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魔王と行く異世界道中  作者: ちとせ


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25/27

2

「改めて自己紹介しておきましょう。わたくしはマチルダ・ハイデルベルク。魔族の長よ」


 魔王の名前はさっき聞いたけど、魔族っていう種族は初めて聞いたな・・・


「小芝 彰吾です」


 魔族がどういう存在なのかは分からない。

 とりあえず、今はこの流れに乗っておくか。


「コシ、バ ショウ、ゴ?ショウゴが名前かしら?」

「よくお分かりで」

「なら、ショウゴと呼ぶわ。あなたもわたくしのことは名前で呼んでもらって結構よ」

「それは・・・畏れ多い」


 見ず知らずの・・・っていうより、魔王相手に名前呼びは怖い。

 御者台にいる執事に斬られるんじゃないか・・・?

 一応、腰に剣を携えていたし、警戒しておくに越したことはないよなぁ・・・


「とりあえず、無事で良かったわ」

 魔王は長い脚を組んで、大きく息を吐く。

「無事かどうかは怪しいですけども」

 命はあるから無事と言えば無事なんだろうけど、ろくな飯も滞在環境もなく、寒さに耐える牢屋生活。無事なのかどうなのか考えたいところだ。

「五体満足でいるんだから、無事と見ていいでしょう」

「・・・まあ、そうですね」


 そりゃまあ、そうだよなぁ。

 謁見の間で吹っ飛ばされた兵士もそうだし、城の外で転がっていた連中もそうだけど、あそこまで痛めつけられたわけじゃない。

 五体満足なら無事って話は妥当だろう。

 個人的にはもう少しメンタルのほうも気に掛けてほしかったけど、それはもう贅沢か。


「ショウゴ。あなたが今置かれている状況は分かっているかしら?」

 本当に名前呼びか。

 ストロングメンタルなのか、それとも気遣い故か・・・たぶん、前者だろうけど。

「いや、特に。あそこが純粋種だか何だかの国で、勇者がどうこうって話があったくらいかな?」

 基本的に牢屋から出ることがあまりなかったから、謁見の間でのやり取りと、ボブの話くらいでしか情報が得られなかった。

「ふうん・・・なるほど」

 魔王はあご下に軽く手を当てて、

「なら、しっかりとこの世界のことを教える必要があるわね」

「そうしてもらえると助かりますけど」

「けど?」

 魔王の鋭い眼光が俺を捉える。

「いや、助けてもらっておいて・・・いや、そもそも助けられる理由が分からない・・・いや、それは一旦置いておこう。助けてもらっておいてなんですけど、ここまでしてもらう理由がないので」


 目の前にいるのは仮にも国王。

 そんな立場の人間に出会ったこともないし、この地に所縁もない。

 こっちに来てすぐに出会ったことは間違いないけど、それだけで国一つに仕掛けるのはリスクが大きすぎる。


 何かしら理由がなければ、こうはならない。


「理由、ね・・・そうね」

 魔王は少し間をおいて、

「単純な好奇心、かしら」


 本当に単純な理由だった・・・


「いくつかある中で、一番強いのがそれよ。他にもあるけど」

「は、はあ」

 好奇心は大切だよな。それは分かる。

 他にもあるならそれはそれでいいんだけど、仮にそれだとしても、他国に攻撃を仕掛けてまで助ける理由にはならないように思える。

「言いたいことは分かるつもりよ。ただ、あなたのような人物はこの世界にとっては脅威になり得る」

「きょ、脅威、ですか」


 脅威って、聞き間違えじゃなきゃ、恐れられるってほうでいいんだよなぁ・・・?


「あなたのような人物・・・異世界人は、わたくしたちにはない力を持っている可能性があるからね」

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