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第7話:21:00、要市警察署にて

・称号《適合者》獲得。

 ・適合者:世界改変の影響により変異した存在。

 お前は融合したこの世界に適合した。戦え。そして生き残れ。

 :全能力+10、ポイント10000獲得。



 内勤中、世界がおかしくなったことを、直感で理解した。

 突如発生した、めまいにも似た一瞬の違和感。

 頭に響く、男とも女ともつかない謎の声。

 警官としての勘が、行動を訴えていた。

 しかし、状況を理解できているのは、署内ではおそらく自分一人。

 外回りでもないのに、申請なしに警棒や拳銃を身に着けようとしたなら、周囲の同僚たちに止められることだろう。

 だから、休憩と称して席を外し、自身と同じ道を選んだ娘にメールを送る。

 スマートフォンは未だに扱いづらいが、気が弱く子供好きで警官になどまったく向いていない娘に、危険だから身を隠せと、普段なら絶対にしない文面のメールを送る。

 愛する妻にも同様に、自宅近所の指定避難所に、速やかに移動して身を隠せと。


 突如上がった悲鳴に、外を見る。

 外国の冒険映画あたりに出てきそうな、歩く骨格標本が剣や斧を手にし、ずらり並んで列を成し、まるで軍隊のように進んできた。


 白昼堂々、お天道様の下で、ガイコツが列を成して迫ってくる。


 それが、現実のものだと、誰が信じられようか。


 だから、行動できずに固まってしまうのを、誰が責められようか。


 自分のロッカーから警棒一本取り出して、外に飛び出てガイコツどもに対峙する。


 止まれ! それ以上来るんじゃない。


 声を張り上げる。

 ガイコツどもは止まらない。

 同僚たちは動かない。

 誰一人、動けない。


 武器が届く距離まで近づいたガイコツどもは、機械のように一斉に武器を振り上げ、攻撃してくる。それを、警棒と身のこなしでやり過ごし、反撃する。


 同僚たちの息を呑む気配を背に感じ、平和ボケした連中にどう伝えれば動き出すのか、悩みながらガイコツどもを警棒と殴る蹴るで撃退していく。


 しかし、多勢に無勢。あっという間に取り囲まれて、全身貫かれ、斬り刻まれる。



 そこまでなって、ようやく、悲鳴。

 慌ただしく指示を出し動き出す気配。



 しかし、もう遅い。

 薄れゆく意識の中、ガイコツどもが署の入り口に殺到していくのを見て、残されたわずかな時間で祈る。



 せめて、妻と娘は無事でいてほしい、と。


 21:00


 クラスメイトの二人を自宅に送り届けて、すぐに西区に戻る。

 移動しながらチャットを調べていくと、主に西区の被害が多いことが分かる。

 パニックを起こした人のガセネタかもしれないが、敵が多いということは、得られるものも多いということだ。

 そこら中に乗り捨てられている事故車をアイテムボックスに収納しながら移動すれば、パトカーとそこに群がる獣が目に入る。



・毒ハイエナ レベル6 タイプ:獣

 :毒を持つ凶暴なハイエナ。

 肉食。鋭い牙、強靭な顎、唾液に含まれる毒が特徴の獣で、群れで狩りをする。皮膚からでも吸収される毒は、噛みつきさえすればいずれ敵を獲物にできる。

 ドロップ:ハイエナの尾、まだら模様の毛皮、毒の牙、毒液



 パトカーに群がる獣どもは、ちょうど食事中だったようで、こちらに気づくのが遅れた。

 そこが分水嶺となる。

 至近距離まで接近してから、外周を囲むように眷属たちを召喚、一斉に攻撃を開始する。

 50はいた獣どもも、あっという間に全滅。

