第三十九話 蒼山氷華
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氷華と和美が相対していたのと同じ時。
瑠奈の元にもまた、1人の人間が来ていた。
2022年 4月19日 22:37 学生寮前
Side:宵月瑠奈
……こんな遅くに用事か。
うーん、氷華どうしたんだろ?
まぁ、寮に帰って来たら聞けばいいか。
そんな事を思いながら、夜道を歩いていると……。
正面から、1人の男子生徒がこちらに歩いて来る。
秋風武装学園高等部の制服を来た、灰色の髪の男子。
あぁ、そういえばダイレクトメールを送ったっけ。
私たちは、すれ違う。
「ご機嫌よう、お嬢さん」
「こんばんは、ネズミさん」
そう、一言だけ交わして。
そして、手にはいつの間にか十数枚のA4用紙が握られていた。
あとで、彼の口座(最も本当に彼本人の口座かどうかまでは知らないが)にお金を振り込まなきゃね。
2022年 4月19日 22:44 学生寮
Side:宵月瑠奈
自室に戻って来た私は、ドレス姿のまま椅子に腰掛けて、机に置いた例の資料に目を通す。
「相変わらず、アイツはどこから情報を抜いて来てるのやら」
蒼山氷華、現年齢15才。
誕生日は、9月17日。
家族構成は、父・母・妹だったけど、父と母は既に他界。恐らく原初派が原因。
両親と彼女自身は魔術師だけど華族や皇族とかではなく、一般家系出身……ただ、第三次大戦前まで彼女達蒼山家はとある神社の神主をしていた。
……うん?
蒼山家のとこに注釈が……。
へぇ、普通の神社ではない可能性有り、ね。
情報屋が得られなかった情報か……一体何を信仰していたのやら。
適合属性は氷……私に言った火属性は嘘って訳ね。
なんで、嘘なんかついてるんだか。
次に彼女の経歴か。
……幼少期のある時点から情報が抹消されてる?
見れば見るほど胡散臭いというか。
「私や宵月先輩の憧れの人は貴女の味方ですよ。仮に何があっても、です」
……私、この言葉を信じていいのかしら?
まぁ……これは置いておこう。
「あとは……これでめぼしい情報は終わり、か」
はぁ、疑念が深まるばかりだ。
確かに、この世界は裏切りや腹の探り合いばっかだ。
ただ、なんだろう?
可愛い後輩くらいには、疑念を抱きたくないものだ。
おっと、ドアの開く音がした。
氷華が帰って来たね。
そっと、今まで見ていた紙束を適当な教科書の中に滑り込ませる。
……色々、知ったけど。
実際の彼女をもっとよく知ってから、この事をたずねるとしよう。
「ただいまです、宵月先輩!」
「おかえり、氷華」
私は、笑顔で彼女と顔を合わせた。




