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魔王と行く異世界道中  作者: ちとせ


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22/27

15-2

「魔王め・・・何故ここに現れた!?」


 国王が立ち上がる。


 明らかにビビってるな、あれは。膝が笑っとる。

 まあ、無理もない。

 一応、マンガとかゲームとか、そういうところだと最強の存在なんだもんなぁ。

 あの様子からして、こっちも大概みたいだけど・・・


 だったら、そりゃあビビるよなぁ。


「何故?教えて差し上げましょうか」

 魔王は俺の横に立った。

「彼を迎えるためですわ」

「・・・この小僧を、だと?」

「彼は魔族の来賓ですから」


 来賓?俺がか?

 しかも魔族の?


「嘘だ!小僧は我々が先に連れてきたのだ!貴様たちの関係者であるはずがない!」


 まあ、確かに連れてきたのはこいつらだ。

 魔王の来賓かって言われるとそうでもない。


 ただ、無関係ってわけでもない・・・ってところが難しいところだ。

 一応、こっちに来た直後に出会って、コーヒーを一杯おごったからなぁ。


 これをどう取るのか・・・そこが問題になるかな。


「先に連れてきた・・・というのがそちらの主張であれば」

「何だと言うのだ?」

「わたくしが先に彼と出会いましたし、優先権はわたくしにありますわよね?」


 そう、先に出会ったのは魔王だった。

 そういう話をし始めると魔王が有利になるわけだけど・・・


「勇者選定を行ったのは我々だ!小僧の所有権は我々にある!」

「あのなぁ・・・」


 所有権っておまっ・・・俺は物じゃないんだけど。


 それは一旦置いておいて、勇者選定を行うとそこの陣営預かりになるのか?

 そうなったら国王側の主張が強くなるわけだけど。


「そういった話をされるのであれば」

 魔王が指を鳴らす。

「む!」

「おわっ」

 魔王の使い魔が俺と魔王の間に現れた。

「そやつは・・・使い魔か?」

「わたくしの使い魔はずっと彼の傍にいましたわ。先ほどの先に連れてきた、という話が通るのであれば、わたくしのほうが早かったということで、彼を連れて行く権利はわたくしにありますわよね?」


 単純な話、そういうことにはなる。

 なるけども・・・


「その使い魔がずっと傍にいたと、証明できるのか?」

「たった今、姿を見せたわけだし、傍にいたとは限らないわよね」

「こいつ、ずっと傍にいたけどなぁ」

 いつからかは定かじゃないにしても、牢屋に入った時にはいたわけだし、少なくとも今ここで傍につけたわけじゃない。

「貴様・・・魔王の味方をするのか!!」

「いや、別にそういうわけじゃないけど・・・」

「ということですから、貴方がたが先だったという話は嘘ということになりますわよね?」

 魔王はふふっと含んだように笑って、

「わたくしはそちらの兵士と接触しています。わたしくは所用で一旦引きましたが、彼が単独でこちらに赴くとは思えません。その後、兵力を投入して連行したのでしょう?」

「ぐ、ぬ・・・!」


 まるで近くで見ていたみたいに的確だな。

 帰ったフリをして実は見てたんじゃないか?


 俺は見てないから分からないけど、仮にそうだったとしたらやることやってるよなぁって感じだよな。


「まあ、そもそもの話、俺はどっちの側にもつかないけどなぁ」


 俺は別に、誰の味方もしない。

 ここで生活していくうちにどっちかに、もしくは別のどこかに身を寄せることはあるだろうけど、この世界のことをよく分かっていない今、どこがいいとか、どこだとこういう面で生活が楽だとか、そういうのは分からない。

 そんな状態で判断はつかない。


 だから、どっちがいいとか、今は判断しないし、できない。


 ただまあ、少なくともこの国の味方をする気はない。

 待遇も悪いし、立場的にそうなるのは仕方がないにしても、上から目線で命令口調ってのは良い気分になれない。

 この国の・・・もっと言えば、この世界の人間じゃないから特に。


「そういう判断をしますのね。面白い」


 何故か魔王は笑っている。

 気に入ってる・・・のか?


「こう言っては何ですけれど」

 魔王は長い髪を指先で遊ばせながら、

「元々、まともな話し合いができるとは思っていませんでしたし」

「なら、どうすると?」

「こうするしかありませんわね」


 部屋が更に冷えてきた・・・?


 おかしい。いくら広い空間であっても、冷える速度が速すぎる・・・!


「力づくでいかせていただきますわ」

 髪をいじって遊んでいた指が髪から離れる。 


「凍えなさい」


 パキッ!パキパキパキッ!


「なんじゃこりゃ・・・!?」


 魔王の足元に氷が発生した。

 自分から広がるように、薄い氷が床を這っていく。

 氷の厚みはどんどん厚くなっていく。


 これはどういう現象だ・・・???


「これが魔王の魔法・・・!!」

「氷城の魔王め!!」


 空間がどんどん冷える。

 そして氷が広がっていく。

 まるで、氷が世界を覆いつくすように。


 これが魔王の力か・・・

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