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魔王と行く異世界道中  作者: ちとせ


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23/27

15-3

「さあ、やりましょう」


 あっという間に広間が氷で埋め尽くされた・・・


 本物の城に行ったことがないから規模が分からないけど、学校の体育館一棟と同じくらいか、ちょっと狭いくらいのように見えるし、そこそこ広い場所であることは間違いない。

 それがほんの数十秒で氷の世界に変わってしまった。


 氷城の魔王とか言っていた気がするけど、これに関係があることは間違いなさそうだ。


 そして、とんでもなく寒い。


 氷ができるっていうことは、それだけ空気が冷えているってことだろう。

 この空間が冷凍庫みたいになっているなら当たり前の話だ。

 まあ、どういう原理でこの現象が成立しているのかが分からないから、何とも言えないところだけど、間違いなく言えることは寒いってことだ。

 ダウンが欲しい。いや、贅沢は言わないから毛布が欲しい。それも贅沢か?


「もっとも、戦える人員がいればの話ですけど」

 魔王は小さく笑いながら、

「ここに来るまでにいた兵士たちは倒しましたし、裏で控えている者たちもこちらには来られないでしょう」

 こういうことのために、裏で兵士が待機するスペースもあるだろうし、人員も構えているはず。

 だけど、分厚い氷が謁見の間を覆ってしまっているため、裏から飛び出して来られない。


 ここには俺たちしかいない。


「戦うなら容赦しませんわよ?立てなくなるまで叩き潰して差し上げますわ」

 まるで悪役のようなセリフだな・・・

「あなた・・・!」

「ぐっ、何たることだ・・・!!」

 寒さに凍える国王とその妃・・・そして俺。マジで寒い。

 武器も持っていないようだし、このビビり様からして自分自身は大した心得もないんだろう。

「何もしない・・・いえ、できないならそれで結構。わたくしは寛大故、見逃して差し上げますわ」

 寛大だっていうなら、兵士たちを倒さなくても良かったのでは・・・?

 いや、死んだと決まったわけじゃないけど。

 少なくとも、ここに飛び込んできた兵士は瀕死のはず・・・あいつ、結局どうなった???

「さあ」

 魔王が右手を振る。

 すると、一瞬で氷の剣が生成された。

 まるで、魔法使いが杖を召喚するみたいに、ほんの一瞬で。

 それを手に取って、

「自由にして差し上げます」

 俺を拘束していた手錠を、その氷の剣で斬った。

「つめたっっっ」

 剣先が接近したから分かる。やっぱり、氷は見せかけじゃない。

「わたくしと行きますか?それともここに残りますか?」


 突然の二択・・・


「どちらでもわたくしは構いませんわ。ここに残るのも良いでしょう。でも、残ればどういう目に遭うか、分かりますわよね?」


 まあ、勇者がどうこうの話の先は分からないけど、牢屋暮らしが近いのは目に見えてる。

 かびた固いパンも臭い水も要らないし、湿気の寒さで埋め尽くされた空間になんか帰りたくはない。


「ま・・・行きますか」

「賢明な判断ですわ」

 魔王が差し出す手を取り、ゆっくり立ち上がる。

「わたくしはマチルダ。マチルダ・ハイデルベルクですわ」

「小芝 彰吾、です」


 こうして、俺は魔王と深く関わっていくことになるわけだが、この先のことはまだ、誰も分からない。

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