15-1
「本日は貴様の勇者選別を執り行う」
昼になって、国王に呼ばれた。
三日ぶりになるけど、その態度は相変わらずだ。
ちっともこっちの都合は考えてない。
まあ、地位がそれなりにあるし、そういう風に育ってきたとしたなら、分からない話でもないけど。
「選別を行うことで、貴様は正式に勇者となる」
「我が領地で初めての勇者になれる。喜びなさい」
「・・・はあ」
ここの領地では初めて?
ってことは、国全体としてはそれなりに異世界人がいて、勇者として存在しているってことになる。
気になることはちらほらあるけど、今はどうでもいい話か。
何となく分かることは、仮にここで勇者とやらになってしまったら、ここでこき使われることになるってことだ。
ここで生きていくことになる。そこはもう避けられないだろう。
生きていく術が分かっていない今、こいつらに頼らざるを得ない一面もある。
仕方が無いし、自力でどうにかできるまでの繋ぎとして働くのもいいか・・・とも思ったけど。
「もうちょい待遇が良けりゃあなぁ・・・」
これだもんなぁ。
「何か問題でも?」
「いや、別に」
問題しかないだろ・・・
何でそう高圧的なんだろ?
そりゃ確かにここでは偉いんだろうけど、それはここだけの話であって、もっと言うなら俺みたいな異世界人には関係ないわけで。
協力してもらおうって腹なら、餌を吊り下げたほうが絶対にいいと思うんだけど。
餌どころか、廃棄物をぶら下げてるんだもんなぁ。付き合ってられんよなぁ。
「むー」
どこからか、あのマスコットの声が聞こえる。
あまり探す素振りをすると気付かれるだろうし、そうなったら面倒なことになりそうだからそうしないけど、どこかにはいるんだな・・・
牢屋で初めて接触して以降、姿を見なかったもんだから、帰ったとばかり思ってたけど、見えないどこかにいるらしい。
「では、選別鏡を持って参れ」
どこからか、別の兵士が大きい鏡を持ってやって来た。
パッと見、豪華で大きい姿見みたいな鏡だけど、これで何をするんだ?
「彼の者を移し、選別を始めよ」
「ハッ」
俺の後ろに鏡が置かれた。
国王に見えるような配置になっている。
何がどうなるのか分からないから、俺も体を後ろに向けて様子を見守る。
すると、鏡がじんわり波打っていった。
「どうなってんだこりゃあ・・・」
鏡ってのは単純に、自分の姿を映す道具。
ほんの少し前は確かに俺を移していた。
ところがどうだ。波打って収まると、何らかの文字やグラフが表示された。
「・・・ステータス?」
どういう原理なのか知らないけど、こっちの独特な文字が読めるようになっている。
その鏡に浮かんだ文字は、体力や攻撃力などの数値とグラフ、そしてスキルの文言を表している。
これは俗に言うステータスの内容。
そしてこの鏡はステータス画面。
なるほど、この鏡はステータスを移す道具なのか。
「あなた、いかがです?」
「ふむ・・・どれも大した能力ではないな・・・」
平均がどんなもんなのか分からんから何ともだけど、大したことないと言われると何となく腹が立つ。
他の連中もこういうのを味わってるのか?
っていうか、そんなバケモノみたいなステータスのヤツがいるのか?
いるなら会ってみたいもんだ。
「強いて言うなら魔力が高いことくらいか」
「まあ」
今の様子から察すると、魔力が高いってことはそれなりに価値があるらしい。
魔力って言うくらいだから、ここは魔法とかが当たり前にあるんだろうか?
「何かしらスキルを使えるようになれば化けるかもしれんな」
スキル、か。
世界観にしろステータスにしろ、いよいよゲーム染みてきたな。
「二つ名は何と?」
「放浪の勇者・・・だと?」
ほうろう・・・琺瑯?
食器の事か?
まあ、冗談はさておき、
「文字通りに捉えてもよろしいのかしら?」
「あまり聞かない二つ名だが、本当に役に立つのか?」
知るか。俺が聞きたいもんだ。
二つ名ってのが何を表すのかは分からない。
ただ、話の流れから察するに、どういった性質のヤツなのかってのが表れるのかもしれない。
例えば炎の勇者とかなら炎使いとか、熱血系の性格のヤツとか、そういう感じの。
仮にそうであれば、放浪ってのがどういう性質なのか分からない。うろうろしてるヤツとか、旅行ばかりに行ってるヤツとか?
何にせよ、リアクションだけは二人に同意できる。あまりしたくもないけど。
魔力の潜在量以外は大したステータスでもなく、能力も不透明。二つ名もよく分からない。
これがどう転ぶか・・・?
「む!」
どこかにいるマスコット使い魔が何かを察した・・・?
「・・・おや?」
なんか急にまた冷えてきたな・・・
森の中にいた時にもこんなことがあったような・・・?
「陛下、急ぎご報告が!」
謁見の間に兵士が一人飛び込んできた。
「騒がしいぞ。何事か?」
見たところ、かなり焦ってる。
何事かの一言で済むことじゃないと思うのは俺だけか?
「我らが領地にまお―――」
「お邪魔致しますわ」
「ぎゃあっ!?」
跳び込んできた兵士が吹っ飛んだ・・・!?
「どうなってんの・・・?」
鏡がブラインドになってよく分からなかったけど、吹っ飛ばされた兵士がいたところに氷が転がっている。
しかも、結構デカい。パッと見、三歳児くらいの大きさはあるかな?
それが人に当たるって、ちょっとした事故と同じくらいだろ・・・?
実際、直撃したあの兵士・・・ビクンビクンしてるけど・・・瀕死なのでは?
「貴様・・・!!」
ぶっ飛ばされた兵士を気にもしていない国王。
その前にいたのは・・・
「あら、ごめんあそばせ」
・・・魔王。




