第三十五話 血の流れぬ戦場Ⅰ
はい、久しぶりの更新です。
お待たせしました。
「こんばんは、恵梨香さん」
「こんばんは、恵梨香」
「おー、氷華に瑠奈。こんばんはー、ちゃんと来てくれたね」
私たちは、壇上の近くでワイングラス片手に辺りを見渡していた、赤いドレスに身を包んだ恵梨香に声をかける。
……髪も服も魔術(火)も赤いな。
「……あれ、今日は胡桃は居ないのね」
「あ、そう言えばそうですね」
恵梨香は、基本的に胡桃と一緒にいる事が多い。
特にこのようなイベントなら特に。
だから、今日恵梨香1人なのは結構珍しかったりする。
「ハハッ、別にアタシ達はいつも一緒って訳じゃないよ。今日は……そう、実家に呼び戻されてるからいないだけ。ほら、瑠奈なら分かるでしょ?」
「……あぁ、そっか。今日は財閥の会議があったわね。貴女は、大丈夫なの? 出なくて」
私と違って、恵梨香は次期当主だったはずだけど。
「ん? あぁ、言ってなかったけ? アタシはただのお飾りだよ、当主って言っても。アタシに求められたのは魔術師としての才能の方。ほんとに仕事を継ぐのは、そっちの才能がアタシなんかよりよっぽどある妹や弟達さ」
ふーん、そこら辺は私と同じなんだ。
じゃ、私たちのコミュニティの中で本物の当主は……胡桃だけか。
「はぁ、やっぱ優秀ね、彼女」
「ま、学年順位トップのドラゴンライダーは伊達じゃないって事ね……ただまぁ、明らかに本気を出してない秋風の息子が居るからほんとの学年トップは分からないけどね」
アタシの親友を否定してるみたいで認めたくないけど、と付け加えて恵梨香はそう言う。
秋風の息子……まぁ要するに学園長の息子なんだが……はぁ、私も苦手だよアイツは。
何考えてるか分からないんだよなぁ、親子揃って。
「胡桃さん、学年トップなんですか。凄いですね」
「ま、アタシの親友だからね。当然よ」
「なんでアンタが誇ってるのよ……保護者かなんかか」
「ふっ、胡桃はアタシが育てたと言っても過言ではない」
「過言でしょ」
むしろ、胡桃がアンタの保護者でしょうが、どちらかと言えば。
「ふふっ、面白いですね。宵月先輩と恵梨香さんって」
「そう?」
「ま、長年の付き合いだからねーアタシ達」
と、私たちが雑談していると。
「失礼しますわ、宵月様、桜木様」
「失礼します、お二方」
と、女子生徒と男子生徒が近づいてくる。
……顔に見覚えがある、三年生か。
「……お二人の名前は?」
「わたくしは、甘崎美香と申します。挨拶に参りました」
「僕は、立華誠。彼女と同じでお二人に挨拶をしに来ました。では、会が始まったらよろしくお願いします」
この2人の名前は。
あぁ、なるほど。
貴族院の議員様の娘息子は財閥の後ろ盾が欲しいと。
「えぇ、私の方こそよろしくね」
「歓迎会、楽しんで行ってね」
彼らは去っていった。
やっぱり、歓迎会という名だろうとパーティーの類いは政治が絡んでめんどくさいな。
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