第三話 マリオネットの強襲
やっと戦闘シーンまで辿り着きました。バトルが見たいって方、お待たせしました。
その後、私たちは1時間と15分ほどD-03地区の奥地へと進んでみたが、最初に見た黒い防護服を着た一般兵を15人ほど見た以外は特に何もなかった。
……これはおかしい。
だって、D-03地区は国防軍が2年前に行った原初派一掃作戦を頓挫させた場所だ。
絶対に、国防軍の掃討部隊を壊滅まで追い込んだ"何か"があるはず……なのに何もないなんて。
「先輩、そろそろ作戦開始から1時間30分経ちます。帰りのことも考えるとそろそろ帰還の準備した方がいいかと」
……考え込んでいたせいで時計を見てなかった。確かに、今の時刻は8時45分。この汚染区域で活動出来るのは3時間って言ってたし、帰りも行きと同じ時間がかかると考えるとそろそろ潮時か。
「……それもそうね。気になることはあるけど、今日はここまでにしよう」
そう言って、私は帰路につこうとしたまさにその時。
「ッ⁈ 氷華、避けなさい!」
「……! はいッ!」
氷華も感じとれたのだろう、すぐに返事をする。
突如として、私たちの背後から強烈な殺気と魔力反応を感じた。
とりあえず、近くにある巨大なコンクリートの瓦礫の後ろへと滑り込む。
そして、そのすぐ後に私たちが先程まで立っていた場所に上空からとんでもない速さで何かが落ちてきた。
とてつもない衝突音が響きわたり、辺りは土煙に覆われる。
「コホッ、コホッ……氷華、大丈夫?」
私はM4カービンの安全装置を外しながら、横にいるはずの氷華に話しかける。
「……」
……おかしい。返事がない。
「氷華?」
私は横を向くと、真っ青な顔をして、震えた手で銀のルガーを握りしめて地面を見つめている氷華の姿があった。
何かトラウマでもあったのだろうか? 小声で何かを呟いている。
「今度は大丈夫、大丈夫、大丈夫……」
「氷華!」
「あ……すみません……」
彼女の肩を揺らして、名前を呼ぶと、ようやく彼女は現実へと戻ってきた。
「……あなた、戦える?」
「……大丈夫です。私だって、魔術師の端くれですから」
非常に不安だが……本人が戦えると言っているのだからそれを信じよう。
「あなた、適合属性は?」
瓦礫から顔だけ少し出して、砂煙の立っている方を見ながら彼女に尋ねる。
「こ……火属性です」
「火……か」
私と見事に被ってる……ここは違う属性の方が戦術の幅が広がったんだが。
まぁ、無いものねだりをしても仕方がない。
相手が火属性魔術の耐性を持っていないことを祈ろう。
ようやく土煙が晴れてくる。
そして、私たちに奇襲をして来たヤツの姿が露わとなる。
黒いフード付きの上着を羽織って、恐らく私たちへ投げ飛ばしてきたものであろう大剣を片手で軽々と持ち上げている白髪男の姿がそこにはあった。
「アァ……」
そして、ソイツの顔がこちらを向く。
怪しげな雰囲気を醸し出す、赤く光る瞳が私をじっと見つめ……
「ガァァァァァッ!」
雄叫びを上げながら、ソイツはこちらへと迫って来た。
「氷華、援護射撃を!」
「了解!」
私たちも迫り来る男に対して、銃口を向ける。
ここから先は命の奪い合い。
一つのミスも許されない。
・魔術の属性に関して
この世界の魔術には、火、水(氷)、土、風と聖、闇、無属性が存在する。そして、火、水、土、風属性の4つは4大属性と呼ばれる基本的な魔術属性であり、大体の魔術師はこの4大属性が適合属性となる。
・適合属性について
魔術師は、上記の属性のいずれか一つの属性が適合属性となる。適合属性となった属性の魔術はその魔術師にとって最も使いやすい魔術となるだろう。もちろん、適合属性でない属性の魔術も使えないこともないが……