第三十三話 普通の少女たち
「……はい、ここ。ここが私の自室」
私は、二階の右側一番端の部屋の前で足を止める。
そして、後ろを振り返って、氷華にそう言う。
「ここが……ゴクリッ」
「いや、何で変に緊張してるのさ……じゃ、入ろうか」
ドアを開けると……。
まぁ、大して飾りげのない部屋が姿を表す。
この部屋にあるのは、机と椅子にタンス、後はベッドと魔術の研究に必要な小道具、大量の魔導書がギチギチに入れられている本棚くらいだ。
正直、趣味とかなかったしなぁ……部屋の装飾にも興味なかったし。
うわぁ、机の上に書きかけの魔術理論の書かれてる紙がほったらかしで置いてある。
ほんとに昔のままなんだ……懐かしいなぁ。
……やっぱり、家族じゃなかったんだ。
ほんとに無関心だったんだ。
……目を背けろ。
「何というか……宵月先輩って真面目なんですね、昔から」
真面目……真面目?
ただ、私は……。
「うーん、真面目というか……ただ、親に言われた通りの事にやってただけだし」
「とはいえ、真面目ではありそうですけどね。あ、この魔導書……」
氷華が本棚に入っている本を眺めていると、ある本を指差す。
これは……火属性魔術初級というタイトルの本。
欲しいのかな?
確かに、氷華はあんまり自身の適合属性であるはずの火属性魔術が得意じゃなさそうだし。
「それ、欲しい?」
「まぁ、はい。私、適合属性のはずなのに火属性魔術が全然で……」
「そっか……じゃ、あげるよ」
「え、良いんですか!」
「うん、もう私は多分使わないし……本も読まれる人が持ち主の方が嬉しいだろうし」
「ありがとうございます!! これから、魔術の勉強も頑張らないと」
喜んでくれて、私も嬉しい。
その本を読んで、氷華の魔術の腕が上がると良いのだけど。
と、それはひとまず置いといて。
「氷華、その本は一旦机に置いといて。貴女に合うドレス、探すよ」
「はーい」
元気のいい返事が聞こえると、すぐに両手がフリーになった氷華が私の前に来る。
えーっと、このタンスに何着か残ってたはず。
タンスを開けてみると……お、いいね。
とりあえず、良さげなサイズのドレスが3着はある。
えーっと、色が……黒、白、青。
とりあえず、片っ端から着せてみて、一番似合うのを探せばいいだろう。
時間も別にあるし。
あー、そうだ。
氷華自身が見れるように手鏡も持ってきて、近くの床に置いておこう。
「よしっ、氷華。まずは、この黒いヤツを着よう」
「そうですね……ところで、脱ぎますよね」
「そりゃ、今着てる制服は脱がないとね……ていうか、まだ制服だったのね……気づかなかった」
ずっと近くに居たのに気づかなかった……。
確かに、氷華に制服は割と似合ってるしなぁ……あんまり違和感ないせいかも。
「うぅ……脱ぐ……人前で。しかも、宵月先輩の前で」
おい、氷華さんよ……何故、顔を真っ赤にして私を見ながらそう言う。
まるで、私が変態みたいじゃん。
ていうか、そもそも同姓同士……。
「良いじゃん、女同士なんだから」
「えっと……その……何というか……私のは貧相というか……うぅぅっ」
「まぁ、よく分からないけど……とりあえず、反対側向いとくから。ほら、これドレスね」
「はい……ありがとうございます」
その後、結局1人でドレスを着れずに、私が手伝うことになった。
その時の氷華は……それはそれは真っ赤な顔をしていた。
明日以降、一・二週間くらいの間、投稿頻度がかなり落ちます。申し訳ありません




