第二十六話 不恰好な死の舞
「……そう、その確証が得られたなら語る事は無いわ。クソ原初派は……」
一切の表情が消えた顔の和美先輩は、MP5の銃口を彼へと向ける。
いつもとは違う和美先輩の様子に思わず困惑する。
確かに、和美先輩は原初派を憎んでいる。
それは、彼女のバディをやってれば分かる。
ただ、ここまでではなかった。
一体何が……?
「和美先輩……?」
「殺す」
ダダダダダダッ。
MP5が火を吹く。
次々と薬莢が床に転がる。
もちろん、不可視の壁によって彼の身体に銃弾が当たる事はない。
しかし、防御魔術を展開している間、彼は他の魔術は使えない。
私も援護しないと。
M9A3を構えて、彼に発砲する。
「援護します!」
「ありがとう、瑠奈。ちょうど、リロード挟みたかったから助かるわ」
彼女は、マガジン交換をしようとする……と見せかけて地面に両手をつける。
「鮮血の舞!!」
土属性魔術である鮮血の舞を詠唱を和美先輩がすると、その直後に彼の足元に茶色の魔法陣が展開される。
「これはこれは……」
そして、次の瞬間……。
地面から、無数の土の槍がコンクリートを突き破って生えてくる。
そして、それらの槍は無慈悲に彼の身体を貫く。
もはや、人の型をしていない肉塊にするほどまでに。
まるで……それは、和美先輩の憎悪心を表しているようで……。
恐怖心からか背筋が、少々ゾクゾクっとする感覚を覚える。
ただまぁ……これで終わりね。
呆気ない、最後だったけど。
それは、和美先輩も思ったようで……
「……原初派の幹部、死霊術師の瑠衣。呆気ない最後だったけど……終わり、か。兄さん、貴方の仇を私は……」
そう、完全に終わったと思っていた。
だから、気づかなかった。
彼、瑠衣の死体があの黄金の槍を持っていない事に。
そして、そのツケはすぐにやって来る。
「ふむ、まだ油断するには早いですよ」
「きゃっ!! ッ痛いなぁって……瑠衣⁈ え、だって……」
和美先輩の横に、死んだはずの瑠衣が天井から降って来た。
そして、そのまま無防備な和美先輩を蹴り飛ばした。
立ち上がった和美先輩と驚きによる硬直から解放された私は、ほぼ同時に先ほど殺したはずの瑠衣の死体の方を見る。
……ちゃんと死んでいる。
この場には、2人の瑠衣がいる……?
意味が分からない。
というか、どちらの瑠衣もそう言えば槍を持っていない。
これは一体……?
「単純な話ですよ。槍はテレポートで外の仲間に送った。そして、最初からこの場に本当の僕はいない……全部、精巧に加工された死体だから幾ら殺しても湧いてくる。という訳です」
どうやら、原初派幹部の名は伊達では無いようだ。
これは……厳しい戦いになる。
ブラッティ・ダンスの説明は次話でします。




