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第5話:19:00、要第一高校体育館防衛戦

 必死に体を動かし、声を張り上げる。


 次々と迫る異形のものどもに対し、モップを槍のように振るい、突きを繰り出す。

 敵を倒しては武器を奪い、使い潰して倒しては、また奪う。


 夏の暑さと、命のやり取りに、心身ともにすり減っていく。


 武器もろくになく、休む間もろくになく、最前線で戦い続けないと維持できない状態。


 勇敢なものや力自慢、体力自慢は、すでに異形のものどもと対峙し、数の暴力の犠牲となった。


 倒しても、倒しても、尽きない敵の数。



 妹が心配だ。

 努力家で、自己評価が低い、可愛い妹。

 よせばいいのに、周りに乗せられて生徒会長になってしまった妹。

 こんな状況でも、周りに担ぎ上げられ責任だけ押し付けられたりはしていないだろうか?

 妹は無事だろうか?

 天才肌で、わずかな努力であらゆるものを吸収し、多くのことができるにも関わらず、めんどくさがり屋な姉は?

 他の家族は? 使用人や門下生たちは?

 みんな無事だろうか?


 体育館に4カ所ある外からの入口に陣取り、敵の侵入を防ぐ布陣。

 素人ながら、みんな必死で守り続けていた。

 それでも犠牲は増すばかり。


 10秒持ちこたえてと、仲間を死地に送り込み、素早くE-フォンを操作して日本刀を出現させる。

 確かな威力を持つ、使い慣れた武器。

 そのおかげで、敵を倒す速度が一気に増し、圧を押し返せるほどになった。


 失ったままの体力も、積み重なる疲労も無視して、刀を振るう。

 明確な得意武器を手にしたことで、攻め寄せていたトカゲ兵士どもが一気に減った。

 そのせいもあってか、離れたところで陣取っていたマントつきのトカゲ兵士が号令をかける。

 号令に応じて集まるトカゲ兵士。他の入口を攻めていたトカゲ兵士も集まっているようで、気は抜けないが貴重な休憩時間になっているこのタイミングを逃すまいと、E-フォンを操作し体力薬と疲労回復薬を出して、一気に飲む。


 生きるか死ぬかの瀬戸際だ。恥も外聞もない。


 予想される一斉突撃を前に、活力がみなぎる。

 共に戦った仲間たちに声をかけて状況を知らせ、回復を促し、少しの休憩をかみしめる。


 やがて、すべてのトカゲ兵士が集まったのか、ヘビの鳴き声のような号令の後、隊を組み列を成して槍を前にし前進してくる。


 仲間たちに注意を促し、トカゲ兵士どもを迎え討つため気合いを入れ直せば、


 ………………えっ?


