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魔王と行く異世界道中  作者: ちとせ


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12/13

6

 なんだ?この状況・・・


 焚火してコーヒー飲もうとしたら、なんか魔王がやってきた。


 兵士たちを追っ払ったら、湯沸かしに興味を抱いている。

 いや、正確に言うと、俺がしていることに興味があるってのが正しそうだ。


 どっちにしても、まともな状況じゃない。


「とりあえず・・・」

 ケトルから湯気が出ている。

「湯が沸いたので」

「ふむふむ」

「コーヒーを淹れます」


 この美女・・・いや、魔王。


 とんでもなく強いって話らしい。

 機嫌を損ねないようにしないと、俺も危ないかもしれない・・・

 人生で初めてだよ。こんな緊張感のある目覚めの一時間はよ・・・


「コーヒーって何かしら?」

「・・・知らない・・・っすか?」

「ええ」

 コーヒーがないのか・・・

 まあ、ここは異世界って話だし、無い可能性はあるか。

 似た物はあるかもしれないけど、今はそんなことはどうでもいい。

 魔王の機嫌を損ねないようにしないと。

「カップに粉を入れまして」

 表に出したままにしていたコーヒー粉末の封を切って、カップに入れる。

 本気のコーヒー好きなら自分で豆を準備して、焙煎して、その場で挽くんだろうけど、俺はその領域に達してない。

 興味はあったし、何なら手挽ミルも買ってはいるものの、気持ちがそこに追いついてないっていう感じ。

 つまりは宝の持ち腐れというやつである。

「ここに湯を入れてかき混ぜる」

 カップに湯を入れてスプーンで混ぜる。

 そしてそれを、

「どうぞ」

 魔王に差し出す。

「いただいていいのかしら?」

「どうぞ」

 でないとどうなるか分からん・・・

「では、いただきますわ」

 カップを取る手・・・指が長い。

「・・・ふむ」

 一口飲んで、

「なかなかおいしいですわね」

「ほお」

「初めての味わいですわ」

 やっぱりコーヒーって物自体がないのか。

 名前を聞いて分からないってレベルだし、その辺りは分からないでもない。

 名前違いで物自体はあるってケースがあると思ったけど、そういうわけでもないらしい。

「少し苦いですけど、甘味がある分飲みやすいですわね。何かで甘みを足しているのかしら?」

「そりゃあ砂糖だ。シュガー」

「ふむ・・・」

 もう一口飲んで、

「口当たりも柔らかい」

「それは・・・乳成分かな?よく分からん」

「ふぅん」

 どういうリアクションなのか分からんなぁ。

「気に入りましたわ」


 魔王の表情が明るい。

 おいしい物を食べて喜ぶ子供みたい・・・とか言うと消し飛ばされるんだろうか?


「・・・む」

 突然、魔王の右肩に生物が現れた。

「なんだ、それ・・・?」

 パッと見は何かの獣・・・っぽい。ただ、それが何かってのは分からない。ヒツジっぽいように見えるけど、他にも混ざってるような・・・

「この子はわたくしの使い魔ですわ」

 一種のゆるキャラみたいに見えるそいつは、どうやらそういう存在らしい。

 いよいよファンタジーだな・・・今更ですけど。

「一度戻りますわ」

 魔王は立ち上がって、

「あなた」

 俺を見下ろす。

「あ、はい」

「ここから早く離れたほうがいいですわよ。純粋種がやってきますわ」

「・・・ほお」


 純粋種とは?

 そういえば、逃げていった兵士連中もそういうことを言ってたような・・・


「ご馳走様」

「あ、どうも」

 空のカップを受け取った。

 いつの間にか全部飲んでた・・・俺が使い魔に気を取られてるうちに?

「また会いましょう」

 魔王が森へ去っていった。

「・・・どっと疲れたな・・・」


 とりあえず生き残った・・・

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