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「やれやれ・・・」
毎日の帰宅は遅い時間になることが多い。
てっぺんを越すことはないけど、早くて19時、遅くて21時くらいになる。
営業は大体そんなもの・・・っていうことでもない。定時で上がれるヤツは上がれるし、俺と同じように残って仕事を片付けるヤツもいる。
俺の部署だと、体感で半々くらいか?
いや、そんなことはどうでもいい。
家にいる時くらい、仕事のことは忘れたい。
ちょっと何かつまんで寝るとしますか。
「えーと」
確か冷蔵庫に冷えた酒とベーコンか何かがあったはず。
雑貨屋でバタピーも買ったよな。
栄養バランスとか知るか。
俺は今一人暮らし。
そんな遅い時間から料理なんてできるわけないだろ・・・
とりあえず、すぐつまめる何かがあって、ある程度カロリーを得られれば何でもいいんだ。
「うし」
皿に燻製ベーコンとバタピーを盛りつけて、グラスにハイボールを注いで完成。
お一人様おつまみセット・・・って言ったところか。
「こういうのでいいんだよ」
とにかく、のどを潤したい。
ハイボールを口にしようとした瞬間・・・
ブーッ、ブーッ!
ソファに投げていたスマホが振動した・・・
「何だこんな時に・・・」
また会社か?
まだ残ってるヤツがいるのか?
それともあのクソッタレ上司か?
グラスを置いてスマホを持つ。
「・・・はぁ」
今度はこっちかぁ・・・
*
「ブレンドコーヒーを」
「かしこまりました」
駅前のカフェにやって来た。
21時でも開いているカフェは珍しい。だからここを選んでいるわけだが・・・
「遅い!」
適当に注文して、
「悪い悪い」
呼び出しを掛けてきた相手がいる席に座る。
「呼び出したのはあたしだけど、もうちょっと早く来れない?」
呼び出してきたのは俺の彼女だ。
「だから悪いって」
付き合って一年くらいか。
別の会社に勤めていて、企業間交流会が開かれた際に知り合った。
「言い方悪いよ」
「・・・ごめんごめん」
よく言葉遣いを注意される。なんか冷たい感じがするからだそうだ。
言われてみりゃあそうかと思って謝っているものの、
「で、こんな時間に何の用?」
「言い方」
最初の頃はこんなんじゃなかった気がするんだけどなぁ、と思う自分もいる。
「・・・どうした?」
言い方が悪い自覚もあるけど、こんな風に注意してくることもなかったはず・・・
「うん、別れようと思って」
「・・・ほお」
急に来たな。
いや、こういうのは大概急か。
前置きなんかそうそうしてくれるもんじゃないか。
いや、それにしてもだぞ?
「えらく急じゃないか?」
一応、理由の一つや二つくらい聞いておくか。
「最近ずっと思ってたんだよね」
「何を?」
「付き合い悪いし」
確かにここ最近、休日も資料を作っていたから、デートを断ることはあった。
そうしないと間に合わない案件があったからだ。
「冷たいし」
・・・そうか?
21時にもなって呼び出されて、可能な限り早く来る人間って冷たいのか?
そりゃあ、言葉遣いは冷たいかもしれないけど。
「・・・それだけか?」
「まあ、もっとあるけど」
あるんかい。
「じゃ、あたしもう行くから」
「ちょっと待て」
席を立とうとする彼女を引き留め、
「なに?引き留めても無駄だからね」
「別に引き留めはしないけど」
「だったら何?」
「自分のコーヒー代くらい置いて行け」
「・・・器ちっちゃ」
バッグから財布を出して、五百円をテーブルに叩きつけた。
「サヨナラ」
喫茶店から出て行く彼女。
「・・・はぁ」
俺は全く見向きもせず、
「だるい・・・」
ただただ、そんな風にしか思えなかった。