 背中に衝撃。

 視界がブレて、数瞬後、トカゲ兵士の槍に突き刺さり、激突。


 ……こふっ、…………な、なんで…………。


 数瞬意識を失い、突き飛ばされたと気がついた時には、視界は粗末な槍を振り上げるトカゲ兵士だけ。

 槍が振り下ろされる前に、1つ2つ斬り捨てるが、10を超える槍が一斉に振り下ろされ、全身に突き刺さる。

 急所も貫かれ、致命傷となる傷が複数。

 それでも即死しなかったのは、幸か不幸か。



 姉さん、三樹(みき)、ごめん。

 私、ここまでだ。



 一匹でも多く道連れにと刀を振ろうとしても、両腕に槍が数本ずつ突き立てられ、身動きできなくなってしまう。

 また、一斉に槍が突き立てられる。

 それでも、死ねない。死なない。


 なら、1秒でも長く、生きてやろうか。


 簡単には、死んでやらないから。


 トカゲども、人間舐めるな。


 19:00


 夏の高い日差しも傾き、沈みかける頃。

 誰そ彼。人の顔も判別つかなくなる、黄昏時。

 幾千のバケモノを屠って、ようやくたどり着いた要第一高校。

 そこもまた、バケモノどもに襲撃されていた。


 槍斧の石突を地面に突き立てて悠然と立ち、鎧とマントを身に纏う二足歩行のトカゲ。その両脇には、ローブ姿で杖を持つトカゲが(はべ)っていた。



・リザードマンジェネラル レベル27 タイプ:亜人、爬虫類、戦士

 :二足歩行のトカゲ型亜人。

 肉食。虫や魚を好む。堅牢な外皮と高い知能を持ち、力と速さに優れる。長い尾は切れても再生し武器にもなる。

 幾多の戦闘を勝ち抜き将にまで登りつめた優秀な上位個体。

 ドロップ:トカゲの尾、トカゲの堅皮、トカゲの上質肉、所持武器防具、リザードプロテクター、リザードアーマー、リザードランサー、将の証



・リザードマンウィザード レベル18 タイプ:亜人、爬虫類、術士

 :二足歩行のトカゲ型亜人。

 肉食。虫や魚を好む。堅牢な外皮と高い知能を持ち、力と速さに優れる。長い尾は切れても再生し武器にもなる。

 魔法の才を持つ上位個体。術師であっても接近戦は得意。

 ドロップ:トカゲの尾、トカゲの皮、トカゲの上質肉、所持武器防具、雨除けマント、トカゲ革のローブ



・リザードマンネクロマンサー レベル21 タイプ:亜人、爬虫類、術士

 :二足歩行のトカゲ型亜人。

 肉食。虫や魚を好む。堅牢な外皮と高い知能を持ち、力と速さに優れる。長い尾は切れても再生し武器にもなる。

 特殊な魔法の才を持つ優れた上位個体。

 ドロップ:トカゲの尾、トカゲの堅皮、トカゲの上質肉、所持武器防具、雨除けマント、水トカゲの法衣、血塗れの骨杖、鎮魂の鈴



 その、視線の先には……。



「クソが。死ね」


 最速でトカゲの将に接近し、鉈を振り下ろす。

 奇襲で仕留めたと思ったが、すさまじい反応速度で振り向き槍斧で受け止められる。

 驚愕に見開かれるトカゲの目。その意味を知ろうとはせず、左手の手斧で上下に分割した。

 空中で体をひねり、隣のローブ姿のトカゲに鉈を振り下ろし左右に両断。逆隣のローブトカゲには手斧を投げつけ頭をかち割った。


 リーダーらしきトカゲどもを瞬殺しても、トカゲ兵士どもは一箇所に(たか)り輪になって、執拗に槍を地面に突き立てていた。




 …………いやな、よかんが、した。




「や、め、ろおおおっ!」


 眷属を置き去りにして、トカゲ兵士どもの輪に吶喊(とっかん)する。

 輪の外周はこちらに気づいたが、中心部は気づく様子もなく。

 眷属の力も借りず、瞬く間に多数のトカゲ兵士どもを鏖殺(ミナゴロシ)にした。

 銀光閃くたびに血が舞い命が散る殺戮の嵐。

 それが終わった後に残ったのは、人としてのカタチをかろうじて確認できる程度まで、徹底的に損壊された女性らしき遺体だった。


 血の池と化したそこに浮かぶ、長い黒髪。


 違っていてほしい。



 イヤなヨカンを 振り払う ように、スキル を 行使、した。



御剣(みつるぎ)双葉(ふたば)の遺体

 :徹底的に破壊された状態。ここまでされては屍鬼として復活することもない。

 お前はまた間に合わなかった。

 お前は幾百幾千の知らない他人を救ったが、大切な人は救えなかった。



「…………あぁ…………ァァァ…………アアアアーーーーッ!!」



 衝動的に叫び、スキルを連続で行使する。

 修繕で損壊された体と服を直し、死霊操術で眷属にする。

 修繕スキルは優秀で、立ち上がった双葉先輩には傷一つ残っていない。


 しかし、開かれた目は焦点が定まっておらず、ガラス玉のように無機質に見えた。




 …………また、間に合わなかった…………。


 後悔するくらいなら、見捨てればよかったんだ。

 顔も名前も知らない、医師とか、看護師とか、病人とか、けが人とか、小学生とか、教師とか、襲われてる通行人とか、買い物客とか、全部全部見捨てて、真っ先に駆けつければよかったんだ。


