第五十話中編 人類史終焉の地、そして……
2022年 5月5日 05:07 D-3地区未探索区域
Side:宵月瑠奈
「よっと、無事に着地ね。さて、氷華の方は……大丈夫そうだね」
空中降下は、事故もなく無事に成功。
昨日偵察を終えた地点付近まで一気に行くことが出来た。
「宵月先輩、今日は確か目標地点を司令部から指示されてますよね」
「そうだね、旧新宿駅まで辿り着かなきゃならないわ」
そう言いながら、一応携帯端末で指定ポイントを確認する……うん、大丈夫。間違ってはない。
「うーん、この距離……間に合いますかね? 」
確かに、昨日の進行速度から考えると、辿り着けるか微妙なところである。
だが、私たちが目標まで辿り着けなかったら、国防軍ひいては連合皇国の国民全員が損害を食らうことになる。
魔術師である以上、私たちにそれは許されない。
「……間に合わせるしかないでしょ。さ、行くわよ」
「了解です」
こうして、私たちは目的地へと歩き始めた。
2022年 5月5日 06:19 D-3地区未探索区域
Side:宵月瑠奈
「……また、兵士を一人も見なかったわね。どうなってるの? 」
脱線して、無残な姿になっている電車の残骸からひょいと飛び降りながら思わずそう呟く。
もうすぐ目標地点である旧新宿駅に到着するってのに相変わらず兵士一人、無人兵器一つも現れやしない。
どう考えても、これは不自然だ。
「……宵月先輩、あの書類ちゃんと見ましたか? 」
氷華が、こちらに目を合わさないままそう尋ねる。
私は、もちろんあの書類がどの書類なのかを理解してる。
だから、必然的にこう答える。
「えぇ」
「なら、理由はもう分かるはずですよ。原初派は、元より例の兵器さえ確保していれば良かった。だから、入り口にだけ兵士を貼り付けておいて、ここへ来る可能性のある人がいるかどうかのみを確認し、例の兵器を残りの主戦力で守っているんですよ。だから、中間地点には誰もいやしない。あ、見えてきましたね、旧新宿駅が」
「氷華……貴女は……って、あれは……何? 」
かつて、新宿駅という大きな駅があった場所。
そこからは、本来あるべき戦争の痕が残る駅だけが綺麗に、されど不自然に消え去っていた。
変わりにそこには。
近未来的な、超巨大魔力砲が砲口を天に向けて佇んでいた。