 レベルが上がってきた眷属を投入したのもあるが、この程度ではもはや相手にならなくなっていた。

 数も、質もだ。


 ただ、手が足りていない。

 それも、圧倒的に。

 その点からいって、目の前の警官たちは非常に都合が良い。



 警官・屍鬼 レベル4 タイプ:人、不死

 :警察官の屍鬼。車の運転、拳銃の所持と使用、警棒による打撃ができる。



 余計な情報は見ないようにして、死霊操術で眷属にし、修繕で傷とパトカーを直し、リロードのスキルを与えて拳銃で戦えるようにした。


「パトカーで巡回して、バケモノどもを撃ち殺せ」


 簡単な命令を下せば、即座に行動を開始する。

 今はそこら中に放置車両があって移動もしづらいだろうが、いずれ放置車両や事故車はアイテムボックスに収納して道路を移動しやすくしたいと思っている。


「いけ」


 号令一つで、警官屍鬼たちはパトカーに乗り込み移動していった。


 眷属となった警官たちのパトカーを見送って、移動先を考える。

 自宅に残してきた二人は、頼んだことをさっそくやってくれているようで、いくつか情報が入ってきていた。

 市内の警察署が襲撃され壊滅したことや、立体駐車場がある大手デパートで防衛戦をしていることなど。

 街の地図を思い浮かべて、優先順位を組み立てていく。

 現在位置から一番近い場所は、要市警察署だ。

 だが、既に壊滅したというのなら……。


 …………道着姿の流鏑馬(やぶさめ)婦警が目に入る。

 胸当てで押さえている大きな胸に目がいかないように顔を見上げれば、屍鬼特有の青白い無表情で、パトカーが去った方向を見ていた。


「……デパートよりは、少し遠いか……」


 E-フォンを操作して、一華(いちか)さんと双葉(ふたば)さん、ガンマン屍鬼と眷属三人に仮面……というよりは、目の部分にスリットの入った(かぶと)を被せて、人相を隠す。

 ガンマン屍鬼のサイドカーに一人、車を運転できる屍鬼に事故車の軽自動車をスキルで修繕し、もう一人の眷属と共に乗せる。


「一華さんと双葉さんも車に乗って、そっちは大手デパートのバケモノ退治を。途中バケモノを見かけても、無視していい」


 車とサイドカーを見送って、流鏑馬婦警を見上げる。


「こっちは、警察署に行く。…………な、なんだよ?」


 流鏑馬婦警は、なぜか頭を優しく撫でて、頬に触れてくる。

 それは、年の離れた弟に接するような、慈愛が込められたような優しい撫でかただった。

 触れる手は、冷たい。けれど、視線を交わせば、無表情であるにも関わらず、微笑んでいるように見えた。


「……い、行くぞ」


 よく分からない気持ちが込み上げてきて、なぜか目を合わせることができなくなる。その、よく分からない気持ちを散らすように、流鏑馬婦警の手から離れて、走り出す。


 ……霊馬を操り並走する流鏑馬婦警のことを、なんか、見れない。


 なんだか微妙に緊張感が削がれる中、警察署へ移動する。

 そこにいたのは、大量のガイコツを相手に、たった一人で戦う警官の屍鬼。

 ボロボロでありながら、警棒一本でガイコツどもを蹴散らす姿を見て、駆け出す流鏑馬婦警に薙刀を渡しほかの眷属たちも召喚してから、スキル《死霊操術》でガイコツどものコントロールを試みる。


 差し出した手を払い除けられるような感覚。

 スキルの失敗と共に、コントロールしている存在が別にいることが分かった。


 操り人形の糸のような、霊的な繋がりがガイコツから伸びているのが分かる。その先には、ボロを纏った、…………人、ではなく、ガイコツだった。それも、背骨がヘビの尾のように伸びている、不気味なガイコツ。