 優先順位を間違ったんだ。だから、取りこぼす。だから、恩人を死なせてしまう。




 …………◯◯、だったのに…………。


 ……あなたがいたから、生きてこれたのに……。


 ……どうしておれは、恩人を見捨てて、どうでもいい相手を助けてきたのだろう……。


 ……なんのために、こんなことを……。


 バケモノどもを、殺して、ころして、コロして、チにまみレてきタのハ……なんノ……タメ…………。



「……あぁ……ァアアッ! アアーーーッ!!」



 後悔と無力感に、立っていることもできなくなって、膝をつき、両手を地面に叩きつける。


 そんなことをしても、時間は元に戻らないし、死んだ人は生き返らない。

 分かっていても、止められるものではなく。



 …………ナニかが、音を立てて崩れていく感覚がした…………。



「…………あぁ…………ぁぁ…………」


 もはや、意味ある言葉すら吐けず、ただ呻く。


 涙すら流れず、ただ、体の何処かが、空っぽになっていく感覚。



 喪失感。虚無感。



 敵がいれば、怒りに任せ殺意をぶつけて心を晴らすこともできたかもしれない。

 けれど、もう全部コロしてしまった。

 ぶつける先のない激情が、オーバーフローして、壊れた。


 呻き声すら、途切れた。






「…………平坂、くん…………?」


 誰かの声に、ビクッと震えた。

 声の主は、(あずま)(まい)

 元担任の佐藤鈴先生に頼まれて、授業のノートの写しとプリントを毎日届けてくれていた、押しに弱く責任感が強い女子。

 1日しか登校していないおれは、クラスメイトだということすら、説明されるまで知らずにいた。

 要第一高校と、おれを繋いでいてくれた、恩人の一人。


「…………東さん、無事だったんだ…………」


 まだ、恩人が生きている。

 立ち上がるには、十分な理由になった。


 ふらつきながら、立ち上がる。

 一華(いちか)さん……眷属の屍鬼……に、抱きとめられるが、一呼吸で持ち直し、体育館の入り口に移動する。


「……あ、足」


「あ、うん。ちょっとね」


 日没直後の薄暗い中、入口脇に寄りかかる東さんは、立っているのもつらそうだ。


「回復薬。E-フォンの使い方は?」


「ごめん。ありがとう。助かるよ。使い方は知ってるけど、使う暇がなかったんだよね。あのトカゲ兵士、倒してもドロップに変わる前にアンデッドになって奥にいたリーダーのところにリポップする感じで、ずっと攻めてきてたから……」


 回復薬の残りを飲ませて、体力薬と疲労回復薬も飲ませる。

 そばで不安そうにしている女子もいるが、声もかけてこないし無視した。


「東さん、ここを出よう。安全な場所を用意するから、そこにいて」


「おい、お前。安全な場所だと? どこにあるんだ? 連れてけよ」


「……は? 嫌だけど。誰あんた」


 顔も名前も知らない男子が、急に近寄って来て連れて行けと要求してくる。

 なにこいつ意味分からないんだけど。


「こっちの人、俺の両親が殺されてその翌日学校に退学届出した後、授業のノートの写しとプリントを毎日届けてくれた人。この人と、佐藤鈴先生と、御剣双葉先輩がいたから、自暴自棄にならずに今まで生きてこれたんだ。おれの恩人なんだ」


 男子に目を合わせて理由を述べると、呻いて目をそらしていた。


「……で、あんたはどこの誰? おれに何してくれた人? どんな理由があって、おれが助けなきゃいけない人?」


 質問を重ねると、男子は目をそらしたまま離れた。

 その後、別の男子が声をかけてきた。


「きみ、回復薬を分けてくれ。今E-フォンから取り出したのだから、あるんだろ?」


「は?」


「聞こえなかったかい? 回復薬を分けてくれ。僕は2年A組の根取(ねとり)八郎(やつろう)だよ。そこの一年の娘の元クラスメイトなら、僕はきみの先輩だな」


「あ?」


「理由も必要なんだね。それは、きみが強いからさ。強者は弱者を守る義務があるだろう。政治家が権力を持つように、警察が拳銃の所持と発砲を許されているように、力ある者には権利と義務がある。だからきみには他者を助ける義務があるからだ。回復薬を持っているんだろう? けが人がいるんだ。早く出しなよ」


