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「結局、ここに戻ると」
牢屋に連れ戻された。
別に悪いことをしたわけでもないのに。
なんつー世界だ。
まあ、ここでジタバタしてもどうしようもない。
正拳突きで壁をブチ壊せるわけでもないし、チーターみたいに高速で走れるわけでもない。
幸い、命は取られてないし、ここは大人しくゆっくりさせてもらうとしよう。
それにしても、分からないことだらけだ。
ここが日本・・・もっと言えば地球上のどこでもないことは分かる。
世界観もそうだが、魔王みたいに角が生えた人間や、よく分からない生物の使い魔なんてものもいない。
ただ、文明は近しいものはある。
仮にどこかの国の城ってことにしておくけど、城内の雰囲気や建物の造り方、備品の内容も俺が知ってる内容に近い。
兵士の装備も剣とか槍、革製であろう防具がメイン。
文明の利器は無さそうだったし、中世ヨーロッパくらいの文明レベルが妥当か?
あと、魔王との関係性。
明らかに良い感じの関係性じゃないよな。
毛嫌いしてるとかいうもんじゃない。たぶん、敵対視してる。
だから小一時間程度であっても一緒にいた俺を警戒している。
その短時間で仲間になっているんじゃないかと思える。
そして勇者という存在・・・これが一番厄介だ。
勇ましい者・・・勇気がある者?
定義は何でもいいにしても、あの二人の話の内容から察するに、よくある話のそれが当てはまるんだろう。
魔王を倒せる強者みたいな・・・
「・・・ハッ」
寒い話だよ。
どこの世界にサラリーマンの勇者がいるんだ。
俺はどこにでもいるサラリーマンだ。
何か武術を習っていたわけでもないし、スポーツをしていたにしても、大した成績を残したわけでもない。
一応大卒ではあるけど、そこまで成績はよくなかったはずだし、特別勉強が得意なわけでも、文才があるわけでもない。
何の変哲もないサラリーマン・・・いや、もっと言うなら、社畜のサラリーマンだ。悲しい話だけど。
そんなヤツに、魔王を倒せるような力があるわけがないだろ。
一つも面白いことはない。失笑だよ、失笑。
どうにかして話を聞いてもらって、ここから解放してもらおう。
勇者だとかそんなことはどうでもいい。この世界で生活しなきゃいけないならそれでもいい。
面倒事からおさらばしないと。
面倒ごとはあっちの世界だけで十分だ。
「むー」
どっかで何かが聞こえた。
「むー、むー」
聞き間違いじゃなさそうだ。
風の音とか、水が滴るような音じゃない。明らかに何かの声。
「むー、む」
「おっ」
右肩を叩かれているような気がしたから見てみると、
「お前・・・確か」
暗がりできっちりとは分からないけど、魔王の使い魔が俺の肩に乗っている・・・
なるほど。こいつが俺の肩をぺしぺし叩いてたってわけか・・・
「何でこんなところにいるんだ?」
確か魔王と一緒にどっか行ったはずなんだけど。
「むー」
使い魔は俺の肩に乗っかったままだ。
「・・・何を言ってるか分からないなぁ」
大人しくしているし、こいつが悪さをするような感じはないな。
意思疎通もできそうにないし、とりあえずそのままにしておこう。
いや、肩からは下ろそう。肩がこる。
「妙な展開だよなぁ・・・」




