第四十三話 神殺しの呪いへと
2022年 5月4日 03:27 D-3地区未攻略地域
Side:宵月瑠奈
さて、昨日は前線基地に来ただけだったが、今日からはちゃんと任務がある。
頑張って働くとしよう。
時間的にまだ日の出も迎えていない(もっとも、日の出した所で分厚い雲のせいでまぁまぁ暗いらしいが)ので、辺りは真っ暗だろう。
何故、だろうという言葉を使うのかだって?
単純に、今私たちは暗視ゴーグルを付けているからだ。
魔術師の身体能力全般は一般人よりも高いが、流石にこの時間帯じゃ視界がかなり制限される。
だったら、科学の力を頼ろうという訳だ。
しかも、今回魔術使えないし……いくらこの特注制服を着てるとはいえ、流石に魔術を使えば普通にバレる。
私は、隣にいる氷華を見る。
まぁ、一応私の味方らしいし、暗闇にまぎれて……とかは流石にないか。
「氷華、暗視ゴーグルは大丈夫?」
「はい、問題ありません」
「よし、じゃあ先に進もうか」
私たちは、D-03地区未偵察エリアの奥地へと歩き始めた。
足音を立てないようゆっくりと。
敵と突然出くわさないよう、周辺警戒もしっかりして。
2022年 5月4日 04:37 D-3地区未攻略地域
Side:宵月瑠奈
「……ここまで敵はいない、か」
1時間ほど旧新宿駅へと歩いたが、ここまで全く敵と出会っていない。
……流石に何かがおかしい気がする。
確かに、あまり距離は歩いていない。
まだ、453mくらいしか進んでいないが……哨戒をしている敵兵士の1人も見ていない。
前回の私たちとの戦闘、そして連合皇国軍に一部土地が奪われたって言うのにこの無警戒さ。
一体、何がどうなっているというの……?
2022年 5月4日 04:38 D-3地区原初派司令部
Side:ルイ
「どういう事ですか! 僕たちD-3地区の原初派戦闘員に死ねと言うのですか!」
旧新宿駅周辺の広い地下室の中で、目の前のテーブルを思いっきり拳で殴りつけて思わず通信器目掛けてそう叫ぶ。
周りの部下たちは、何事かとざわめき始める。
「あぁ、まぁそういう解釈にもなるな。そして、何度でも言うが我々4柱……いや、3柱の魔女はそちらに行くことは出来ない。13番目と契約してしまったからな」
「クソッ!! なんだって、こんな事に……」
「何を喚いている? 我らにつくとはそういう事だろ? そして、それに納得して、貴様らは契約したはずだ」
「ッ! ……あぁ、そうだな」
それを言われると何もいい返せない。
全て、事実だからだ。
今更ながら、少し後悔し始めていた。原初派の一員となった事に。
でも……やるしかない。
「では、通信を終える。頑張れよ?」
「……はい、必ず任務通りに」




