第十三話 不死鳥降臨
戦闘シーンだー!
私は、グラウンドの中心ら辺の地面にそこらに落ちていた木の棒で魔法陣を描く。
描き終わったら、プロテクトと呟く。
すると、魔法陣が輝き始め、ドーム状の半透明の壁が展開される。
防御魔術を応用した、広域結界。
コイツを展開してやれば、他の生徒やら学園の設備を巻き込まずに済む。
あと、教師にもバレないしね。本来なら、私的な決闘は禁じられているのだけど、この結界にはちょっとした細工がしてあるから、誰にも中は見られないし、結界の存在も判明し辛くなる。
「へぇ、プロテクトってこう言う使い方もあるんだ」
「ま、実戦じゃ使えないけどね。防御力も薄いし、消費魔力も無駄に多いし」
「ふーん。じゃ、アタシは覚えなくて良さそうね」
私たちは、そんな会話をしながら、ライフルバックから得物を出す。
私は、M4カービン、恵梨香は対物ライフルM82A1バレット。
魔弾が装填済みのマガジンを差し込み、チャージングハンドルを引く。
「こちらのライフルバックは私が預かっておきます」
そう言って、胡桃は私たち2人分のライフルバックを回収して、結界の端へと行く。
「別にあなたは付き合わなくてもいいのに」
「お二人の戦いは参考になりますから……見ていたいんですよ、私は」
ふーん、別に私たちから彼女が学べることなんてないだろうに……まぁ、本人がいいならいいけどさ。
私と恵梨香は互いに距離をとり、相対する。
「恵梨香、準備出来た?」
私は、M4カービンの銃口を彼女に向ける。
……ちゃんと火属性耐性魔術は展開済み。
効果時間は180秒。
「もちろん」
そう言い、彼女は、後ろ膝を地面につけて、前膝に肘をつけてライフルを構える。
もちろん、銃口は私に向いている。
バレットに装着されている6倍スコープが時々、鈍く光り輝く。
「じゃ、胡桃! いつものよろしく!」
「はい、分かりました! では……」
胡桃は、懐からリボルバー式のハンドガンを取り出し、銃口を空に向ける。
そして……
「よーい……始め!」
パーンと、乾いた銃声が響きわたる。
さぁ、模擬戦の始まりだ。
開幕、重い発砲音が響きわたる。
恵梨香の攻撃だ。
「チッ」
私は、M4カービンを発砲するのを諦めて、ローリングして回避する。
先ほどまで、私が居た所がドカーンと派手に爆破する。
……この魔弾、火属性魔術の派生系の爆破魔術が仕込まれてる。
面倒だ。
休む時間は与えられない。
再び、発砲音。
セミオートライフル……連射出来る対物ライフルは相変わらず面倒だ。
爆風で、私の髪が靡く。
「……加速」
私は、身体強化魔術の一つを使ってから大地を蹴る。
文字通り、加速する魔術だ。
回避しつつ、接近してしまおう。
「やっぱ使うよねぇ、それ」
嫌な予感がする。
弾丸は、今のところ私の後方に着弾している。
それは、私を捕捉しきれていない証拠。
何の問題もないはずだ。
私は、牽制としてM4カービンを片手撃ちして牽制しつつ、走る。
次々と薬莢が排出されて、連続して軽い金属音が響き渡る。
ほとんどの銃弾は当たらない。
直撃軌道に乗った銃撃も、彼女の防御魔術で弾かれる。
しかし、そんな不毛な戦いは長くは続かない。
私のM4カービンのマガジンが、空になったところでちょうど恵梨香の目の前に辿り着く。
私は急停止をする。
大量に舞う砂埃。
M4カービンを投げ捨て、右手を握りしめて、彼女の身体を殴りつけようとする。
加速が乗ったパンチを食らわせれば、彼女は吹き飛ばされ、私の勝ち。
いつも通り。そう、いつも通りの流れだ。
なのに、なんだ。
なんだ、この違和感は。
彼女の顔を見る。
彼女、桜木恵梨香は……笑っていた。
「……かかった」
「ッ!? ……あなた、一体何を」
私の拳が彼女の腹の目の前まで迫る。
ここから巻き返す?
そんな馬鹿な……。
「簡単だよ……あんたと同じことをするだけ。来なさい、不死鳥!」
……いつの間にか。
私の身体が宙を舞っていた。
下を見る。
そこには恵梨香と……全長1mほどの炎の鳥の姿があった。
加速
汎用魔術の一つ。単純に自分を加速させる。拳のみ加速など、身体の一部のみを加速させることも可(ただし、相応の技能は必要)
絶対防壁
汎用魔術。普通は平面状の不可視の壁を自身の前に貼るといった魔術。




