第四十話 動き出す影
辻褄合わせのために日付けを変更しました。
2022年 4月 21日 松代臨時司令部
Side:???
私は、チェス盤を挟んで沢山の勲章が付いている軍服を着ている黒髪の少女と対峙している。
少女は、駒を動かしながら私に話しかける。
「それで、あなたの作戦の進捗はどうなのだ?」
「順調ですよ、皇女殿下。使えない駒の処理も完了しましたし、秋風派の軍人たちへ叩きつけられそうな証拠も出て来ています」
今度は、私が駒を動かす番だ。
しっかりと、チェス盤の状況を眺めてから駒をパパッと動かす。
「……ふーん、そんな適当な手でいいの?」
「えぇ、構いません」
だって、もう未来は確定しているから。
私は、また目の前の少女に負ける。
これが当たれば、チェスの戦績は3勝50敗……はぁ、憂鬱。
「秋風卿に気づかれた気配は?」
「恐らくないかと。ただ、唯一の懸念点としては」
「宵月瑠奈の覚醒、か。そればかりは、妾にはどうしようもない。お前の目なら見れるのではないか?」
着実に、私を劣勢に追いやりながら皇女殿下は問う。
「この目は、あくまで自分より格下の生命体の未来を見れるというモノです。つまり……」
「お前より序列の高い4番目の魔女の血を引き継いだ宵月瑠奈の未来は見えない……こう言う事か?」
「はい。その通りです、殿下」
劣勢を覆すには至らないであろうが、この盤面での最善手を打ちながら答える。
次はどんな手を打つかを考えていると、急に姿勢を改めて皇女殿下は私の目をジッと見ながら口を開く。
「……一つ、聞いてもよいか? 黙示録派筆頭、13番目の魔女よ」
「なんなりと」
「D-03地区にある例の兵器……本当に原初派の連中は素直にこちらに引き渡すだろうか?」
あぁ、そんな事か。
それは簡単だ。
私は、自信を持って答える。
「えぇ、必ず引き渡すでしょう」
「なぜ、言い切れる?」
「簡単なことです、殿下。原初派の魔女たちにとって何よりも大事なのは、神の教えなのです。そして、神はある少女に昔こう言ったそうです……嘘をついてはならないと。だから、原初派の魔女が渡すと約束したならきっとそれがあの兵器であっても我々に引き渡すでしょう」
「……そうか。お前がそう言うならそうなんだろう……そして、チェックメイトだ」
あぁ、確定した未来はちゃんと訪れた。
今日は、記念すべき50敗目の日となった。
……なんて、嫌な記念日なんだろうか?
「……何故、私はいっつも負けるのでしょうか?」
「単純に、こういう事では妾の方が優れているってだけだろう。適材適所、だ」