「???」


 なにこいつ。気持ち悪いんだけど。

 言ってることが何一つ理解できない。

 なに? 要するに、お前は後輩で自分は先輩だから回復薬をよこせって?


「…………E-フォンを知っているなら、自分で出せばいいだろ。なんで後輩と分かった上でタカってくるんだよ」


「けが人がいるんだよ! 槍で突かれて重傷なんだ! 今すぐ回復薬が必要なんだよ!」


 一見優男風の気色悪い男子が指差す先には、腹を血で真っ赤に染めた女子が。


 ……血の跡を見るに、けが人がいると見せるためだけに、引きずってきたのか。



 …………なんだこいつ。気持ち悪いな。



「きみが回復薬をくれないと、彼女が死んでしまう! 彼女は幼馴染みなんだ! 僕の大事な人なんだよ!」


「そうか。それはよかったな。もう死ぬぞ」


 大事な、というのなら、今すぐ自分で回復薬を出して飲ませてやればいいのに。


 他人に頼むのなら、せめて頭下げろよ。

 誠意を見せずに権利を主張し要求だけして、それが通るとでも思っているのか?


 そして、こんなくだらない問答をしているうちに、その女子は膝をつきうつむいて腹の傷を押さえたまま、動きを止めた。



折原(おりはら) 沙弥(さや)の遺体

 :失血性ショック死。即座に適切な治療を施し蘇生を試みたならば、息を吹き返す可能性はある。



・折原沙弥・屍鬼 レベル3 タイプ:人、不死

 :自称幼馴染みの所業によりため続けた恨みつらみは、生者としての精神力で抑えつけられていたが、枷を失い、呪いとなって異常な速度で屍鬼に成った。

 この恨み晴らさでおくべきか。



 一瞬のことだった。

 自称先輩とやらが喚き散らしている横で、静かに息を引き取った女子が、一瞬で屍鬼に成り、男子の首に噛みつき、食いちぎった。



 屍鬼は、理由は分からないが、人を食う習性があるようだ。

 もっとも、それは、噛みつくという動物的・原始的な攻撃方法の末に、ただ口に入ったものを生物の本能として咀嚼しているだけなのかもしれないが。


 この目の前の女子も、屍鬼に転じて、即座に攻撃した。

 人であることをやめたことで、人としての倫理観も捨て、殺したい奴(自称幼馴染み)を、殺した。

 ただそれだけだったのかもしれない。


 食いちぎった肉を()むことなく、吐き捨て、血で汚れた口元を雑に拭った。


 首を食いちぎられた男子は、驚愕に目を見開いたまま、体育館の床に倒れ伏す。

 その頭を、踏みつける屍鬼。

 何度も、何度も、凄まじい音を立てて、虫を踏み潰すように、踏み続ける女子。


 そんな、異様な光景を、誰も止めようとしない。



「まあ、そうなるよね。御剣先輩をトカゲ兵士に向かって突き飛ばしたの、そいつだし」



 離れた場所で、吐き捨てるように、知らない女子が言い放った。



 …………あ?



