認識の違い 場所
「大丈夫」だと彼は言う。
けれど私はちっとも大丈夫だとは思わなかった。
目の前には真っ暗な廃墟。
人の気配はまったくしない。
とても危険そうな場所に見える。
こんな所で肝試しなんて、何か起きたら大変だ。
しかし「こんなに薄気味悪そうな廃墟、わくわくするな」と言っていた。
きっと彼には、私とは違う風に見えているのだろう。
目の前のそれは危ない場所などではなく、自分を楽しませてくれる場所だと思っているのだ。
私は「危ないよ」と彼のシャツを引っ張った。
しかし彼は「大丈夫だって」とどんどん前に行ってしまう。
私は彼のシャツから手を離して、来た道を引き返していった。
確か近くの茂みの中に、犯行に使った道具を隠しておいたはずだ。
あれをとりにいかなければ。
背後から彼の叫び声が聞こえてきた。
「うわああああ、人が倒れてる!!」