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「さて」
火を起こしたし、後は湯を沸かすだけか。
ケトルにペットボトルの水を入れて、炎が立つ薪に直置きする。
「なあ、それは水か?」
年長の男が指差すそれは、
「ああ、水だけど」
2リットルペットボトルと、それに入った天然水だ。
「不思議な容器に入ってるな」
なるほど・・・こっちにはペットボトルって物はないのか。
「この箱は何だ?」
「・・・そりゃあクーラーボックスだ」
「これは?」
「それはライトだ。照明だよ」
クーラーボックスもLEDライトも知らないか。
まあ、分からんでもないか。
目の前にいるこの三人の風貌から察して、この異世界は中世時代に近いレベルなんだろう。
ってことは、文明の利器ってやつはそう多くはないだろうし、物だって金属製や木製はあっても樹脂製って物はないだろう。
俺の持ち物の半分は未知の物ってことになるのも当たり前か。
「なあ、早くしてくれないか?」
「急かすなって。待つって言ったのはあんたらだろ?」
仕事に忠実なのは結構なんだけど、朝っぱらからアニメの教科書みたいな出来事に遭遇してしまってるわけだし、コーヒーの一杯でも飲まないとやってられない。
「いや、上が急かしてるってのもあるんだが」
「・・・だが?」
何だ?何があるんだ?
「この辺りを魔王がうろついているって話を聞いてな」
・・・魔王ってか。
「そういうのが・・・いるんだ?」
「ああ、そういうのがこの辺りをうろついてるんだよ」
すごいパワーワードが出てきたけど、
「その・・・魔王ってのはどういう存在なんだ?」
例えばモンスターの頂点だとか。
例えば人間を滅ぼす圧倒的な存在だとか。
俺が知ってるソレだとは限らない。
「あのな・・・魔王は危険な存在なんだぞ?」
「冷徹で加減を知らない、通った土地は草すら生えない荒廃した大地となる・・・そういう存在だよ」
「OH・・・」
ああ、なんか俺が知ってるやつっぽい、その魔王。
アレだ。
世界滅ぼしてやる系の魔王だ。
「そりゃダメだな」
「だろ?だから早くしてくれって言ってるんだ」
「それをもっと早く言えって」
だったら火を起こさなかったのに。
どっちみち、一度火を起こした以上、放ったらかしで他所へ行けない。
「ま、なるようになるだろ」
来たら来たで困るけど、もうこうなった以上じたばたしたってしょうがない。
なるようになるってくらいの気持ちでいればいいだろ。
「・・・ん?」
なんかおかしい。
急に冷えてきたんだけど・・・?




