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領主からの緊急討伐クエストが発出されることになった。
内容は「探索者ギルドの総力を挙げ、現在外縁部で発生している事態を解決されたし」である。
報酬は青天井。討伐結果や貢献度などから事後的に計算され支払われるようだ。
探索者ギルドでは、このクエスト発出に合わせて合同パーティ結成のための有志が募集された。
本来大森林の奥に多人数で侵入することは、攻撃性の高いモンスターを刺激する可能性が高く、基本的にご法度とされている。しかしことここに至ってはそのデメリットよりも、現在外縁部を跋扈する危険なモンスターを確実に討伐するメリットが優先されたらしい。
「皆、集まってくれてありがとう」
ギルドホールの真ん中にある大テーブルのところで、視線を巡らせながら発言したのはギルド長である。
「君たちには、外縁部の奥を探索し、問題となっている異常個体群を可能な限り討伐してもらう。それ以外の探索者に浅い領域を任せ、君たちに極力横やりを入れさせないようにするから、存分に暴れてくれ」
合同パーティ――つまり緊急討伐クエストの主力部隊に参加するべく集まったのは、ライたち三人を含めて十人。
不参加の探索者たちは怪我や死亡などで人員が欠けていることもあり、露払いを担当する。
「探索自体は君たちの肌感があるだろうから口出ししないが、細かい物資はギルドからも拠出するつもりだ。必要な者は後ほど受付で聞いてみてくれればいい。それでは……」
言って、ギルド長が退席し、続いてディアナをはじめとしたギルド職員が資料を持ってくる。
「ギルド長は話し合いに参加しないのか?」
「事務方の人なのよ。何も分からないわけじゃないと思うけど、探索の主役は探索者で、それを補佐するギルド職員って方針らしいわ」
ライの素朴な疑問に、ドサドサとテーブルに紙束を置きながらディアナが答えた。
そこからは主力部隊の面々とギルド職員の間で作戦会議の時間となる。
主力部隊の戦力提示、それをもとにした戦闘方針の決定、確認されたモンスターの情報の洗い出し。
そうした中でひとつ、主題とズレる場所で驚かれたのは、ライが魔法と治癒術を習得していることだった。
「お前、なんでそんなもん覚えてんだよ」
「気の制御を習得するため、らしい」
「はぁ? それだけのために?」
「そうだ。だから魔法も治癒術も習得してすぐ修練はやめてしまった。役に立つようなもんじゃない」
ライの言葉にランベルトは深いため息をつき、周囲の面々も呆れ顔である。
ライ自身もうすうす感じてはいたが、魔法も治癒術も、おいそれと学ぶことができるような代物ではないのだ。そもそも片手間に、しかもそれ自体ではなく他の理由があるなど、教えを乞う姿勢でないのは確かだろう。
それを踏まえれば、トラッドの頼みを簡単に了承した二人の師匠は異常だったということなのだろうと、ライはそう思った。もちろん、その依頼をすると決めたトラッド自身が、最たる異常者なのだろうとも。
ちなみに主力部隊の探索者においては、治癒術が使える者が一人、魔法が使える者が一人居るようだった。
いずれもドロップアウト組で、権能の範囲も使用回数もそこまで多くはない。
そう考えると、専門で治癒術師をしているセリアもまた、外れ値であるようだった。
話し合いは進む。
戦闘方針が定まってゆき、モンスターの知識を頭に叩き込まれる。
ライは自身が未だ気の制御に至れていないことが気がかりだった。
けれどそれ以上に、この合同パーティでの探索準備は、世界が自己と身近な人間で完結していた彼にとって稀有で新鮮なものだった。
問題の解決を求める者、仲間の仇を取ろうとする者、報酬を求める者。
持っている意図はばらばらなのに、不思議な結束がある。
ライは剣の修練と名声のために、この討伐に参加する。
それもまた、結束された意思の一つなのだと、そう理解した。
そうして、準備を整え終えた主力部隊により、探索が開始された。
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