15-2
「魔王め・・・何故ここに現れた!?」
国王が立ち上がる。
明らかにビビってるな、あれは。膝が笑っとる。
まあ、無理もない。
一応、マンガとかゲームとか、そういうところだと最強の存在なんだもんなぁ。
あの様子からして、こっちも大概みたいだけど・・・
だったら、そりゃあビビるよなぁ。
「何故?教えて差し上げましょうか」
魔王は俺の横に立った。
「彼を迎えるためですわ」
「・・・この小僧を、だと?」
「彼は魔族の来賓ですから」
来賓?俺がか?
しかも魔族の?
「嘘だ!小僧は我々が先に連れてきたのだ!貴様たちの関係者であるはずがない!」
まあ、確かに連れてきたのはこいつらだ。
魔王の来賓かって言われるとそうでもない。
ただ、無関係ってわけでもない・・・ってところが難しいところだ。
一応、こっちに来た直後に出会って、コーヒーを一杯おごったからなぁ。
これをどう取るのか・・・そこが問題になるかな。
「先に連れてきた・・・というのがそちらの主張であれば」
「何だと言うのだ?」
「わたくしが先に彼と出会いましたし、優先権はわたくしにありますわよね?」
そう、先に出会ったのは魔王だった。
そういう話をし始めると魔王が有利になるわけだけど・・・
「勇者選定を行ったのは我々だ!小僧の所有権は我々にある!」
「あのなぁ・・・」
所有権っておまっ・・・俺は物じゃないんだけど。
それは一旦置いておいて、勇者選定を行うとそこの陣営預かりになるのか?
そうなったら国王側の主張が強くなるわけだけど。
「そういった話をされるのであれば」
魔王が指を鳴らす。
「む!」
「おわっ」
魔王の使い魔が俺と魔王の間に現れた。
「そやつは・・・使い魔か?」
「わたくしの使い魔はずっと彼の傍にいましたわ。先ほどの先に連れてきた、という話が通るのであれば、わたくしのほうが早かったということで、彼を連れて行く権利はわたくしにありますわよね?」
単純な話、そういうことにはなる。
なるけども・・・
「その使い魔がずっと傍にいたと、証明できるのか?」
「たった今、姿を見せたわけだし、傍にいたとは限らないわよね」
「こいつ、ずっと傍にいたけどなぁ」
いつからかは定かじゃないにしても、牢屋に入った時にはいたわけだし、少なくとも今ここで傍につけたわけじゃない。
「貴様・・・魔王の味方をするのか!!」
「いや、別にそういうわけじゃないけど・・・」
「ということですから、貴方がたが先だったという話は嘘ということになりますわよね?」
魔王はふふっと含んだように笑って、
「わたくしはそちらの兵士と接触しています。わたしくは所用で一旦引きましたが、彼が単独でこちらに赴くとは思えません。その後、兵力を投入して連行したのでしょう?」
「ぐ、ぬ・・・!」
まるで近くで見ていたみたいに的確だな。
帰ったフリをして実は見てたんじゃないか?
俺は見てないから分からないけど、仮にそうだったとしたらやることやってるよなぁって感じだよな。
「まあ、そもそもの話、俺はどっちの側にもつかないけどなぁ」
俺は別に、誰の味方もしない。
ここで生活していくうちにどっちかに、もしくは別のどこかに身を寄せることはあるだろうけど、この世界のことをよく分かっていない今、どこがいいとか、どこだとこういう面で生活が楽だとか、そういうのは分からない。
そんな状態で判断はつかない。
だから、どっちがいいとか、今は判断しないし、できない。
ただまあ、少なくともこの国の味方をする気はない。
待遇も悪いし、立場的にそうなるのは仕方がないにしても、上から目線で命令口調ってのは良い気分になれない。
この国の・・・もっと言えば、この世界の人間じゃないから特に。
「そういう判断をしますのね。面白い」
何故か魔王は笑っている。
気に入ってる・・・のか?
「こう言っては何ですけれど」
魔王は長い髪を指先で遊ばせながら、
「元々、まともな話し合いができるとは思っていませんでしたし」
「なら、どうすると?」
「こうするしかありませんわね」
部屋が更に冷えてきた・・・?
おかしい。いくら広い空間であっても、冷える速度が速すぎる・・・!
「力づくでいかせていただきますわ」
髪をいじって遊んでいた指が髪から離れる。
「凍えなさい」
パキッ!パキパキパキッ!
「なんじゃこりゃ・・・!?」
魔王の足元に氷が発生した。
自分から広がるように、薄い氷が床を這っていく。
氷の厚みはどんどん厚くなっていく。
これはどういう現象だ・・・???
「これが魔王の魔法・・・!!」
「氷城の魔王め!!」
空間がどんどん冷える。
そして氷が広がっていく。
まるで、氷が世界を覆いつくすように。
これが魔王の力か・・・




