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「おっ、いたぞ」
牢屋生活三日目。
意外な訪問者がやってきた。
「あんた・・・」
いつの間にか飛ばされたこの世界で初めて出会った人物。
探索をしにきた三人のうちの一人で、最年長の男だ。
「思ったより元気そうじゃないか」
「・・・元気そうに見えるかい?」
ここ二日間、特に何もなかった。
ここがどこなのかさえ未だによく分かっていない。
ここの連中の親玉からの呼び出しもない。
分かっているのは異世界であることと、何故か俺が勇者であるってことくらい。
ああ、あとはアレだ。出される飯が激マズ・・・いや、食える物が出てこないってことだ。
「あのなぁ・・・心配で見に来たんだぞ、こっちは」
「心配そうに聞こえないからそう言ってるんだけどな」
「嫌味ったらしく言うなよ。ほら、差し入れだ」
そういえば、トレーを持ってきているようだった。
「・・・おお」
焼き目のついたロールパンと、野菜が入ったスープ、それからコップ一杯の水・・・
こっちに来てから初めてのまともな飯だ。
「何か入ってるんじゃないだろうな?」
「おいおい、疑うなよ。まともな飯だろ」
「あんたにこんなことをしてもらう理由がない」
この人とは現場で出会っただけの間柄。
ここに来たあの日から今日まで何もなかったし、関係など無いに等しい。
そんなヤツが差し入れなんて、何か裏があるとしか思えないんだよなぁ。
俺の心が荒んでるだけか・・・?
「まあまあ、まずは自己紹介でもしようや」
男は床に座り、
「俺はボブだ。探索係をやっている」
日本でも通用する名前だな・・・
全く分からないタイプの名前じゃない辺り、ある程度の世界観は共通なのかもしれないな・・・
「ここはランデルっていう国でな」
「やっぱりそうか」
「もっとも、ランデルは小国で、アーデル王国の一部だ。友好関係ではあるけどな」
ランデル王国か。
ってことは、あの広間で会ったおっさんは国王、その隣のおばさんはその妃か。
王冠とティアラからしてそうなんだろうとは思ってたけど。
「そして、ランデルとアーデルは純粋種の国でもある」
「純粋種・・・」
そう言えば、あの魔王もそんなことを言ってたような・・・
「その純粋種ってのは何のことを言ってるんだ?」
「純粋種ってのは俺たちみたいに耳が丸い人種のことだ」
所謂、俺たちみたいな人種の総称か。
てっきり人間族とかそういう言い方をするもんだと思ったんだけど、ここはそういう言い方をしないらしい。
なんか、別の問題が発生しそうな気もする内容のような気がする。
俺だけかな・・・?
「まあ、そんなことは一旦置いとくとして」
ボブは膝を叩いて、
「国王たちの前では大人しくしておけ。言うことを聞いておけば、悪いことにはならないぞ」
「内容によるだろ。無茶な内容に了承はできない」
「うちの王は上に取り入ろうと必死だからな・・・ちょっとでも点数を稼げることはしておきたいんだろう。使えるものは使うぞ、たぶん」
「だから、その内容次第だろうよ」
頷けない話に頷くのはどうやったって無理だぞ・・・
「聞いた話じゃあ、そろそろお前の選別をするって話だ。早けりゃ今日だろう。早いうちにソレ食っておけよ」
ボブは立ち上がって、
「食器は適当に隠しておけよ。どうせ、ここに来るヤツなんかそうそういない。まともに片付けもしないからな」
じゃ、と立ち去っていく。
それを、
「一個だけ聞かせてくれよ」
「なんだ?」
「何で俺にこんなことをする?」
特に何があったわけでもない。別に友達でもない。
こんなことが知られたら、下手をすれば何かしら処罰が下るかもしれないのに。
「なんとなく気になったからな。ただ、それだけだ」
「・・・そうかい」
ボブは去っていった。
「・・・選別、か」
なんかよく分からないことが始まることは間違いないな。
「ま、よく分からんけど」
せっかく貰った物だ。無駄にする必要もないし、そこそこ腹は減ってるからありがたいことは間違いない。
「結構いけるな、これ」
飯を食って、その選別とやらに備えるとするか。




