第十九話 管理局防衛Ⅰ
2年前 秋風武装学園学生寮 Side:宵月瑠奈
当時、高等部一年生だった私は、自分のバディである当時高等部三年生の和美先輩と共に寮でくつろいでいた。
珍しく、任務も授業もない休日だった。
「ねぇ、瑠奈ー」
「なんですか?」
「今日、雨も降ってないし、何処か行かない?」
和美先輩は、自身の紫色の髪を櫛で解かしながらそう言う。
……確かに、雨が一切降らない日は珍しい。久しぶりに、遠方に行くのも悪くない。
にしても、行く宛はどこだろうか?
私は読んでいた本を閉じて、先輩の方を見る。
「別に私は構いませんが……行く宛はあるんですか?」
「んー、具体的な店までは決めてないけど……最近復興が進んでる横浜でも行かない? なんかあるでしょ」
割と適当なプランニングだった。
でも、そう言う緩い外出もいいかもしれない。
私がちょうど了承の返事を言おうとした正にその時、放送が流れる。
「……近隣にいる全ての生徒に連絡します。本日1025、C-1地区旧川崎市内に多数の原初派魔術師が出現し、国家神造兵器管理局が奇襲攻撃を受けました。そして、本校は国家神造兵器管理局からの救援要請を受諾しました。この連絡を聞いた全生徒は、至急C-1地区へと急行し、原初派魔術師を排除してください。繰り返します……」
……外出計画は潰えた。
しかも、管理局が襲われてるとなるとかなり不味い事態になってそうだ。
急がないと……!
「先輩っ!」
「分かってる! さっさと、支度するよ!」
私たちは、私服から対魔術術式が埋め込まれている制服に着替えて、自分たちの武器……和美先輩は学園内だと比較的使ってる人の多いMP5軽機関銃を、私はハンドガンであるM9A3にこの白銀の剣"魔剣フォティア"を装備する。
「準備出来た?」
「はい、いつでも行けます!」
「よし、じゃあ外でるよ。とりあえず……グラウンドに出てみようか」
「了解!」
部屋から出て、私たちはグラウンドへと駆けていく。
そして、グラウンドに着いて辺りを見渡してみると、沢山の生徒達が列を作っていた。
その列の先には、国防軍の兵員輸送車がある。
「……これ、時間かかりそうね」
「そうですね……かと言って、他に行く手段もありませんし」
「……ねぇ、瑠奈」
和美先輩は、私の方を見る。
……顔を見れば分かる。何か、悪いことを考えているに違いない。
「……何を企んでいるんですか、先輩?」
「いやぁ、ちょっとショートカットをしようかなって思って。着いてきて!」
私たちは、列から外れてグラウンドの反対側へと走り始める。
そっちには、裏門があるだけのはずだけど……待って。
……裏門を出たそのすぐそばにあるのは。
国防軍の飛行場、だ。
そしてそこには……アレがある。
嘘でしょ……まだ死にたくはないんだけど!




