第六話 学園生活の始まり
零章は基本的に学園モノとなります。……六話でやっとまともに学園が出てくる学園モノとは?
何度も、何度も、何度も。
術式を変えたり、調整したりしてみた。
剣そのものの構造を変えたりもした。
でも、やっぱり無理だった。
私の炎の魔剣じゃ、あの繊細で美しい輝きにたどり着くことは出来なかった。
何が足りないのだろう? 何がいけなかったのだろう?
私は自室の窓から空を見る。
今日も流星を見ることは叶わなかった。
2022年 4月18日 11:17 秋風武装学園高等部正門前
「そんじゃ、俺は管理局にこのデカい剣を届けに行ってくるわ」
「ここまでありがとね」
「ありがとうございました」
私たちを学園の正門まで届けると彼は再び車に乗って去って行った。
氷華の体調もまぁまぁ良くなった……けど、完全に良くなった訳じゃないし、連れ回すのは良くないよね……。
「氷華、貴女寮暮らしよね?」
「はい、そうですが……それがどうかしたんですか?」
「私は学園長に戦果を報告するからさ、先に帰ってて……流石に自分の部屋は分かるよね?」
「はい、大丈夫です。では、私はこれで」
「うん、また明日ー。っと、学園長のとこ行きますか」
あんま、あの人には会いたくないけどね……何考えてるか分からないし。
疲れと行きたくないという感情のせいか、やけに思い足取りで校舎へと向かって歩いて行く。
そうして、校舎に入って右に曲がるとすぐの所にある部屋にドアをノックしてから入る。
「失礼します、学園長」
「おぉ、来ましたか。さて、成果を見せて貰おうか」
部屋の中は、立派な机と椅子を除けば質素なものだった。
そしてその椅子から立ち上がる若めの白髪の男性が1人いた……そう、この男こそがこの学園の長である。
ちなみに机と椅子だけ立派な理由だが……なんでも、現学園長は自身の部屋を質素にしたかったが机と椅子だけは諸事情により変えられなかったとかなんとか。
学園長は私の前まで来て、手を伸ばす。
そして私は、自分のスマホを彼の手のひらに置く。
「申し訳ありません。損害こそは出なかったものの、敵にはバレてしまいました」
「ふむ、まぁそれは別に構わないさ。どうせバレるからね」
そう言いながら、彼は私のスマホを机にあるコンピュータと有線で接続する。
「どうせバレる? それはどう言う……」
「残念ながら軍事機密だ。一生徒たる君には教えられない」
また、これだ。
学園長は、私が幾ら質問しても8割方軍事機密だからと言って教えてくれない……まったく信用ならない。
「分かってはいましたが……またそれですか」
「君も分かってきたじゃないか……あぁ、これは返すよ。もうデータは貰ったから。まぁまぁの範囲を索敵してくれたね、助かるよ」
学園長は、私にスマホを手渡す。
それを私はブレザーのポケットに放り込む。
「……それはどうもありがとうございます。ちなみに、続きの任務はいつ頃ですか?」
「そうだねぇ……2週間はかかるだろうね。なんせ、敵が大して強くないとはいえ君たちが索敵した所まで国防軍が占領して、除染しなきゃならない。まぁ、しばらくはゆっくり青春を楽しみたまえよ」
「分かりました。では、失礼致しました」
そう言って私はこの部屋を出て行こうと、ドアノブに手をかけたところで、後ろを振り返らずに口を開く。
「ところで……何故、私のバディを今日の早朝に変更したのですか? 蒼山氷華はCクラス……元の宵月裕樹の方が能力的には適任かと」
別に氷華が嫌だという訳ではない。むしろ、バディが氷華で助かったのだが……一応、真意を聞いておきたい。
「……君との性格的な相性を考えた、と言っても信じないだろうし。仕方ない、プライバシーの問題にならない程度に言うとしよう。彼女、蒼山氷華は君が思っている数倍以上は強いよ」
「それ、どういうこと?」
思わず振り返る。
笑っている彼の顔が目に入る。
……ちっ。
「……」
これ以上は話さない、と。
これ以上は詮索しても無駄だろう。
私はドアを開けて、学園長の部屋を出る。
今日は授業もないし、とりあえず寮に帰るとしよう。