・ガシャドクロ レベル32 タイプ:不死

 :戦場跡などに発生する、無念の死を遂げた無縁仏たちの怨念が集まった群体。

 生者に理不尽な死の苦しみを与え死者の世界に引きずり込むために動く。

 単体ではなく群体であり、多少倒したところで揺るがない。

 ドロップ:骨、頭蓋骨、呪骨、呪怨頭蓋、呪いの依代人形



 接近し、一振りでガイコツの頭蓋を斬り捨てる。

 しかし、頭蓋を縦に割られたガイコツは、その状態から反撃してくる。



・ガシャドクロ レベル32 タイプ:不死

 :戦場跡などに発生する、無念の死を遂げた無縁仏たちの怨念が集まった群体。

 生者に理不尽な死の苦しみを与え死者の世界に引きずり込むために動く。

 単体ではなく群体であり、多少倒したところで揺るがない。

 お前は群体の意味を理解していない。幾十、幾百、幾千の屍がそこにいるという意味だ。

 ドロップ:骨、頭蓋骨、呪骨、呪怨頭蓋、呪いの依代人形



 大きく後ろに飛びつつ、スキル《鑑定》で再度状態を確認すると、説明文が追加されていた。

 鑑定スキル先生助かります。


 …………つまり、


「殺しても死なないなら、死ぬまで殺す。十で死なないなら百殺す。それでダメなら千殺す」


 鉈と斧を、ゆらりと振り上げる。


「さて、何回殺せばお前は死ぬ?」


 ガイコツが、ビクリと体を揺らす。


「安心しろ。死ぬまで殺してやる。怨念も、無念も、バカらしいと思えるくらい、徹底的に殺してやるよ」


 有言実行。

 鉈と斧と蹴りとで、バラバラにして粉々にして、再生というか巻き戻したみたいに復元していくガイコツを、休むまもなくバラバラにして粉々にした。


 500を超えたあたりで、数えるのが面倒になってやめた。



・ガシャドクロ レベル19 タイプ:不死

 :戦場跡などに発生する、無念の死を遂げた無縁仏たちの怨念が集まった群体。

 生者に理不尽な死の苦しみを与え死者の世界に引きずり込むために動く。

 群体の総数が大幅に減り、弱体化している。

 討伐数:1373

 ドロップ:骨、頭蓋骨、呪骨、呪怨頭蓋、呪いの依代人形



 鑑定スキル先生ありがとうございます。

 一回倒すたびに骨とか10個以上手に入っていて、アイテムボックス内の骨の表示数が既に9999Eとかになっている。

 もう要らんと思ってみても、倒すたびに復元し復元するたびに倒してを繰り返せば、他のドロップアイテムも次々たまっていく。



・大勢の骸 レベル0 タイプ:不死

 :戦場跡などに発生する、無念の死を遂げた無縁仏たちの怨念が集まった群体。

 死生観を超越した理不尽なまでの暴力により、怨念ごと殺され尽くした大量の骸の、ほんの一欠片が残るのみ。

 総討伐数:2318

 総ドロップ数:骨9999E、頭蓋骨1874、呪骨9999E、呪怨頭蓋444、呪いの依代人形149



 鑑定スキル先生マジ有能だな。獲得したドロップ数まで表示してくれた。

 ……これ、中の人いるのか? 別の誰かが代わりに見てないか?

 まあ、いいか。どうでもいい。


 警察署の方を見てみれば、大量の砕けた骨が散乱していて、灰へと変わっていった。

 警棒を持った警官の屍鬼は、戦いが終わったことを理解してか、だらりと腕を下げていた。


「《死霊操術》」


 眷属たちが見守る中、警官屍鬼は、敬礼を一つ。そう命じたわけでもないのに。


 …………なんとなく、だが、意志のようなものが伝わってくる。


「誰かいるのか?」


 警官屍鬼は、はっきりと頷いた。


「案内しろ」


 警官屍鬼の案内で、警察署内を歩く。

 署内にいる警官屍鬼を死霊操術で眷属にしつつ、階段を上がって、進んで、死角になっている別の階段で下がって、正面は鉄格子。背面の、下りたばかりの階段の裏。

 そこをゆっくりノックする警官屍鬼。

 非常に分かりづらいが、引き戸になっていて、開けることができた。

 中は光届かない暗闇で、狭いし天井も低いが、身を寄せれば大人でも3人くらいは隠れることができそうだ。


「…………っ!」


 E-フォンの画面をライト代わりにして中を照らすと、女性が隠れていたようで、身動きしたわずかな音が聞こえる。


「いるなら出てこい。救助に来た」


「……救助?」


「嫌ならそこにいろ。こっちもヒマじゃない」


「で、でる」


 明かりのない警察署内。しかも、街灯の明かりすら届かない真っ暗な場所から這い出てきたのは、


「で、でたーーーっ!?」


 子どもみたいに騒がしい、小柄な大人の女性だった。




「…………ご、ごめんなさい。びっくりしちゃって」


「とにかく外に出るぞ」


 E-フォン画面の光に浮かび上がったおれの顔に驚いた女性警官が落ち着くまで待って、手を引いて移動する。

 外に出れば、街灯の明かりに照らされて、誰が先導したのか女性警官にも理解できたようだった。


「あ…………。お父さん…………」



乙骨(おっこつ) (ゆう) レベル0 タイプ:人

 新人ポンコツ警官。サイズはB。

 父に憧れて、警察官になれてしまった。なれたはいいが、想像と現実の違いに打ちのめされている。自身の才能と努力の方向性を盛大に間違えている。あだ名はポンコツ。

 好感度はE。(知らない他人)

