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投稿時間帯変えてみました。(土日は午後の方が伸びやすいイメージ)
治癒術と魔法の習得に引き続き、ほどなくしてライは気の知覚にも成功した。
現時点では制御までは至っておらず、知覚のみ。
つまり主観的なもので傍証は無い。
けれど魔力と聖気功の知覚に成功しているライの言葉は、真実のものと受け取られ喜ばれた。
「さあて、こっからは実戦で鍛え込んでいくぞ」
「実戦……というと?」
「お前の場合は大森林がいいだろうな。最終目標は隣接領域。あそこのモンスターを討伐してこい。パーティに所属してもいいし、自分で作ってもいいが、準備は怠るなよ」
ライは大森林で得た不思議な感覚についてトラッドに話していた。
トラッドは他流試合なども検討していたようだったが、それもあってライの実戦訓練は大森林が良いと判断したようである。
装備を整えてライは探索者ギルドへと向かう。
パーティのことなどは分からないことも多いため、まずはディアナに相談してみることにした。
「久しぶりに来たと思ったら急な話ねぇ……と、言いたいところだけど」
ライの来訪を歓迎するように言って、ディアナは状況を説明してくれた。
どうやら、現在の大森林外縁部では、ライが遭遇したガレナウルフのような異常な群れが立て続けに発見されているらしい。
すでに討伐されたものもあるが、調査のみで未討伐の群れも残っている。
幾人か死人も出ているようで、現在外縁部は少々危険な区域になっているようだ。
「ライ君はガレナウルフ討伐の殊勲者だからね。実力の保証もあるし、できたら状況の調査とかに協力してくれると嬉しいわ」
「なるほど」
ライ個人としては、ディアナの提案に否やはない。
自身の剣術を鍛えるための敵としても申し分ないし、名声も得られるだろう。
ただ、彼の最終目標はトラッドとの約束を果たす、つまり剣術師範になることである。
それには五体満足で生き延びることが必要だ。
よってライは、挑戦するにしても慎重さを放棄するつもりはなかった。
「そういうことで、パーティが組みたいんだ」
「もちろん、一人で行くと言われても止めてたわ……ただ、候補になるフリーの探索者である程度実力があるとなると、ちょっとねぇ……」
これまで外縁部を主戦場にしていたパーティは、相応の実力を持ってはいる。
ただ現状、外縁部相応を上回る危険度のモンスターが出没していることから、そうした探索者は探索にややおよび腰になっているようだ。
そうなると、次の候補は隣接領域まで到達しているパーティとなる。
ただそうしたパーティは基本的に長期の遠征を行うため、ギルドにあまり寄り付かない。ゲラルフのパーティなどもそうだ。
そして、それら上級のパーティは現在、遠征に出ていて帰還予定までは時間があるようである。
「彼らの帰還まで放置するわけにもいかないとは思うんだけどね……」
大森林ではその濃密なマナがモンスターを生む。
ライの倒してきたガレナウルフなどはもちろん、その辺に生えている植物もモンスター化した植物と言えるものらしい。
あれだけの巨大な木々、回復薬になるほど薬効の強い植物。そうしたものは大森林の外にはほぼ生えていない。
「探索者がモンスター化した動植物を狩らないと、どんどんその領域のモンスターが強力になっていっちゃうのよ」
そうした間引きが、大森林には必要であるらしい。
「うーん……どうしようかしら」
考え込むディアナ。
老師のもとで勉強したとはいえ、まだまだ知識の薄いライは黙って回答を待つ。
すると、突然後ろから肩を叩かれ、ライは振り返った。
そこに居たのは純白の鎧に身を包み、大剣を背負った燃えるような赤髪の男だった。
「お困りかい? ディアナさんよ」
「ランベルトさん……」
「パーティ募集なら俺もやってるぜ? 俺のとこに来りゃあいい」
受付台に片手をついて、横合いから覗き込むようにしてライの顔を見ながら男――ランベルトが言った。
「聞いていたんですか?」
「見ない顔でちょいと気になったんでな。どうして紹介しねえ」
「それは……ランベルトさんは騎士ですし、命令を優先されるでしょう?」
ランベルトに睨みつけられたディアナが、肩を竦めながら言い返す。
「うちの隊が半壊したのを当てこすってんのか? ありゃ事故だろ」
「ほとんど隣接領域付近まで行ったと聞いていますが」
「分かんなかったんだよ」
「分からないのにそこまで行ったのが問題と言っているんです」
老師から人間関係もよく見ておけと言われていたライは、やり取りを聞きながら事情を推し量ろうと考える。
ランベルトは騎士。隊と言うからには探索者の言う「パーティ」ではなく、騎士団の小隊のことだろうか。
ディアナが咎めた「命令優先」の部分は、隣接領域を知っているかどうかではなく、そうした大森林の地理を理解しないまま探索を行ったことなのだろう。つまり騎士団からの命令を状況把握より優先したことを、ディアナは怒っているのである。
そこまで考えて、自分も成長したものだと、ライは内心少し嬉しくなった。
考えたことを踏まえて、ギスギスしている二人を遮るように、ライは発言に移る。
「あんた……ランベルト、さんは命令優先で探索するつもりなのか? ならパーティには入れない」
「ん? お、おう、いや、命令優先にしたつもりはねえんだ。俺の指揮が甘かったのは認めるが……。とにかくもう失敗は犯さねぇ。というか臨時パーティじゃ無茶しようにもできねえよ。先遣隊にはそこそこのメンツを集めたつもりが、半壊しちまったくらいだからな」
咎める意図の無い素直なライの意見に、毒気を抜かれたのかランベルトは求めた回答をくれた。
であるならば問題ないと、ライは頷きを返す。
「ディアナ、いいか?」
「ライ君こそいいの?」
「ランベルト……さんが無茶をするつもりが無いならいい。危険なのは実戦なら当たり前だし、俺にはその実戦が必要なんだ」
「そう……分かったわ」
ディアナの了承を得て、改めてランベルトに向き直る。
そしてライは手を差し出した。
「ランベルト、さん。そういうことで、いいか?」
「はっ、ランベルトで良いぜ。よろしく頼む」
ランベルトと固い握手を交わす。
そうして、ライは初めてパーティを組むこととなった。
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