしゃあない」


少女はきっぱりと言い切った。誠はその言葉に頭を抱える。実は、誠の身体能力は非常に高い。それは宇宙時代、様々な星で暮らすため人類全体に遺伝子改良が為された結果だ。

だから、あのでかい狼にも全く勝てないという訳ではない。かなり確率は低いが勝てるかもしれないのだ。

誠が戦うのか逃げるのか迷っている間にも、狼は少女を喰らわんと唸りを上げた。


「やっぱり見捨てるわけにはいかない! 助けるぞ!」


誠は戦う決意を固めた。石を手に取って、狼の鼻の辺りを狙い投げる。ヒュンと風を切る音がして石が狼の鼻に直撃した。狼の鼻に石がめり込み、おびただしい量の鼻血が噴き出す。


「キャイン! キャイン!」


痛みに耐えかねた狼は負け犬のような情けない吠え方をして、森の奥に逃げていった。


「兄ちゃんどんな身体の構造しとるんや! ありえんで!」


 少女は誠の非常識な力に呆れたように叫ぶ。しかしもっと驚いていたのは誠の方だった。


「俺だって驚いてる。この間の健康診断は全部正常だったのに!」


自らに突然超人的なパワーが湧いた誠は混乱し始める。そこへ少女が近づいてきた。少女は誠の身体を興味深そうに触り始める。


「筋肉は意外とないね……。魔力で強化しとるんかな?」


少女は誠の身体を触りながらぶつぶつとつぶやく。誠は少女の様子に驚いて飛びのいた。


「いきなり触るな! もっと人のことを考えてくれ」


誠はそういうと少女に少しきつい顔をした。少女は頬を膨らませた。


「ケチやなあ、少しぐらいええやないの」


「ケチじゃない、君だって俺にもし触られたとしたら嫌だろう?」


誠は説教するように言った。誠がそういうと、少女は身を小さくしてつぶやいた。


「もしかして触りたいんか? ダメやで、こんな森の中なんやから」


少女はそういうとイヤイヤと身をよじる。そんな少女の悪ふざけに誠はやれやれと思った。しかし、すぐに気を取り直すと少女に頼みごとをする。


「それはまあいいとして……。すまないが、俺も一緒に町まで連れて行ってくれないか?」


誠の頼みに少女は顔をほころばして笑った。


「もちろんええよ。ウチの方から頼もうかなって思ってたところや。ウチは商人やってるミラ、よろしくな!」


 誠はミラの好意に感謝しながら自己紹介をした。


「俺は黒崎誠、誠って呼んでくれ」


 ミラはぶつぶつと名前を覚えるためにクロサキマコトと何回も唱える。


「マコトやな、ちゃんと覚えたよ。そんなら行こうか。急がんと町に着く前に日が暮れるから」


ミラは傾いてきた太陽を指差した。そして早速出発しようとする。


「待ってくれないか、向こうに荷物があるんだ」


誠はかばんを置いた岩の方を指で示した。かばんの中には大切なマニュアルの入った端末もある。絶対に取りに戻らなけければならなかった。


「なら私はここで待ってるから、早う取って来て」


ミラはそういうと背中に背負っていたリュックのようなものを降ろした。誠はそれを見るとすぐに駆け出した。


「えらい早かったね。行こうか」


誠は尋常でない速さで行って帰ってきた。道に慣れたのもあるが、それ以上に謎パワーに目覚めたのが大きいだろう。

町についたらマニュアルをしっかり読まないとな、と誠は思った。そう思っている間にも誠とミラは町に向かって進んでいた。



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