「御剣先輩のこと、男子なら、みんな憧れるよね? 女子もそう。人格者な上に、あれだけ自分から率先して行動して、憧れないやつなんかいないでしょ。でもそいつ、トカゲ兵士が集まってるところに、御剣先輩突き飛ばしやがったのよ」



 …………なん…………だと…………



「ザマァ見ろだわ! 一人だけほとんど休みもせずに戦い続けた人に、なんでそんなことできるんだか! その女子のことだって、モラハラして自分の都合がいいようにコントロールしてきてたって有名だったしさあ! 誰も言わないからあたしが言うけど! そいつ、他の人を何人も、盾代わりにしてしてたのよ!」


「やめて。もういいから」


「いいわけないでしょ! そんなヤツ!」


「もういいでしょう、折原さん。そこの人でなしはもう、原型とどめてないから。これ以上する必要はないわ」


 外道が生き延びるために盾にされ屍鬼となった女子と、命の危険を前に不満と不安を募らせていった女子と、怨敵の頭が肉片になっても踏み潰そうとする女子を抱き止める教師。


 佐藤先生に抱き止められた折原先輩は、糸が切れたように力が抜けていた。


「佐藤先生、彼女はおれが引き受けます。目を覚ましたとき、ほかの人を無差別に襲ったりしたら大変だから」



・折原沙弥・屍鬼 レベル5 タイプ:人、不死

 :自称幼馴染みの所業により、ため続けた恨みつらみが呪いに転じ異常な速度で屍鬼に成った。現在は落ち着いているが、再び動き出せば、望まずとも周囲に呪いを振りまいてしまう危険な存在。

 恨みは晴れても心は晴れない。

 誰かが縛り付けてくれないと、この呪いは罪なき誰かを害してしまう。



 鑑定スキルで見えたのは、乞い願うかのような説明文。

 死霊操術で眷属にした後、アイテムボックスに収納すると、ありがとう、と誰かの声が聞こえた気がした。


 …………と、これで終わればいいのだが。



・腐れ外道の成れの果て タイプ:煽動者・異常者・外道・怪異

 :幼馴染みの人格を否定し自我を抑圧し精神的に踏み躙り続けてきた業の報いを受けた。

 因果は巡り報いをもたらした。

 当然の結果である。

 人の道を外れたこれは、もはや屍鬼にすらなれない。

 なるとすれば、より禍々しい別のなにかである。



 鑑定スキル先生が、荒ぶっておられる。

 タイプが人ですらない。

 とはいえ、コレ、このままにはできないだろうと、アイテムボックスに収納する。


 …………お気に入りのリュックに、汚物を詰め込む気分になった…………。


「佐藤先生、行きましょう」


「私は行けないわ。教師だもの。生徒を見捨てて行けない」


 おれの誘いを、申し訳なさそうに断る佐藤先生。

 職に殉じる姿勢は素晴らしいが、本当は無理やりにでも連れていきたい。


「分かりました。じゃあ、また来ます。その時は無理やりにでも連れていきますから」


「ええ。気をつけてね」


 別れの挨拶を済ませて、背を向けて、


「…………これ。それと、E-フォンの連絡先登録しておきましょう。なにかあったら、呼んでください。すぐ来ますんで」


 回復薬、解毒薬、体力薬、疲労回復薬の4種を大量購入して置いておく。

 連絡先登録して、メールにショップで購入したスキル《ヒール》、《鑑定》、《洗浄》を添付して送る。


「東さん、行こう」


「…………う、うん」


 後ろ髪引かれているような東さんの手を引き、視線の先を見る。

 さっき、東さんに寄り添っていた女子。


 …………視線を交わす二人を見て、少し、考える。


「連れてく」


 名前も知らない女子の手をつかみ、強めに引く。


「えっと、どうして? あたし、別にきみになにもしてあげてないよ?」


「男が女連れて行くのに、理由とか必要?」


 不思議そうにする女子に首を傾げて答えれば、


「ん、よ、よろしくね。やれることなら、なんでもするから」


 上ずった返事をしてくる彼女。


 体育館の外に出れば、防具を身にまとい槍を持つ一華さんと、セーラー服姿で刀を持つ双葉さん。


 他を見捨てて優先すれば、救えた二人。

 けれど、救えなかった二人。


 流鏑馬(やぶさめ)眷属の霊馬に東さんを乗せ、ガンマン眷属のサイドカーに女子を乗せる。


「いくぞ」


 声をかけて、北へと走り去った。


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― 新着の感想 ―
鑑定スキル先生にも感情があるんですね( ˘ω˘ )
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