第二十三話 管理局防衛戦Ⅱ
煙が出ている所へ向けて走ること約10分。
私たちのすぐ目の前には強引に破壊されたのか、ひしゃげたフェンスの一部が転がっている。
横に立っている看板には、国家神造兵器管理局とC-2地区国家親衛隊駐屯基地の文字。
ここだ、間違いない。
にしても、管理局の施設を実際に見るのは初めてだ。
やたら立派な、黒いビルが2棟聳え立っている……が、本命の神造兵器を研究・保管している施設は地下にある。
……見た感じまだこの施設に被害は無さそうだ。
原初派の目的は……まぁ、この二つぐらいだろう。
何かしらの神造兵器の奪取、または研究データの奪取。
……ただ、一つ疑問がある。
発砲音や砲撃音……というか、戦闘音自体が少ない。
もう、方が付いたのだろうか? (もちろん、悪い意味で)
それとも……管理局を政府や軍が守る気がない……?
いやまさか。
「瑠奈、行くよ……」
「あっ……はい、了解です!」
私たちは、お互いの武器を構えて慎重に施設の周りを探索する。
……戦場にしてはやたら綺麗な、舗装された地面を踏みながら。
周囲に、生身の人間は結構いるが……全て何処かしらの魔術学園の生徒であり、正規軍の兵士も敵も見当たらない。
ただ、正規軍が運用している無人兵器である自律稼働する戦車に歩兵戦闘車、歩兵ユニット……の残骸はかなり見られる。
……どうなってるの、これ?
「先輩、これは一体……」
「……瑠奈、ストップ」
彼女の指示通り、足を止める。
すると、私の前に和美先輩が立つ。
そして……仲間であるはずの近くにいた何処かの魔術学園の男子生徒へとMP5の銃口を向けて、容赦なくトリガーを引く。
「ちょ、ま、和美先輩⁈」
もちろん、その男子生徒は数発の弾丸を身体に受けて死亡する。
……待って、この生徒は何故防御魔術を使わなかった?
あれは、初歩的な汎用魔術だから誰でも使えるはず。
地面に横たわっている彼の死体をよく見る……血がほとんど出てない、そして、先程死んだばかりのはずなのにもう肌がかなり青白くなっている。
まるで、死後1時間くらい経っているかのように……まさか。
「瑠奈、気をつけて。今ここら辺にいる魔術師は、原初派のクソ魔術師に操られている哀れな死体たちよ。断じて味方ではないわ……ただ、こっちから危害を加えない限り、向こうからアクションは起こさないっぽい。だって、ほら。お仲間を派手な銃声を鳴らしながら殺したのに、誰一人私たちを見てない」
……ほんとだ。
どうやら、複雑な指示は受けてないらしい。
辺りを見渡しても、彼らはただその場に突っ立っているだけだ。
にしても、死体を操る魔術師……死霊術師が実在するなんて……眉唾ものの都市伝説レベルの噂はあったけど。
「どうやら、原初派の連中はもう管理局の施設内に突入してるみたい……私たちも行きましょう」
そう、和美先輩は言って正面入り口へと歩き始める。
それに、私も追従した。
もう、戦闘音は一切していない。
不気味なほど静かな戦場だった。