 素質:光

 適性:料理人、保母さん、うたのお姉さん



 …………鑑定スキル先生、辛辣だな。



乙骨(おっこつ) (とおる)・屍鬼 レベル11 タイプ:人、不死

 :ベテラン警官。家族が何より大事。

 正義感が強く、勘もよく危険を察知する能力に長けている。

 世界改変後、警察署への魔物の襲撃をいち早く認識し警棒一本で抗い続けた。

 それは、自身の命が尽き屍鬼に成り果て警官仲間が皆命尽きてもなお続けられ、署内に隠れる娘を守りつつ、無縁仏の集合体ガシャドクロを警察署前で足止めし続けた。

 災厄が移動し悲劇が広がっていくのを、たった一人で食い止め続けた。

 その強き意志に、その気高き魂に、敬意を表する。



 …………鑑定スキル先生、大絶賛だな。

 やっぱ中の人いるだろ。どうでもいいが。


「……ああ……。先輩……」


「知り合いか」


「……はい……。仕事を教えてくれた先輩です……」


 隠れていたポンコツ女性警官は、流鏑馬婦警の後輩らしい。

 霊馬から下りた流鏑馬婦警は、ポンコツ警官の無事を喜ぶように抱き締めて、頭を撫でる。

 ……出来の悪い妹みたいに思っていたのだろうか?


 それから少し自己紹介をして、年齢に驚かれたり境遇に涙ぐまれたりしたが、今の状況を伝えると困惑していた。


「…………えっと、どうすればいいのかな?」


「まだやることはあるから、どこかに隠れているか、途中襲われる可能性があっても安全な場所まで行くかだ」


 状況についていけずオドオドしていたポンコツ女性警官が、おれの年齢を聞いた後急に年下の子どもと接するような態度になって面食らうが、選択肢を提示すれば少しの間だけ考えて、


「……安全な場所があるなら、そこに行きたいけれど……」


「どのみち、ここにいても食料がないからいずれは……、ちょうどいい、捕まえろ」


「ほえ?」


 話をしていると、ゴブリンが顔を出したので眷属たちに確保させる。


「殺せ」


「…………え、…………ええぇ…………」


 ポンコツ女性警官にE-フォンから取り出したドロップアイテムの槍を握らせる。


「……や、やだ……、あ、あ、あ、やあぁ……」


「変な声出すな」


 鑑定で見た適性どおり、戦闘とか苦手なんだろう。

 グズグズしているので後ろから抱き着いて槍を構えさせ、穂先をゴブリンの心臓に合わせて体ごと押し込む。

 貫かれたゴブリンは、血を吐き少しの間もがいていたが、すぐにドロップアイテムに変化した。


「…………ぐすっ」


「どうだ? レベルが上がっただろう?」


「ひゃっ? み、耳元でささやかないで…………」


 まったく意識していなかったが、泣きそうな声で気がついて体を離す。



乙骨(おっこつ) (ゆう) レベル1 タイプ:人

 新人ポンコツ警官。サイズはB。

 亡き父に守られ生き延びた胸も小ぶりな小心者。レベルアップを経ても、人間性はそう変わるものではない。

 あだ名はポンコツ。恋愛方面もポンコツ。

 好感度はB。(好意)

 素質:光

 適性:料理人、保母さん、うたのお姉さん、僧侶



 返事がなかったので、勝手に鑑定すると、ちゃんとレベルアップしていて、…………うん? 

 …………まあ、いいか。よく分からん。


「自宅まで」


 流鏑馬婦警に簡潔に告げると、ポンコツ女性警官を霊馬の後ろに乗せて出発していった。


 ひゃああぁぁ〜〜〜〜。と、情けない悲鳴が離れていくのを確認してから、次の行き先を考える。

 デパートに合流するか、別の情報を確認するか。


 東さんと西園さんから送られてきた情報を見て、行き先を決めた。


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お父さん……!!(ブワッ)
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