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綜錬の剣 ―ドブ浚いの少年が世界樹に至るまで―  作者: とんび
第1章

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 コカトリス討伐後、素材回収のこともあり、ライたちは帰還を選択した。


 異常個体群の討伐は、事態の進展を示す一つの指標である。

 ギルドの受付にて報告すると、非常に喜ばれた。


 もちろん未討伐の異常個体群はまだいくつか残っており、更に増えないとも限らない。

 ただディアナの話によれば、パーティを臨時的に統合するなど、戦力の強化を図ろうとする者たちもいるらしい。及び腰になっていた探索者たちもまた、動き始めているのである。

 また、ギルドの方でも動きがあるようだ。領主に掛け合って資金調達し、緊急の討伐クエストとして成立させるつもりのようである。


「いずれにせよ、一連の異常事態はちょっとずつ良い方向に向かってるってことね。返すがえす、あなたたちには感謝するわ。ありがとう」

「ライが予想以上に使いモノになるのが分かったのは収穫だったぜ。中程度のモンスターの異常個体群があんな簡単に狩れるとは思ってもみなかった」


 ディアナの感謝の言葉に、ランベルトがそう返す。

 しかし彼の賞賛の視線を受けて、ライは首を横に振った。


「いや、コカトリスはランベルトとあと数人居れば倒せただろ。アンタ一人で三頭も落としてるんだ」

「おいおい、自分で数人分担いましたなんて、自信満々じゃねぇか」


 否定の言葉をランベルトに茶化され、ライは不満に口を尖らせる。

 それを見てセリアとディアナがくすくすと笑い声をあげた。


「私の出番も無かったくらいだもの。ライ君は自信を持っていいと思うわ」

「成長してきてるって思ってたけど、案外やるのねぇ」


 慣れない褒め言葉に、どう返していいか分からず押し黙るしかないライである。

 

 実際のところ、これまで討伐実績のある異常個体群は、外縁部の中でも脅威度が低いモンスターのものばかりであった。

  それを騎士団先遣隊の隊長(ランベルト)を筆頭にしているとはいえ、三人、しかもうち一人は攻撃戦力に数えられないセリアを含めたメンバーでの討伐である。その要因であるならば、客観的に見ても賞賛するに値すると言っていいだろう。


「そういや他の連中にレッドエイプの群れだけは止めとけっての、周知してくれてるんだよな?」

「ええ、もちろんよ」


 レッドエイプは外縁部における脅威度『高』のモンスターである。

 その異常個体群は騎士団先遣隊が壊滅したことが示す通り、相当危険な相手と言えるだろう。

 ギルドとしても隣接領域レベルの脅威として、上級の探索者が帰還するにしたがい討伐依頼を出す予定のようだ。


「俺たちはこれからどうする?」


 外縁部が通常より危険であることに未だ変わりはない。

 それを再認識して質問したライに、ランベルトは肩を竦めて応える。


「ん? そりゃ素材を売りに行って宴会だろ。勝利の宴だ」

「いや違うって。探索の方針の話だ」


 すっとぼけるランベルトに三人の非難の視線が突き刺さり、彼は両手を上げて「冗談だよ」と言い、こう続けた。


「当然、異常個体群の討伐は続けるぜ。中程度までなら十分戦えるんだ。じわじわ削っていってやるさ。もちろん、レッドエイプみたいなヤツの対策はギルドに任せていいんだよな?」

「もちろんよ、任せておいて」


 ディアナの頼もしい言葉に満足して、ライたちの今日の探索は解散となった。


 その後、三人で素材を買取に出しにいき、ライは最高収入額を更新することとなった。

 

 ちなみにランベルトの宴会宣言はセリアに振られたため、ライも休息を優先してパス。

 そのためランベルトはその夜、寂しく独り酒と相成った。





 そして、翌日から。

 同様に異常個体群討伐を主目的とした探索が、ライたちを含めた探索者によって進められていった。


 しかしながら、当初の印象と異なり、十日ほど掛けても事態は一進一退に留まることになる。


 脅威度『低』のモンスターの異常個体群を狩り。

 脅威度『中』や『高』のモンスターの通常の群れを狩り。


 そうして平時より多数のモンスター討伐報告が上がってくる一方で、探索者の死者が少しずつ積み重なっていく。


 レッドエイプ異常個体群の討伐報告は未だ無いうえに、問題がひとつ。

 複数種のモンスターによる「混成異常個体群」が、見られるようになったからだ。


 ライの実戦経験値の上昇に比例するようにして、大森林外縁部に、不穏な空気が流れ始めていた。


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