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魔王と行く異世界道中  作者: ちとせ


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21/27

15-1

「本日は貴様の勇者選別を執り行う」


 昼になって、国王に呼ばれた。


 三日ぶりになるけど、その態度は相変わらずだ。

 ちっともこっちの都合は考えてない。

 まあ、地位がそれなりにあるし、そういう風に育ってきたとしたなら、分からない話でもないけど。


「選別を行うことで、貴様は正式に勇者となる」

「我が領地で初めての勇者になれる。喜びなさい」

「・・・はあ」


 ここの領地では初めて?

 ってことは、国全体としてはそれなりに異世界人がいて、勇者として存在しているってことになる。


 気になることはちらほらあるけど、今はどうでもいい話か。


 何となく分かることは、仮にここで勇者とやらになってしまったら、ここでこき使われることになるってことだ。


 ここで生きていくことになる。そこはもう避けられないだろう。

 生きていく術が分かっていない今、こいつらに頼らざるを得ない一面もある。

 仕方が無いし、自力でどうにかできるまでの繋ぎとして働くのもいいか・・・とも思ったけど。


「もうちょい待遇が良けりゃあなぁ・・・」


 これだもんなぁ。


「何か問題でも?」

「いや、別に」


 問題しかないだろ・・・

 何でそう高圧的なんだろ?

 そりゃ確かにここでは偉いんだろうけど、それはここだけの話であって、もっと言うなら俺みたいな異世界人には関係ないわけで。

 協力してもらおうって腹なら、餌を吊り下げたほうが絶対にいいと思うんだけど。

 餌どころか、廃棄物をぶら下げてるんだもんなぁ。付き合ってられんよなぁ。


「むー」

 どこからか、あのマスコットの声が聞こえる。

 あまり探す素振りをすると気付かれるだろうし、そうなったら面倒なことになりそうだからそうしないけど、どこかにはいるんだな・・・

 牢屋で初めて接触して以降、姿を見なかったもんだから、帰ったとばかり思ってたけど、見えないどこかにいるらしい。


「では、選別鏡を持って参れ」


 どこからか、別の兵士が大きい鏡を持ってやって来た。

 パッと見、豪華で大きい姿見みたいな鏡だけど、これで何をするんだ?


「彼の者を移し、選別を始めよ」

「ハッ」

 俺の後ろに鏡が置かれた。

 国王に見えるような配置になっている。

 何がどうなるのか分からないから、俺も体を後ろに向けて様子を見守る。


 すると、鏡がじんわり波打っていった。


「どうなってんだこりゃあ・・・」


 鏡ってのは単純に、自分の姿を映す道具。

 ほんの少し前は確かに俺を移していた。


 ところがどうだ。波打って収まると、何らかの文字やグラフが表示された。


「・・・ステータス?」


 どういう原理なのか知らないけど、こっちの独特な文字が読めるようになっている。

 その鏡に浮かんだ文字は、体力や攻撃力などの数値とグラフ、そしてスキルの文言を表している。


 これは俗に言うステータスの内容。

 そしてこの鏡はステータス画面。


 なるほど、この鏡はステータスを移す道具なのか。


「あなた、いかがです?」

「ふむ・・・どれも大した能力ではないな・・・」


 平均がどんなもんなのか分からんから何ともだけど、大したことないと言われると何となく腹が立つ。

 他の連中もこういうのを味わってるのか?


 っていうか、そんなバケモノみたいなステータスのヤツがいるのか?

 いるなら会ってみたいもんだ。


「強いて言うなら魔力が高いことくらいか」

「まあ」


 今の様子から察すると、魔力が高いってことはそれなりに価値があるらしい。

 魔力って言うくらいだから、ここは魔法とかが当たり前にあるんだろうか?


「何かしらスキルを使えるようになれば化けるかもしれんな」


 スキル、か。

 世界観にしろステータスにしろ、いよいよゲーム染みてきたな。


「二つ名は何と?」

「放浪の勇者・・・だと?」


 ほうろう・・・琺瑯?

 食器の事か?


 まあ、冗談はさておき、

「文字通りに捉えてもよろしいのかしら?」

「あまり聞かない二つ名だが、本当に役に立つのか?」


 知るか。俺が聞きたいもんだ。


 二つ名ってのが何を表すのかは分からない。

 ただ、話の流れから察するに、どういった性質のヤツなのかってのが表れるのかもしれない。

 例えば炎の勇者とかなら炎使いとか、熱血系の性格のヤツとか、そういう感じの。


 仮にそうであれば、放浪ってのがどういう性質なのか分からない。うろうろしてるヤツとか、旅行ばかりに行ってるヤツとか?


 何にせよ、リアクションだけは二人に同意できる。あまりしたくもないけど。

 魔力の潜在量以外は大したステータスでもなく、能力も不透明。二つ名もよく分からない。

 これがどう転ぶか・・・?


「む!」

 どこかにいるマスコット使い魔が何かを察した・・・?

「・・・おや?」


 なんか急にまた冷えてきたな・・・

 森の中にいた時にもこんなことがあったような・・・?


「陛下、急ぎご報告が!」


 謁見の間に兵士が一人飛び込んできた。


「騒がしいぞ。何事か?」

 見たところ、かなり焦ってる。

 何事かの一言で済むことじゃないと思うのは俺だけか?

「我らが領地にまお―――」

「お邪魔致しますわ」

「ぎゃあっ!?」


 跳び込んできた兵士が吹っ飛んだ・・・!?


「どうなってんの・・・?」

 鏡がブラインドになってよく分からなかったけど、吹っ飛ばされた兵士がいたところに氷が転がっている。

 しかも、結構デカい。パッと見、三歳児くらいの大きさはあるかな?

 それが人に当たるって、ちょっとした事故と同じくらいだろ・・・?

 実際、直撃したあの兵士・・・ビクンビクンしてるけど・・・瀕死なのでは?


「貴様・・・!!」


 ぶっ飛ばされた兵士を気にもしていない国王。

 その前にいたのは・・・

「あら、ごめんあそばせ」


 ・・・魔王。

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